長谷川海太郎
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またIWW(世界産業労働組合)で組合活動も行っていた[2]

1924年には貨物船の船員として南米からオーストラリア、香港を経て、大連に寄港し、そこで下船して朝鮮経由で帰国した。再度渡米を予定していたが、移民法の改正があってアメリカ大使館からビザが降りなくなった。
流行作家となる大河内伝次郎主演による丹下左膳(1933年,第一編)

帰国後は松本泰主宰『探偵文芸』に参加し、森下雨村を知る。東京では弟の?二郎のいる下宿に住んだが、函館新聞に阿多羅猪児のペンネームで、アメリカの話題のコラム風「納涼台」などを連載、田野郎、迂名気迷子などのペンネームでも作品を掲載した。同じ下宿にいた函館時代の友人水谷準の紹介で[注 1]、1925年に『新青年』に谷譲次名で「海外印象詩」、続いて「ヤング東郷」「ところどころ」などの、滞米中の実体験に基づき、アメリカで生きる日本人(日系人)単純労働者の生き方をユーモラスに描いた「めりけんじゃっぷ」ものを掲載し始め、また牧逸馬名でコラム「海外探偵片聞」、オルチー夫人「謎の貴族」などの翻訳を掲載。続いて『探偵文芸』に林不忘名で時代物「釘抜藤吉捕物覚書」、『探偵趣味』『苦楽』誌などに、メリケンもの、現代探偵小説を発表し始める。当時刊行中の平凡社『現代大衆文学全集』35巻の「探偵小説 新人作家集」にも「釘抜藤吉捕物覚書」が5編が収録された。

松本泰の英語の翻訳研究グループで香取和子と知り合い、1927年に結婚。鎌倉向福寺の一室を借りて新生活を始める。当初和子は生活のために、鎌倉高等女学校で教鞭も取った。しかしこの年に嶋中雄作に認められて、『中央公論』に「もだん・でかめろん」を連載し、一躍人気作家となる。『サンデー毎日』『女性』などにも作品を発表し、千葉亀雄の依頼で東京日日新聞大阪毎日新聞に、林不忘の筆名で時代小説「新版大岡政談」(後に「丹下左膳」)の連載を開始する。片目片腕のニヒルな剣豪ヒーロー丹下左膳の冒険談はたちまち人気小説となり、早くも連載中の1928年には最初の映画化がなされた。

この「新版大岡政談」の映画化は、東亜キネマ團徳麿)、マキノ・プロダクション嵐長三郎)、日活大河内伝次郎)の3社競作となる過熱ぶりで、中でも日活の伊藤大輔監督の『新版大岡政談(第一篇)(第二篇)(解決篇)』は、1928年キネマ旬報ベストテン3位になるなど評価も高く、大河内の「シェイ(姓)は丹下、名はシャゼン(左膳)」という独特の台詞回しとともに強い印象を与えた[5]

また1928年から1年超にわたって、中央公論社特派員の名目で夫婦で、釜山からシベリア鉄道を経てヨーロッパ14か国を訪問し、その旅行記は谷譲次名の「新世界巡礼」として同誌に連載された(単行本化時に「踊る地平線」)。この時夫人の和子も『婦人公論』にロンドンパリの滞在記を掲載している。

ロンドン滞在時には、第一次世界大戦後のヨーロッパにおけるノンフィクションの流行に触発され[6]、古本屋で犯罪者の資料を買い漁り、1929年から33年にかけて『中央公論』に「世界怪奇実話」を牧逸馬名で連載。その後も牧逸馬名では、欧米の犯罪小説、怪奇小説の翻訳・翻案物や海外の怪事件を扱ったノンフィクション、昭和初期の都市風俗小説などを著し、女性読者層にも人気を博した。この中で、タイタニック号沈没事故を描いた一話「運命のSOS」により、海難信号である「SOS」が流行語となり、淡谷のり子(水町昌子)「S・O・S」(1931年)といったレコードも発売された[7]。帰国後は帝国ホテルに缶詰めとなったが、1929年に鎌倉材木座に移る。この頃中央公論社で出版部を新設するにあたり、嶋中雄作はその責任者を長谷川に打診したが執筆多忙のため叶わなかった。また1930年に『婦人公論』に掲載したエッセイ「貞操のアメリカ化を排す」の末尾部分を作者に無断で削除するという事件があり、これに激怒して以後同誌への執筆はほとんど無くなった。
執筆生活

1931年に翻訳したヴィニア・デルマー(英語版)の小説『バッド・ガール』は、水の江瀧子が使って流行語となっていた「キミ、僕」を会話に使い、その映画版『バッド・ガール』も同年公開され、当時のモダンガールのブームに乗って大きく喧伝されて、その主題歌がコロムビアビクターでレコード化された[7]。コロムビア盤「バッドガールの唄」作詩菊田一夫、作・編曲奥山貞吉、歌河原喜久恵、1931年ビクター盤「バッド・ガール」作詩柳水巴、編曲足利龍之助、歌羽衣歌子(曲はパソドブレ「ドン・ホセ」)1931年


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