長崎弁
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日本語 > 九州方言 > 肥筑方言 > 長崎弁

長崎弁(ながさきべん)は、九州地方長崎県で話される日本語の方言九州方言肥筑方言の一つである。ここでは、長崎県のうち五島列島対馬壱岐島を除いた地域の方言を扱う。
特徴・区画

長崎弁は博多弁熊本弁などと同じ肥筑方言に分類され、終助詞「ばい」「たい」や準体助詞「と」、逆接の「ばってん」、形容詞語尾の「か」などの共通する特徴を有する。中でも長崎弁は、「長崎ばってん江戸べらぼう」「長崎ばってん京どすえ」などのことわざに見られるように、古くから「お国なまり」の代表格の一つに挙げられることが多かった。

長崎県の方言は以下のように区分される[1][2]。坂口(1998)では/の左側の名称を用いているが、本項では便宜上、右側の呼称を用いる。本項では本土の中南部方言と北部方言について記述する。五島方言対馬方言壱岐方言についてはそれぞれの項目を参照のこと。

中南部本土方言/中南部方言

長崎方言(長崎市旧市街地)

大村・彼杵方言(大村市東彼杵郡西彼杵郡西海市、旧西彼杵郡域で長崎市に編入された地域)

諫早・北高方言/諫早方言(諫早市、長崎市矢上・戸石など)

島原・南高方言/島原方言(雲仙市島原市南島原市


北部本土方言/北部方言(佐世保市松浦市平戸市北松浦郡

南部離島方言・五島方言(五島列島

北部離島方言

壱岐方言(壱岐島

対馬方言(対馬

北部方言と中南部方言はアクセントで対立しており、北部方言がアクセントの区別をもたない無アクセントであるのに対し、中南部方言は鹿児島などと同種の二型アクセント(九州西南部式アクセント)である。また北部方言は文法面で佐賀県西部の方言に似る点がある[3]。長崎方言のある長崎市中心部は、江戸時代に天領として幕府と深い関係にあり、中国語やオランダ語に由来する語彙が取り入れられた歴史がある[4]。大村・彼杵方言は旧大村藩域、諫早方言は旧佐賀藩域、島原方言はほとんどが旧島原藩域であり、方言区分はこれらの藩政による影響が大きいと考えられている[5][6]
発音

長崎弁は、他の九州方言と同じく、母音の無声化が盛んである[7]
連母音
「大根」→「じゃーこん」、「一昨日」→「おとてー」、「西瓜」→「しーか」のように、連母音「ai」「oi」「ui」が融合して発音される[8]。しかし、「時計」などの連母音「ei」は融合しない[8]。連母音「oo」「ou」「eu」に由来するもの(合音)は、共通語では「o?」になっているが、長崎県をはじめ九州方言では「u?」になっている。「au」(開音)は他地域と同じく「o?」になる[9][10]。[例](合音→u?)けふ→けう→きゅー(今日)、ようじん→ゆーじん(用心)、いっしょう→いっしゅー(一升)、せう→しゅー(しよう)[例](開音→o?)甘く→あまう→あもー、いっしゃう→いっしょー(一生)
子音
「せ」「ぜ」は本来「しぇ」「じぇ」と発音されるが、若年層では「せ」「ぜ」になっている[11][12]。県内全域で合拗音クヮ、グヮがあるがこれも高齢層に限られてきている[7][13]。九州方言では四つ仮名の区別、つまり「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」の区別を残すところが広いが、長崎弁では区別はない[11]。また鼻濁音もなくガ行子音はgである[11]
ラ行子音
語中のラ行子音が、そり舌音になったり、子音脱落を起こしたりすることがある[14]。[例]あい(あれ)
促音化・撥音化
県内全域で動詞の語尾「る」の促音化が起こる[14]。(例)「くっ」(来る)、「かんがゆっ」(考える)[14]また、カ語尾の形容詞・形容動詞でも、「高か」>「たっか」のような促音化が起こる[14]。語頭以外のナ行音・マ行音が撥音化する傾向がある[14][15]。(例)「いん」(犬)、「つんたか」(冷たい)[14]
島原方言
島原方言では、ザ行音とダ行音の交代が顕著である[16][17]。また、リをヂ、リョをヂョと発音することがある[16]。「鳥」→「とる」、「鮑」→「あわぶ」のように、イ段がウ段に変わる現象もあり、特にリ・キ・ミで顕著である[18]
アクセント

長崎県中南部方言の二型アクセント型語例二拍三拍四拍
A型血・風・川・形
体・小豆・かまぼこかぜ
ちがかたち
かぜがかまぼこ
かたちが
B型手・春・足・海
命・からす・雷はる
てがいのち
はるがかみなり
いのちが

中南部方言は二型(九州西南部式)アクセントである[19]。二型アクセントは鹿児島や熊本県西部のアクセントと共通するもので、アクセントの型の種類がA型とB型の2種類を持つものである。長崎県内の二型アクセントでは、「高低」「高高低」「高高低低」(二拍では第一拍が高く、三拍以上では第二拍まで高い)のように発音されるA型と、「低高」「低低高」「低低低高」(最後の拍のみ高い)のように発音されるB型の2種類のアクセントを持つ[20]。同じ語であっても助詞がつくかどうかで高く発音する部分の移動があり、たとえばA型の語彙である「風」は、「かぜ」「かぜが」のように発音され、B型の語彙である「春」は「はる」「はるが」のようになる。それぞれの型に所属する語彙と音調は右の表のようになる。若年層では、A型は第一拍が低くなって「かぜが」のように発音されるようになっている[21]。また、佐賀県に近い地域や島原市では「風・川」の類が「かぜが」のようになることがある[22]

一方、北部方言は無アクセントで、アクセントによる型の区別は行われない[21]。丁寧な発音では全ての語が平板に発音される[21]
文法
動詞

動詞の活用の種類には、五段活用上一段活用下二段活用カ行変格活用(来る)、サ行変格活用(する)があり、ナ行変格活用は長崎県ではほぼ消えている[23]。下二段活用があるのは九州全体の特徴で、未然形「受け(ん)」、連用形「受け(た)」、終止形と連体形は同形で「受くる」、仮定形「受くれ(ば)」、命令形「受けろ」のようになり終止・連体形と仮定形に共通語との差異がある[24]。一方で、九州方言各地と同じく長崎弁でも一段・二段活用が「起きらん」「起きれ」のように五段活用化する傾向が強い[23]。上一段活用は五段化が広く起こるが、下二段活用では五段化は二拍語に限られる[25]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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