長崎市への原子爆弾投下
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ボックスカーは小倉を離れて約20分後、長崎県上空へ侵入、午前10時50分頃、ボックスカーが長崎市上空に接近した際には、高度1,800メートルから2,400メートルの間が、80パーセントから90パーセントの積雲で覆われていた[13]

補助的にAN/APQ-7“イーグル”レーダーを用い、北西方向から照準点である長崎市街中心部上空へ接近を試みた。スウィーニーは目視爆撃が不可能な場合は太平洋に原爆を投棄せねばならなかったが、兵器担当のアッシュワース海軍中佐が「レーダー爆撃でやるぞ」とスウィーニーに促した[注釈 13]。命令違反のレーダー爆撃を行おうとした瞬間、本来の投下予定地点より北寄りの地点であったが、雲の切れ間から一瞬だけ眼下に広がる長崎市街が覗いた。ビーハンは大声で叫んだ。「街が見える!」「Tally ho![注釈 14] 雲の切れ間に第2目標発見!」

スウィーニーは直ちに自動操縦に切り替えてビーハンに操縦を渡した。工業地帯を臨機目標として、午前10時58分、高度9,000メートルから「ファットマン」を手動投下した。ファットマンは放物線を描きながら落下、約4分後の午前11時2分、市街中心部から北へ約3キロメートルそれた(目標地帯からは500?600m北とする説もある[14])松山町171番地の別荘テニスコート上空503メートル±10メートル[注釈 15]で炸裂した[注釈 16]

「ボックスカー」は爆弾を投下直後、衝撃波を避けるため北東に向けて155度の旋回と急降下を行った。爆弾投下後から爆発までの間には後方の「グレート・アーティスト」から爆発の圧力、気温などを計測する3個のラジオゾンデ落下傘をつけて投下された[注釈 17]。これらのラジオゾンデは、原爆の爆発後、長崎市の東側に流れ、正午頃に戸石村上川内(爆心地から11.6キロメートル)[15][16]、田結村補伽(同12.5キロメートル)[17][18]、江の浦村嵩(同13.3キロメートル)[19]に落下した[20][注釈 18][注釈 19]

「ボックスカー」と「グレート・アーティスト」はしばらく長崎市上空を旋回し被害状況を確認し、テニアン基地に攻撃報告を送信した。長崎を090158Zに有視界で爆撃した。戦闘機の迎撃も、対空砲火もなし。結果は「技術的には成功」といえるが、他の要素のため、次の行動に移る前に、会議が必要である。外見上の効果は広島と同じ。投下後の機内の故障により、沖縄に向かう必要あり。燃料は沖縄までしかない。 ? 長崎市編『ナガサキは語りつぐ』岩波書店 1995年 91頁)[注釈 20]香焼島から撮影された長崎原爆のキノコ雲(松田弘道撮影)

この時の原爆爆発の様子は16mmのカラーフィルムに3分50秒の映像として記録された。この映像には爆発時の火の玉からキノコ雲までがはっきりと写っている[注釈 21]

長崎のキノコ雲については、爆心地から約10キロメートル離れた香焼町で炸裂から約15分後に住民が撮影した写真や、大村市の大村海軍病院から撮影された写真[22]が残されている他、遠くの県からも見えたとの証言もある。約100キロメートル離れた熊本県熊本市でも「ピカッと閃光が走り、空気がぶるぶるっと震え、遠くにキノコ雲が上がるのが見えた」との証言がある[23]。また遠く200キロメートル離れ、九州山地の東側に位置する大分県中津市でも「あの日長崎方面から立ち上がるキノコ煙が見え、何事かと不安になり恐ろしかった」と当時を語る証言もある。
帰還

ボックスカーは長崎市上空を離脱する際には残燃料約1,000リットルであり、計算では沖縄の手前120キロメートルから80キロメートルまでしか飛べないと考えられた。スウィーニーはエンジンの回転数を落とし徐々に降下することで燃料を節約し、14時に沖縄県読谷飛行場に緊急着陸した[注釈 22]。残燃料は僅か26リットルであったという。着陸後、スウィーニーはドーリットル空襲で名を馳せたアメリカ第8航空軍司令官ジミー・ドーリットル陸軍中将と会談した。燃料補給と整備が終了したボックスカーとグレート・アーティストは17時過ぎに離陸、23時06分にテニアン島に帰還した。
長崎原爆破壊された浦上天主堂(1946年1月7日撮影)荒野状態の浦上天主堂付近破壊された寺院と仏像(1945年9月24日撮影)

長崎原爆はプルトニウム239を使用する原子爆弾である。このプルトニウム原爆はインプロージョン方式で起爆する。長崎原爆「ファットマン」はTNT火薬換算で22,000トン(22キロトン)相当の規模にのぼる。


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