長崎市への原子爆弾投下
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この戦術は、広島市への原爆投下の際と同じものであり、日本軍はこれに気付いて何がなんでも阻止するだろうとスウィーニーは懸念を抱いた[注釈 5]

出撃機は合計6機であった[注釈 6]

スウィーニーの搭乗機は通常はグレート・アーティストであったが、この機体には広島原爆投下作戦の際に観測用機材が搭載されていた。これをわざわざ降ろして別の機体に搭載し直すという手間を省くため、ボック大尉の搭乗機と交換する形で、爆弾投下機は「ボックスカー」となった[注釈 7]

ボックスカーには、スウィーニーをはじめとする乗務員10名の他、レーダーモニター要員のジェイク・ビーザー中尉、原爆を担当するフレデリック・アッシュワース海軍中佐、フィリップ・バーンズ中尉の3名が搭乗した[注釈 8]

先行していたエノラ・ゲイからは小倉市は朝靄がかかっているがすぐに快晴が期待できる、ラッギン・ドラゴンからは長崎市は朝靄がかかっており曇っているが、雲量は10分の2であるとの報告があった。この2機に関しては9日朝に国東半島付近を飛行中に目撃され、西部軍管区司令部は7時50分に空襲警報を発令した[4]

前回の広島市への原爆投下では、3機の合流地点は、硫黄島上空であった。しかし、今回は、台風が硫黄島付近で勢力を増しつつあり、そのため合流地点を屋久島へ変更していた[5]。3機は屋久島まで個々に飛行を行った。1945年8月6日と9日の原爆投下の飛行ルート

午前7時45分に屋久島上空の合流地点に達し、計測機のグレート・アーティストとは会合できた[注釈 9]が、島の西側を旋回していた写真撮影機のビッグ・スティンクとは会合できなかった[4]。それでも高度12,000メートルの地点でエノラ・ゲイ、ラッギン・ドラゴンからの気象報告を受信したスウィーニーは2機編隊で作戦を続行することにした[4][注釈 10]。この気象報告は埼玉県大和田通信所で傍受されており、直ちに西部軍管区に転送された[4]

午前9時40分、大分県姫島方面から小倉市の投下目標上空へ爆撃航程を開始し、9時44分投下目標である小倉陸軍造兵廠上空へ到達。爆撃手カーミット・ビーハン陸軍大尉がノルデン爆撃照準器から目標を確認し、それを受けてスウィーニーが投下用意を令して爆弾倉を開け、スウィーニー以下全搭乗員が保護メガネを着用して爆発に備えた[6]。ところが、当日の小倉上空を漂っていた霞もしくは煙のために照準器の視野が遮られ、目視による投下目標確認に失敗する[6]。この時視界を妨げていたのは前日にアメリカ軍が行った、八幡市空襲(八幡・小倉間の距離はおよそ7キロメートル)の残煙と靄だといわれる(アメリカ軍の報告書にも、小倉市上空の状況について『雲』ではなく『煙』との記述が見られる)[4]。また、この時地上では広島への原爆投下の情報を聞いた日本製鐵八幡製鉄所の従業員が、9日朝、敵機が少数機編隊で北上している報を聞き、上司の命令で煙幕装置に点火。新型爆弾を警戒して「コールタールを燃やして煙幕を張った」と証言しており、これが影響した可能性もある[7]。ボックスカーは旋回して爆撃航程を少し短縮して爆撃態勢を繰り返すものの煙で依然として目標がつかめなかったばかりか、日本軍高射砲からの対空攻撃が激しくなり、ボックスカーの周囲には高射砲からの弾着が取り巻いて機体が爆風で揺さぶられるようになった[6]。さらに、大和田通信所からの情報を転送された各基地のうち、陸軍芦屋飛行場から飛行第59戦隊の五式戦闘機、海軍築城基地から第203航空隊の零式艦上戦闘機10機が緊急発進してきたことも確認された[6][注釈 11]。ボックスカーは東側に転じて3度目となる爆撃航程を行うがこれも目標を確認することが出来ず失敗[8]。この間およそ45分間が経過した。この小倉上空での3回もの爆撃航程失敗のため残燃料に余裕がなくなり、その上「ボックスカー」は燃料系統に異常が発生したので予備燃料に切り替えた。その間に天候が悪化して目視爆撃が難しくなり、目標を小倉市から第二目標である長崎県長崎市に変更すべく午前10時30分頃、小倉市上空を離脱した[9][注釈 12]
長崎上空

3回原爆投下を試みたが、果たせなかったスウィーニーは小倉から攻撃開始地点の姫島へ戻ろうとした。コックピットの他の隊員から第2目標の長崎行きを勧められる。突然、スウィーニーは右旋回して長崎の方向に向かった[10]


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