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続いて、金属板を磨いた金属鏡が作られ、多くは青銅などを用いた銅鏡であったが[注釈 1]、後にめっきを施されるようになった(表面鏡)。現存する最古の金属鏡は、エジプト第6王朝紀元前2800年)の物。以来、・錫およびそれらの合金を磨いたもの、および水銀が鏡として用いられる。

東アジアでは、中国の銅鏡史で、約4千年前の「斉家文化期」(新石器時代)が古く、代を経て、春秋戦国時代になると華南地方を中心に大量に生産・流通することとなる[6]。中国鏡の日本への渡来は弥生時代中期から確認される[7](日本での金属鏡の始まりは前2世紀前後)。日本では、紀元前2世紀から後16世紀(弥生期から桃山期)までの約1800年間を「古鏡の時代」と区分・分類している[8]

現代の一般的な鏡はガラスの片面にアルミニウムや銀などの金属のめっきを施し、さらに酸化防止のため銅めっきや有機塗料などを重ねたものである(裏面鏡)。

1317年ヴェネツィアのガラス工が、錫アマルガムをガラスの裏面に付着させて鏡を作る方法を発明してから、ガラスを用いた反射の優れた鏡が生産されるようになった。これはガラスの上にしわのない錫箔を置き、その上より水銀を注ぎ、放置して徐々にアマルガムとして密着させ、約1ヶ月後に余分の水銀を流し落として、鏡として仕上げるという手間のかかるものであった。

1835年ドイツフォン・リービッヒが現在の製鏡技術のもととなる、硝酸銀溶液を用いてガラス面に銀を沈着させる方法(銀鏡反応)を開発し、以来、製鏡技術は品質、生産方法共に改良され続けてきた。

今では、鏡は高度に機械化された方法で大量生産され、光沢面保護のための金属めっきや塗料の工夫により飛躍的に耐久性が向上したが、ガラスの裏面を銀めっきした鏡である点は19世紀以来変わらない。これは、銀という金属は可視光線の反射率(電気伝導率および熱伝導率に由来する)が金属中で最大のためである。

一応アルミを利用する例もあるが、銀に比べ反射率が若干劣る[9]。ガラスなどに蒸着させず単体で用いたものは割れず軽い上に強度に優れるが映りが劣る[10]

ガラスを使う鏡の他に、ポリエステルなどのフィルムの表面に金属を蒸着し、可搬性や安全性を高めたものもある。
鏡と人間、動物の認識ヒトは鏡に映った自分を認識できる

鏡の起源は人類と同じほど古い。最古のそれは水鏡(水面)に遡るからである。鏡に映る姿が自己であることを知るのは、自己認識の第一歩であるとされる。鏡によって、初めて人は自分自身を客観的に見る手段を得た。

鏡に映った自分を自分と認識できる能力を「自己鏡映像認知能力」と呼ぶ。自己鏡映像認知能力の有無は動物知能を測るための目安となる。チンパンジーなどにおいては、鏡に映る姿を自分自身として認識し、毛繕いのときに役立てるという。チンパンジーのように鏡を利用するまで至らないが、自己鏡映像認知能力がある動物として類人猿のほか、イルカゾウカササギヨウムブタ等が挙げられる[11]ミラーテストも参照。

鏡に映像が「映る」という現象は、古来極めて神秘的なものとして捉えられた。そのため、単なる化粧用具としてよりも先に、祭祀の道具としての性格を帯びていた。鏡の面が、単に光線を反射する平面ではなく、世界の「こちら側」と「あちら側」を分けるレンズのようなものと捉えられ、鏡の向こうにもう一つの世界がある、という観念は通文化的に存在し、世界各地で見られる。

水鏡と黒曜石の石板鏡と金属鏡しかなかった時代・古代哲学などにおいては、鏡像はおぼろげなイメージに過ぎないとされた。一方、近代になり、ガラス鏡が発達すると、シュピーゲル(ドイツ語)やミラー(英語)という名を冠する新聞が登場するようになる。これは、「鏡のようにはっきりと世相を映し出す」べく付けられた名称である。

鏡は鑑とも書き、このときは人間としての模範・規範を意味する(例として、『史記』には、「人を鑑とする者は己の吉凶を知る(人を手本とする者は自分の将来も知る)」と記される)。手本とじっくり照らし合わせることを**に鑑みる(**にかんがみる)というのも、ここから来ている。また日本語でも「鏡」と望遠鏡拡大鏡などが同じ鏡という字を用いているし、英語のグラスもまた、ガラス、レンズだけでなく、鏡の意味も持つ。
中国伝説での「?母」

『物原』に黄帝の次妃「?母(ぼぼ)」によって石板鏡が発明されたとされている。別称、女。姓>は、中国で、女?の氏族として知られている。


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