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石材としては、長水石などが用いられる。九州沖縄県では室町時代まで滑石製石鍋が使用された。朝鮮料理でもトルソと呼んで使用し、石焼きビビンバは代表例となっている。日本では鍋物、石焼き丼、石焼きオムライス、石焼き中華丼、石焼きカレーなど。銅鍋(写真手前や右側)

実用できる材質の中で最も熱伝導率が高く、効率の良い加熱ができるので鍋の材質として理想的なものである。しかし材質的に柔らかいので傷が付きやすく、酸化や電気腐食が起きやすいため、手入れには手間が掛かる。そのため、現代の銅鍋の内側にはのメッキが施されており、内側が銀色に輝いている。展性に優れていることから鍛造成型されることが多かった。鍛造鍋は鋳造より薄く軽いが、製造には技術力と手間を要する上、地金の銅も鉄より高価であるため高級品であった。安価なプレス成型の雪平鍋に鍛造の鎚跡を模したパターンが成型されているのも、高級品であった名残である。現在でも細々ながら職人の手で製造が続けられており、本物の鍛造鍋は仔細に観察すれば、(製作者の技量レベルにもよるが)鎚跡が完全に一定にはならないのでプレス成型と区別できる。銅製の調理器具で調理すると料理に銅イオンが染み出す。銅イオンは卵白の泡を安定させたり緑野菜の色を鮮やかにする効果がある反面、人体から排出されにくく大量に摂取すると胃腸障害や肝障害を起こす危険性がある。よって、内側が錫メッキされていない銅の調理器具を毎日使うことは勧められない[7]

古くは鍋の材料として最も多用されていた。丈夫でにも強く、のなじみがとても良いため,強火と油を多用する中華鍋の材料としては主流である。使用することで鉄分の補給ができ、熱伝導率も比較的良好である。錆びやすいこと、重いことが欠点。鋼板プレス加工したものと鋳物(鋳鉄)製のものがある。鋳鉄製は厚みがあるため特に重いが、厚みにより熱分散がおこなわれ、均一で安定した加熱ができること、また熱容量が大きいため、食材投入時の温度低下が少ないという特長がある。過去には鋳鉄鍋は銅鍋よりも廉価な普段使いのものが多く、これの補修を請け負う鋳掛屋が各地で行商していた。現代の鉄鍋は大部分が鋼板プレス製に取って代わられ、鋳鉄鍋は逆に南部鉄器のような高付加価値の工芸品として生き残っていたが、今ではその調理性能の高さから再評価され普及しつつある。鋼板製、鋳鉄製のいずれも、近代以後は防錆力を高めるため表面に琺瑯加工を施した製品が市販されている。中華鍋のようなコーティングされていない鉄鍋は腐食や焦げ付きを起こしやすいため、新品をおろした時には空焼きや鍋ならし(シーズニング)といった表面処理を行う場合がある[8][9]ステンレス鍋
ステンレス
錆に強く、硬さと耐衝撃性もあり、一般的な鍋の材質としては最も耐久性に優れる。アルミ材に比べプレス成型にはより高い技術を要するが、現在ではアルミと並ぶ鍋素材の主流となった。表面を磨いた鏡面仕上げはステンレス材の特権と言える。熱伝導率が悪い欠点があるため、後述の多層底構造で改善を図り、加熱性能をアルミ鍋や鉄鍋に近づけている。
単層鋼
熱伝導率が非常に悪く鍋の材質としてはあまり好ましいものではない。調理時間がかかる。熱ムラにより食材が焦げやすい。
全面多層鋼(クラッド鋼
外側の部分にステンレスを配置し、内側にアルミなどのより熱伝導率の良い材料をはさみ込んで、圧延することで一枚の板状に加工した材料。断面を見ると、サンドイッチ状に複数の材質が重なり合って結合しているのを見ることができる。各材質は熱伝導率が異なるので、境界面で水平方向に熱の拡散がおきて、結果的に鍋全体が均一に加熱されることになり加熱むらが出にくい。複合層は3層、5層、7層のものが多く、これ以上に多層のものもある。
多層底
単層鍋の底の部分のみ多層構造にしたもの。全面多層鋼鍋より安価。加熱ムラは、底面は少ないが、側面(特に底に近い下部)に出やすく焦げ付きの原因となりやすい。
アルミニウム
現在、ステンレスと並んで鍋に多用されている材質である。銅につぎ熱伝導率が高く、軽く、錆びにくい。展性にも優れているのでプレス成型で安価に大量生産が可能。だが、柔らかで傷が付きやすいという欠点がある。に弱いので、耐蝕性を高めるためアルマイト加工が施された鍋も多い。業務用寸胴鍋のような大型製品では軽さのメリットが代えがたく、依然主流を占める。以前より家庭用アルミ鍋では内部をフッ素加工したものが販売されているが、近年はコーティング技術の進化により高耐久になってきたため、業務用としても使われ始めている。ホーロー鍋
琺瑯(ほうろう、ホーロー)
鉄や銅製の鍋の上に、ガラス質の釉薬の層を焼き付けたもの。腐食に強く、金属鍋にはない独特の美しさがある。熱伝導率の高い金属を使用しつつ耐食性もあるというのもメリットである。欠点は加熱直後に水につけるなどの急激な温度変化や、衝撃を受けると表層の釉薬に小さな破損(欠け)が生じることである(だが中身の金属部分は大丈夫で鍋としての機能には問題が無いので、小キズを気にしなければ使い続けることができる)。50年ほど前は鋼板製のホーロー鍋はかなり広く使用され、たいていの家庭にあったが、アルミ鍋やステンレス鍋が一般に普及するにつれ減ってきた。しかしル・クルーゼに代表される鋳鉄製ホーロー鍋は、その調理性能の高さ(「鉄」の項参照)に加え、陶製鍋より頑丈で腐食に強く、琺瑯にはあざやかな色のものもありファッション製も兼ね備え、高価にもかかわらず料理好きたちの支持を集め、近年は日本でも人気である。耐熱ガラス鍋
耐熱ガラス
性質は土鍋に近く、中身の様子が確認しやすいという長所が挙げられる。欠点は、やはり衝撃に弱いこと。本体よりも耐熱性の要求が緩い鍋蓋に関しては多く用いられる。
チタン
鍋の材料として利用されるようになったのは比較的最近であり、しかも用途は限定されている。精錬加工が難しいことから高価で、熱伝導率は極めて悪く、調理器具としては評価は低く、通常の料理店や家庭の厨房では使われない。重さは鉄の約半分でアルミより固いという特徴があり、軽量性が非常に求められる登山用のコッヘルの鍋など限定された用途で使われていたが、現在では30 cmを超える業務用中華鍋の販売も見受けられる。錆に強い。
シリコン
電子レンジで加熱することを前提としており、直火は使用できない。蓋付きであり、無水調理(蒸し料理)や、袋麺のインスタントラーメン調理などに使用する。多くが蒸し器の一種と言えるが、このシリコンスチーマーの大半が鍋型をしており[注釈 1]、一部の商品では鍋として販売されている。柔らかく、高さ方向に薄く折り畳めるものも多い。
紙鍋
日本の宴会、座敷限定のもの。和紙に耐水加工を施し、直接火が当たらないように用いる。電磁調理器を使い、紙鍋の中、あるいは下に鉄板を置いて熱源とすることもある。
貝殻
東北地方かやきなど、日本海側には大きなホタテガイアワビの貝殻を鍋代わりにする料理の例が見られる。
複合素材
日本の近年の家庭用キッチン用品の売り場では、様々な素材を組み合わせた鍋が増えてきている。
地域別の種類

人類はアフリカ起源なので、アフリカあたりから説明を始め、東方へ向かい順に説明する。
アフリカ
タジン鍋
モロッコ料理など北アフリカの同名のマグリブ料理タジン(タージーン)を調理するのに利用される浅い鍋。円錐形の蓋がついているのが特徴で、食材から出た蒸気が蓋の上部で冷やされて液化し再び蓋を伝って戻るため、ほとんど水を使わず蒸し焼きができる。元々土鍋だが、現在では琺瑯引きの鋳鉄製タジンも製造されている。
クスクス鍋
マグリブ料理のクスクスを調理するのに利用される2段式の鍋。下段の深い鍋でタージーンという具入りのスープを煮込み、底に穴の開いた上段の鍋でクスクスを蒸す。スープから立ち上る蒸気でクスクスを蒸す仕組みになっている。

ナイジェリアで使われた陶製鍋

タジン鍋

脚つきの金属鍋。南アフリカ製。

脚つきの金属鍋。ボツワナのMotokweで使用している人々。

ヨーロッパ
ソースパン
片手の浅鍋。文字通り
ソース作りに多用される。
フライパン
フライや、炒め物などに利用される径が大きく浅い片手鍋。
キャスロール
オーブンに入れて全方向から加熱する鍋[10]。キャスロールは元のフランス語読み。英語読みではキャセロール。
ミルクパン
牛乳を温めるのに適した径が小さく深めの片手鍋。
キャクロン(fr:caquelon)
スイス、フランス、ベルギーなどでフォンデュに使われる。
パエリア鍋(パエジェーラ)
パエリアを炊くための径が大きく浅い両手鍋。なお、「パエリア」はバレンシア語の原義ではフライパンを意味する。
外輪鍋(そとわなべ)


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