鋏角類の前体背面は、原則として左右に側眼(lateral eye)、中央に中眼(median eye)を有し、それぞれ祖先形質として複眼と単眼である[23][24]。ウミグモの場合は側眼はなく、原則として2対中眼のみをもつ[23]。それ以外の鋏角類の中眼は通常1対[注釈 6]で、カブトガニ類とウミサソリ類の側眼はれっきとした複眼である。基盤的なサソリ類と一部のワレイタムシもそれに近い側眼をもつ[23][25]が、現生のクモガタ類はそれが退化し、複眼の個眼に由来する数対以下の単眼となる[23][24][26]。なお、コヨリムシのように、全ての眼を退化消失した鋏角類もある[23][26]。
前体の付属肢[ソースを編集]サソリ(左)とカブトガニ類(右)の前体付属肢
I:鋏角
II:触肢
III-VI:脚クモ(A)、ヒヨケムシ(B)、およびコヨリムシ(C)の鋏角。化石鋏角類のオファコルス。前体の腹側ははさみのある5対の歩脚型付属肢(2-6)の他にも、その前4対に由来と思われる外肢(Ex)をもつ。「鋏角」および「触肢」も参照
体節数に応じて、前体は原則として6対の付属肢(関節肢)がある[3]。第1体節は本群の最も重要な共有派生形質[27][5][3]である1対の鋏角(きょうかく、chelicera, 複数形: chelicerae, ウミグモの場合は鋏肢 chelifore という)をもつ。通常は目立たない鋏型の付属肢であるが、分類群によっては巨大化したり[注釈 7]牙のような形[注釈 8]になったりする場合もある[3]。鋏角は原則として3節の肢節(第1肢節は柄部、第2肢節は掌部と不動指、第3肢節は可動指[3])に分かれるが、柄部を欠けて2節になる分類群はクモガタ類に多く見られ[注釈 9]、イトダニ科のダニと一部のウミグモ類はその柄部が2節以上に分かれ、計4節以上に分かれた鋏角をもつ[21][3][28]。
次の第2-6体節は、7節前後の肢節に分かれた5対の歩脚型付属肢がある[3]。そのうち最初の1対は触肢(しょくし、pedipalp、ウミグモの場合は palp)といい、クモガタ類とウミグモ類の場合ではこの付属肢の特化が進んでおり、明確に脚から区別される[注釈 10][3]。