多くの場合、鋏角類はペニスや産卵管と言えるほど顕著な外性器はなく、生殖器の外部は生殖孔(gonopore)のみによって表れる。ウミグモ類の生殖孔は各脚の基部に開いている[41]が、それ以外の鋏角類では知られる限り後体第2節(第8体節)の腹側のみに開口し[11][3]、該当体節の蓋板もしくは腹板由来の生殖口蓋(genital operculum)に覆われる[3]。生殖孔に当たる部分で外性器をもつ例として、ウデムシとサソリモドキは生殖口蓋の裏側に1対の小さな生殖肢(gonopod)[3]、ウミサソリ類とカスマタスピス類は生殖口蓋の中央に「genital appendage」という棒状の生殖肢をもつ[42][43]。ザトウムシは例外的に雌雄それぞれ発達したペニスと産卵管をもち[3]、クツコムシのオスも生殖孔にペニスと呼ばれるほど突出した構造体がある[44]。生殖孔でない部分にあるものの配偶行動に直結する器官は、クモの触肢にある触肢器(palpal organ, 移精器官)と、ヒヨケムシのオスの鋏角にある鞭毛(flagellum)が挙げられており、クツコムシのオスの第3脚にも「copulatory organs」という同じ機能をもつと思われる器官がある[3]。
神経系サソリモドキの神経系
各項説明:[注釈 22]
ウミグモ類の神経系(黄、B)
カブトガニ類の神経系
ウデムシの神経系
各項説明:[注釈 23]
クモの神経系(青)
他の節足動物と同様、鋏角類ははしご形神経系をもつ。脳(brain もしくは syncerebrum[45])に含まれる神経節の体節や付属肢との対応関係はかつて議論があったが(後述参照)、2010年代以降では先節の神経節は前大脳(protocerebrum)、第1体節/鋏角の神経節は中大脳(deutocerebrum)、第2体節/触肢の神経節は後大脳(tritocerebrum)という解釈が確定的で、それ以降の体節/付属肢の神経節は腹神経索(ventral nerve cord)と扱うのが一般的である[20]。ウミグモ類の脚の神経節ははっきりとしたはしご形を残るが、カブトガニ類とクモガタ類の場合、脳神経節と脚の神経節は融合が進み、脳と腹神経索の区分がほぼなくなり、前体全ての神経節が「synganglion」という1つの集中部になっている[45]。