初代ルパン役の山田康雄は「ルパン三世という作品のベースはルパンと銭形の関係だ」と考えており、「超一流の泥棒と超一流の警部が追いつ追われつつするうちに、相手の才能を認めあった上で芽生えた奇妙な友情、これなくしてルパン三世は成立しないのです」と語っている[3]。これについて初代銭形役の納谷悟朗は、山田の没後に「すごく嬉しかったよ」と回想している[4]。 上層部からは失敗続きのためかあまり良い評価をされておらず[注 37]、『1$マネーウォーズ』で一度出した辞表を撤回しようとした際には「もういらない」「役立たず」とまで言われており、ICPOは銭形がいつまで経ってもルパンを逮捕できないことに業を煮やし、ルパン抹殺という強行手段に打って出たことも何度かある(だが、結局は失敗に終わっている)。挙句の果てに『グッバイ・パートナー』では「実はルパンと共謀している」というデマを流され、共謀罪の容疑で逮捕までされている。 しかしそれは「ルパン一味の実力が相対的に見て余りに高過ぎる」ためであって、PART5第23話で八咫烏五郎はルパン三世専任捜査官である銭形の立場を「絶対に売れない商品を押し付けられた営業マン(実現不可能な仕事をやらされている)」と例え、世間の銭形に対する評価は間違っていると抗弁している。つまり、銭形は決して無能という訳ではなく、むしろその腕は確かなものなのである。事実、『TV第1シリーズ』のOPナレーションではルパンから「警視庁の敏腕刑事」「俺の最も苦手なとっつぁんだ」と説明されており、『TV第1シリーズ』第4話「脱獄のチャンスは一度」ではルパンを完璧な罠にかけて逮捕し[注 38]、『TV第2シリーズ』第37話「ジンギスカンの埋蔵金」ではジンギスカンに変装して立ち去ろうとしたルパンに対して「そっちはルパン用の特別製の扉」と別の扉へ誘導することでルパンを扉の中(実は護送車の中)に捕らえ[注 39]、第57話「コンピューターかルパンか」では後述の生け捕り術や射撃を駆使して五ェ門、次元、ルパンを次々と圧倒的な強さで負かし[注 40]、『炎の記憶?TOKYO CRISIS?』では作中の冒頭・中盤・結末の三度に亘ってルパンを罠に嵌めたりもしている。 もしルパン一味の面々が単独で勝負すれば誰も銭形には敵わないとされ[注 41]、「ルパンのことは何もかも知り尽くしているからな、殺す気で来るとなると手強い相手だぜ」(お互いに殺し合おうとは思っていない為、心底本気を出した状態ではない)と次元も述べており[ep 14]、前述の『TV第2シリーズ』第57話及び第97話「ルパン一世の秘宝を探せ」ではルパン、次元、五ェ門の3人に本気を出して1対1で対決し立て続けに勝利し、『PartIII』第37話「父っつぁん大いに怒る」でルパンに殺害された哀れな少女・アンの仇を討とうとした際には容易く五ェ門を退け、ルパンとの生死を賭けた決闘(ICPOにはルパン射殺許可を申請していた)で互角の攻防を繰り広げている[注 42]。 時には事件の真の黒幕を逮捕したり[注 43]、犯罪組織やテロ組織を壊滅するという功績が数多くあり[注 44]、特に劇場版『カリオストロの城』ではカリオストロ公国によるゴート札(中世以来ヨーロッパの動乱に必ず関わり、世界経済に影響を与えている偽札)の製造を摘発する為に不二子と協力して衛星中継で全世界に公表する[注 45]、『ワルサーP38』ではルパンから提供された情報を基に[注 46]世界各国の首脳が密かに公認する暗殺組織タランチュラの本拠地に報道機関を多数引き連れて乗り込む[注 47]等、「ICPOが及び腰になる程の巨悪の実態を白日の下に晒す」という偉業さえも成し遂げている。その実力を買われ、ルパン逮捕以外にも美術品や現金・金塊の輸送[注 48]、要人警護の任務に就くこともあり、TVスペシャル『the Last Job』では後任の捜査官がルパンと全く勝負にならなかったこと等から一部のICPOの捜査官や上層部の幹部達からはルパンを追い続けてきた故の経験と実力を買われている描写があり、『くたばれ!ノストラダムス』ではICPO代表としてダグラスに招聘されている。 失敗ばかりが続いている印象があるが、実際には前述の例を含めルパン達を捕まえることに成功した事例も数多くあり、最終的に逃げられてしまうのはルパンを収監しても脱獄されてしまう拘置所の管理体制の不備のせいでもある[注 49]。銭形自身はルパンを何度も捕まえていることに内心では自負があり、「ルパンを捕まえられるのは、私以外にいません!」(『ルパンVS複製人間』より)とたびたび豪語したり[注 50]、『TV第2シリーズ』第72話では「ルパンを100回捕まえた」と自慢げに語っており(しかし、「100回捕まえて、100回逃げられた」と揶揄されている)、『TV第2シリーズ』第38話「ICPOの甘い罠」では自分に代わってルパン担当の捜査官に就任した不二子に「ルパンを捕まえさせたくない」という思いから、彼女の罠に嵌められたルパンを逃がすことに協力したり、確保されたルパンを強引に連れ出したりまでしている(ルパンから「警察をクビになっちまうぞ」と忠告までされている)[注 51]。
実力