銀河系
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多くの民族が天の川の正体に思いをはせ、さまざまな伝説が残されている[13]
科学ハーシェルが恒星の計数観測を元に描いた銀河系。中央やや左にある大きめの点が太陽系の位置を表す。

天の川が遠く離れた星々からなっているという説を最初に唱えたのは紀元前400年頃の学者デモクリトスである。その後、1609年ガリレオ・ガリレイ望遠鏡を使って天の川を観測し、天の川が無数のの集まりであることを確認した[14]1755年にはイマヌエル・カントが、天の川も太陽系と同様に多くの恒星が重力によって円盤状に回転している天体であるとする説を唱えた。1788年にはウィリアム・ハーシェルが恒星の見かけの明るさを距離に対応づけることで恒星の3次元的な空間分布を求める計数観測を行い、天の川が直径を約6000光年、厚みを約1000光年の円盤状の構造であるとし、太陽がそのほぼ中心にあるとした[15]

20世紀にはヤコブス・カプタインハーロー・シャプレーによってより正確な銀河系の構造が求められた。1908年にはハーバード大学天文台のヘンリエッタ・スワン・リービットケフェイド変光星の変光周期と絶対等級が比例する、いわゆる周期-光度関係を発見したことで[16]視差を利用できないほど遠方の星の距離が算出できるようになり、これを利用して1918年にシャプレーが天の川銀河の大きさを測定し、さらに太陽系の位置が銀河の中心から大きく外れていることを明らかにした[17]。1920年にはシャプレーとヒーバー・ダウスト・カーチスの間でいわゆる「大論争(The Great Debate)」が起き、その中でシャプレーは渦巻銀河が銀河系の内部に、カーチスは外部にあることを主張した[18]。この議論は1924年にエドウィン・ハッブルがアンドロメダ銀河までの距離を算出し、アンドロメダ銀河が銀河系外部に存在することが明らかになったため、銀河系以外にも銀河が存在することが確かめられた[19]。また1958年にはヤン・オールトによって21cm線による電波観測がおこなわれ、これによって銀河系が渦巻銀河であることが明らかになった[20]。 詳細は「銀河#観測の歴史」を参照
年齢と形成史

銀河系の年齢は、約130億年と見積もられている[21][22]。銀河系で最も古い天体としては、HE 1523-0901の132億年や[23]HD 140283の約145億年などがある。HD140283の年齢が正しければ約138億年前の宇宙開闢よりも古くなってしまうが、誤差が8億年ほど存在するため、最も若い見積もりであれば矛盾は解消する[24]

銀河系はおおよそ100億年前にガイア=エンケラドゥス (Gaia-Enceladus)と呼ばれる矮小銀河と衝突し合体した。この際の残骸が銀河系のハローを形成したとの研究が2019年に発表されている[25]。また銀河系にほど近いいて座矮小楕円銀河はこれまで約50億から60億年前、約20億年前、10億年前の3度にわたって銀河系と衝突を繰り返しており、この衝撃によって銀河系内での恒星の誕生が促され、太陽系もこのときの衝撃によって誕生した可能性があるとされる[26]
構造銀河系の渦状腕の構造(黄色の点は太陽系)の想像図。グレーの部分は太陽系から見て銀河系の反対側にあるため、詳細な構造が不明である領域。

銀河系はハッブル分類でSBbcに分類される棒渦巻銀河[10]、総質量は約1兆2600億太陽質量であり[4]、約2000億 - 4000億個の恒星が含まれていると考えられている[5]

銀河系が普通の渦巻銀河でなく棒渦巻銀河であると考えられるようになったのは1980年代になってからである。2005年にスピッツァー宇宙望遠鏡によって行われた観測でもこのモデルは裏付けられており、さらに銀河系の棒構造はそれまで考えられていたよりも大きいことが明らかになっている[27]

銀河系の中心には超大質量ブラックホールと目される、非常に大きな質量を持つ小さな天体(いて座A*)が存在しており、2022年5月12日には直接観測に成功したと発表されている[28]。現在ではほとんどの銀河の中心に大質量ブラックホールが存在すると考えられている[29]

銀河系は多くの銀河の場合と同様に、銀河系内の恒星の軌道速度が中心からの距離によらずほぼ同じ速度となるような質量分布を持っている。中心のバルジや外縁部を除くと、銀河系の恒星の典型的な速度は約210から240 km/sである[30]。したがって、典型的な恒星の軌道周期はその軌道の長さのみに単純に比例する。これは系の中心に質量のほとんどが集中している太陽系のケプラー運動のような、異なる軌道を持つ天体がその軌道に応じて異なる軌道速度を持つ場合とは大きく異なっている。

銀河系のディスク(銀河円盤)の両端を結んだ直径は約10万光年と見積もられている[31]。太陽から銀河の中心までの距離は約2万6000光年から約3万5000光年と見積もられている。ディスク(銀河円盤)は銀河中心では外側に膨らんでおり、中心から遠さがるにつれて膨らみが小さくなる。

銀河系の棒構造は約2万7000光年の長さを持ち、太陽系と銀河中心を結ぶ直線に対して約44±10度の角度で銀河中心を貫いている。棒構造は主に年齢の古い赤い星から形成されている。
渦状腕銀河北極から見た銀河系の渦状腕の構造図。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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