銀河系
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銀河系はおおよそ100億年前にガイア=エンケラドゥス (Gaia-Enceladus)と呼ばれる矮小銀河と衝突し合体した。この際の残骸が銀河系のハローを形成したとの研究が2019年に発表されている[25]。また銀河系にほど近いいて座矮小楕円銀河はこれまで約50億から60億年前、約20億年前、10億年前の3度にわたって銀河系と衝突を繰り返しており、この衝撃によって銀河系内での恒星の誕生が促され、太陽系もこのときの衝撃によって誕生した可能性があるとされる[26]
構造銀河系の渦状腕の構造(黄色の点は太陽系)の想像図。グレーの部分は太陽系から見て銀河系の反対側にあるため、詳細な構造が不明である領域。

銀河系はハッブル分類でSBbcに分類される棒渦巻銀河[10]、総質量は約1兆2600億太陽質量であり[4]、約2000億 - 4000億個の恒星が含まれていると考えられている[5]

銀河系が普通の渦巻銀河でなく棒渦巻銀河であると考えられるようになったのは1980年代になってからである。2005年にスピッツァー宇宙望遠鏡によって行われた観測でもこのモデルは裏付けられており、さらに銀河系の棒構造はそれまで考えられていたよりも大きいことが明らかになっている[27]

銀河系の中心には超大質量ブラックホールと目される、非常に大きな質量を持つ小さな天体(いて座A*)が存在しており、2022年5月12日には直接観測に成功したと発表されている[28]。現在ではほとんどの銀河の中心に大質量ブラックホールが存在すると考えられている[29]

銀河系は多くの銀河の場合と同様に、銀河系内の恒星の軌道速度が中心からの距離によらずほぼ同じ速度となるような質量分布を持っている。中心のバルジや外縁部を除くと、銀河系の恒星の典型的な速度は約210から240 km/sである[30]。したがって、典型的な恒星の軌道周期はその軌道の長さのみに単純に比例する。これは系の中心に質量のほとんどが集中している太陽系のケプラー運動のような、異なる軌道を持つ天体がその軌道に応じて異なる軌道速度を持つ場合とは大きく異なっている。

銀河系のディスク(銀河円盤)の両端を結んだ直径は約10万光年と見積もられている[31]。太陽から銀河の中心までの距離は約2万6000光年から約3万5000光年と見積もられている。ディスク(銀河円盤)は銀河中心では外側に膨らんでおり、中心から遠さがるにつれて膨らみが小さくなる。

銀河系の棒構造は約2万7000光年の長さを持ち、太陽系と銀河中心を結ぶ直線に対して約44±10度の角度で銀河中心を貫いている。棒構造は主に年齢の古い赤い星から形成されている。
渦状腕銀河北極から見た銀河系の渦状腕の構造図。実線は観測によるもので、点線は推定。大半の星は時計回りに移動する。太陽(中央上部にある黄色い点)の位置からの灰色の線は、各星座の方向を表している。

色 渦状腕
青緑 3kpc腕 (3kpc Arm)・ペルセウス腕 (Perseus Arm)
じょうぎ腕 (Norma Arm)・はくちょう腕 (Cygnus Arm,Outer Arm)
たて・ケンタウルス腕(Scutum-Centaurus Arm)
いて・りゅうこつ腕(Carina?Sagittarius Arm)
このほか、下記のものを含む少なくとも2つの小規模な腕が存在する。
オレンジ オリオン・はくちょう腕 (Orion?Cygnus Arm、太陽と太陽系が含まれる)

銀河系の各渦状腕は(他の全ての渦巻銀河と同様に)対数螺旋を描いており、その角度は約12度である。銀河系には銀河中心から伸びた4本の渦状腕が存在すると考えられていて、それぞれ以下の名称が付けられている。

3kpc腕 (3kpc Arm)・ペルセウス腕 (Perseus Arm)

じょうぎ腕 (Norma Arm)・はくちょう腕 (Cygnus Arm,Outer Arm)

たて・ケンタウルス腕(Scutum-Centaurus Arm)

りゅうこつ腕 (Carina Arm)・いて腕 (Sagittarius Arm)

また、これ以外に二つの小さな腕や弧が存在する。代表的なものは以下の腕である。

オリオン腕(Orion Arm 太陽系が属する腕)

銀河系のディスク(銀河円盤)は古い恒星や球状星団からなる回転楕円体の銀河ハローに取り囲まれている。銀河ハローの直径は約25万 - 40万光年である[32]。ディスク(銀河円盤)にはガスや塵が含まれ、いくつかの波長では見通すことができないが、銀河ハローにはそのような物質はほとんどない。ディスク(銀河円盤)のうち、特に物質密度の高い渦状腕の内部では活発な星形成が行なわれているが、銀河ハローでは星形成はほとんど見られない。散開星団も主にディスク(銀河円盤)に存在している。

銀河系の質量のほとんどは暗黒物質で、ダークハローを形成している。ダークハローは銀河中心に向かって密度が高くなっている[33]

21世紀初頭の発見によって、銀河系の構造についての知識は広がりつつあると共に誤った知識から正しい知識へと変わりつつある。2005年、アンドロメダ銀河 (M31) のディスクがそれまで考えられていたよりもずっと大きく広がっていることが発見され[34]、銀河系のディスクもそれまでの推定より大きい可能性が高まっている。このことは、はくちょう腕がさらに外側に続いていることが発見されたことからも裏付けられている[35]。また、いて座矮小楕円銀河の発見と同時に、銀河の「破片」からなる帯がいて座を中心として極軌道を描いて取り巻いていることが発見され、これはこの伴銀河が銀河系との相互作用によって分裂しつつある姿であることが明らかになっている。この帯はいて座ストリームと呼ばれ[36]、約10億年前の銀河衝突の名残とされている[37]。同様におおいぬ座矮小銀河の発見に伴って、この銀河と銀河系との相互作用で生じた銀河の小片がリングとなって銀河系のディスクを取り巻いているのも見つかっている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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