鉄道車輌
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外燃機関である蒸気機関を動力とする車両は蒸気動車と呼ばれ、それ以外の内燃機関で走行する気動車を区別する時は内燃動車と称する[22]。内燃動車において用いられる機関としてはディーゼルエンジンガソリンエンジンガスタービンエンジンなどがある[23]。現代では一般的には、大出力を容易に得られ燃費のよいディーゼルエンジンが気動車の原動機として用いられている[24]。ディーゼルエンジンを用いた気動車のことをしばしばディーゼル動車あるいはディーゼルカーと呼ぶ[25][26][注釈 1]

内燃機関を動力とする場合は通常、エンジンで直接車輪を駆動することはできず、何らかの方法で変速する必要がある。機械的な変速機を使う場合を機械式トルクコンバータを使う場合を液体式、一旦発電して電力でモーターを駆動する場合を電気式という[27]。ただしガスタービン動車の場合、低速でも充分なトルクがあることから変速機を介しない場合がある[28]。電気式以外の方式では、機関を稼働したまま車両の停止や惰行に対応するためのクラッチも必要となる。

気動車においても動力車と付随車が存在する。高出力の機関を少数の車両に配置して残りの車両を付随車にする方式(「集中式」および「分散集中式」)と、低出力の機関をすべての車両に分散配置する方式(「完全分散式」)とがある。一般に、高出力機関を少数車両に配置する方式が、車両の重量や新製・保守費用などの点で優れている。しかし、短い編成で運転する場合や列車の分割・併合を行う場合の都合や、機関を搭載していない車両における冷暖房の問題などから、世界的に各車両に分散する方式が主流となっている[29]

気動車は、電車と比較した場合、変速機やエンジンの機構が複雑で、製造費と維持費が嵩む。また、電車が動力の変換装置を持っているだけなのに対し、エンジンと変速機の重量に加え、潤滑油、冷却水、動力に変換するための燃料自体も搭載する必要から重量が大きくなり、重量あたりの性能で劣っている。一方で地上側に電力を供給する膨大な設備を設置する必要がないというメリットがあるため、地方の閑散路線などでの運行には、電車より気動車の方がコスト面で適している[30]
客車詳細は「客車」を参照レンフェ (スペイン国鉄) タルゴ客車

客車という言葉は、広い意味では旅客車を表すこともあるが[31]、狭い意味では動力集中方式における旅客車を指す[32]。この意味では、客車は自身に動力装置を持たず、他の車両に牽引・推進してもらって走行する、主に旅客を乗せるための車両である[33]。動力装置は搭載していないが、ブレーキについては鉄道の草創期の旧式な車両を除けば装備している[34]。機関車により推進して運転する時に用いるための運転台を備えている車両もある[35]。また、車内の照明や空調に用いるための電力を供給する発電機を搭載していることもあり、安全に走行して旅客に快適な旅を提供するために、必要な様々な機械類が搭載されている[33]

客車は、動力装置を搭載していないため製造・保守の経費が安く、また車内に対する騒音・振動などの面で電車や気動車に比べて有利である。一方で、動力集中方式となるため加減速度や機動性の点では不利となる。このため長距離を走行し停車駅が少なく、車内環境を重視するような、長距離優等列車や特に夜行列車などにおいて用いられる[36]
機関車詳細は「機関車」を参照

機関車は、動力集中方式の客車や貨車を推進・牽引して走行するための動力車である。機関車自体には動力装置とそれを運転するための運転台のみがあるのが普通で、旅客や貨物を搭載するための設備は備えていない[37]。また動力装置以外に、客車に対する暖房用の蒸気発生装置を搭載していたり、客車の照明・空調用の電源装置を搭載していたりする[33]

機関車は、その動力方式でさらに蒸気機関車電気機関車、内燃機関車の3つに大別できる[37]。それ以外にも1970年代にはアメリカ(M-497)、ソビエト(高速走行実験鉄道車両(ウクライナ語版))のようなジェットエンジンによる推力を利用するターボジェット・トレインも試作されたことがあった。ガスタービンで鉄輪を駆動するガスタービン機関車とは違い、排気推力を使うため、車輪は直接駆動しない[38]
蒸気機関車詳細は「蒸気機関車」を参照国鉄C62形蒸気機関車

蒸気機関車は、蒸気機関を原動力として走行する機関車である。近代的な交通機関として鉄道が実用化された当初から用いられてきた機関車である。燃料を燃やし、その熱によって蒸気を発生させて、蒸気機関を駆動する。現実に存在したほとんどの蒸気機関車はレシプロ式で、ピストンの往復運動をクランクで車輪の回転運動に変換して走行していた[39]。このほかに蒸気タービン式や、発電してモーターで走行するものなどがあった[40]

一般には燃料として石炭を用いるが、外燃機関であるため燃えるものであればほとんど何でも燃料として使用でき、コークス木材重油泥炭などが用いられることもある。またサトウキビの生産が盛んな地方では、その絞りかすのバガスを燃料にしたり、変わったものとしてスイスにはかつて、架線から電気を集電し、その電力で電熱器により蒸気を作って走る電気式蒸気機関車が存在していた[41]原子炉で蒸気を発生させて走行する機関車も設計されたが、実用化された例はない[42]

無火機関車は、鉱山や火薬工場などの火気を嫌う場所で用いられる特殊な蒸気機関車で、外部に設置したボイラーからの蒸気の供給を受けて搭載している蒸気タンクに蓄積し、タンクに蒸気が残っている間だけ自走できるものである[41]

蒸気機関車は、製作費が安く線路側の設備もあまり必要としないという長所がある。しかし、操作や保守が難しく、熱効率が低く乗務員の労働環境が悪い、煤煙が環境汚染を引き起こすといった様々な短所があり、第二次世界大戦後各国で次第に他の機関車に置き換えられていった[43][44]。主に発展途上国を中心に運行を続けている蒸気機関車があるが、先進国においては保存鉄道で運行されている程度である[39][45]
電気機関車詳細は「電気機関車」を参照中国国鉄韶山9型電気機関車

電気機関車は、電気でモーターを回して走行する機関車である[46]


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