なお、車種以外に用途や設備により分類することができるが[10]、これについてはそれぞれ旅客車・機関車・貨車・事業用車を参照。
旅客車詳細は「旅客車」を参照
旅客車は、鉄道車両のうち主に乗客を乗せるための車両である[13]。動力を有している車両と有していない車両がある[13]。どちらの車両でも、接客のための設備はおおむね共通した構造を有している[13]。動力集中方式に分類される旅客車として客車が、動力分散方式に分類される旅客車として電車と気動車が存在する[13]。近年では、ハイブリッド車やEDC方式の登場により、電車と気動車双方に分類される車両も増えている。
郵便物を輸送する郵便車や、乗客の手荷物を輸送する鉄道手荷物輸送(チッキ)において荷物を搭載するための荷物車も、一般に旅客車として分類されている[13]。
電車詳細は「電車」を参照スイス国鉄RABDe500形電車
電車は、動力分散方式の旅客車のうち、電力によってモーターを回して走行する車両である[13]。モーターによって走行する動力車(電動車)と、自力では走行できずに電動車に牽引・推進されることで走行する付随車が存在する[13]。搭載している電池の電力によって走行する方式も電車であるが、架線や第三軌条など線路に設置された給電設備から電力の供給を受けて走行することが一般的である[14]。一方、搭載している熱機関によって発電してその電力でモーターを駆動する方式は、気動車に分類されていた[13]が、ハイブリッド車両などの登場により電車としても気動車としても分類されるようになっている[15]。
効率の良い発電所において電気エネルギーを発生させて、それを外部から受け取って走行することのできる電車は、走行エネルギーのもととなる燃料や重く効率の低い原動機を搭載しなければならないその他の方式の車両に比べて重量当たりの性能が高く効率が良い。一方で、線路に沿って電力を送るための変電所や架線・送電線を整備しなければならず、これに費用がかかる。こうしたことから、輸送量が多く列車本数が多い線において電気運転方式が有利となる[16]。また電車列車は動力のある車輪(動輪)の割合が高いため加速度を大きくでき、機関車のように特に重量の集中する車両がないことから線路への負担が軽く、折り返しや列車の分割・併合の利便性が高いなどの利点がある。一方で、各車両に動力があることから騒音や振動など乗り心地面で不利で、動力装置の数が増えることから費用的にも不利といった欠点がある[17]。
もともと電車は乗り心地の難点から長距離運転には向かないとされてきたが、技術革新の結果長距離列車においても用いられるようになってきている。都市交通では世界的に電車の普及が著しく、特に路面電車や地下鉄で用いられる車両はほとんどが電車である。一方、長距離輸送でも広く電車が普及しているのが日本の鉄道の特徴であるとされている[17][18]。また、モノレール、案内軌条式鉄道(新交通システム)、トロリーバス、索道(ロープウェイ)、鋼索鉄道(ケーブルカー)、磁気浮上式鉄道なども多くは電車の範疇に含まれる[19]。
日本では殆どの人口密集地で電車が普及している事から、気動車や客車を含めた鉄道車両のすべてを「電車」と呼ぶ風潮がある[20]。
気動車詳細は「気動車」を参照イギリス鉄道221形気動車
気動車とは、旅客車・貨車・事業用車に熱機関を搭載してその動力により走行する車両である[21]。外燃機関である蒸気機関を動力とする車両は蒸気動車と呼ばれ、それ以外の内燃機関で走行する気動車を区別する時は内燃動車と称する[22]。内燃動車において用いられる機関としてはディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、ガスタービンエンジンなどがある[23]。現代では一般的には、大出力を容易に得られ燃費のよいディーゼルエンジンが気動車の原動機として用いられている[24]。ディーゼルエンジンを用いた気動車のことをしばしばディーゼル動車あるいはディーゼルカーと呼ぶ[25][26][注釈 1]。
内燃機関を動力とする場合は通常、エンジンで直接車輪を駆動することはできず、何らかの方法で変速する必要がある。機械的な変速機を使う場合を機械式、トルクコンバータを使う場合を液体式、一旦発電して電力でモーターを駆動する場合を電気式という[27]。ただしガスタービン動車の場合、低速でも充分なトルクがあることから変速機を介しない場合がある[28]。電気式以外の方式では、機関を稼働したまま車両の停止や惰行に対応するためのクラッチも必要となる。
気動車においても動力車と付随車が存在する。高出力の機関を少数の車両に配置して残りの車両を付随車にする方式(「集中式」および「分散集中式」)と、低出力の機関をすべての車両に分散配置する方式(「完全分散式」)とがある。一般に、高出力機関を少数車両に配置する方式が、車両の重量や新製・保守費用などの点で優れている。しかし、短い編成で運転する場合や列車の分割・併合を行う場合の都合や、機関を搭載していない車両における冷暖房の問題などから、世界的に各車両に分散する方式が主流となっている[29]。
気動車は、電車と比較した場合、変速機やエンジンの機構が複雑で、製造費と維持費が嵩む。また、電車が動力の変換装置を持っているだけなのに対し、エンジンと変速機の重量に加え、潤滑油、冷却水、動力に変換するための燃料自体も搭載する必要から重量が大きくなり、重量あたりの性能で劣っている。一方で地上側に電力を供給する膨大な設備を設置する必要がないというメリットがあるため、地方の閑散路線などでの運行には、電車より気動車の方がコスト面で適している[30]。
客車詳細は「客車」を参照レンフェ (スペイン国鉄) タルゴ客車
客車という言葉は、広い意味では旅客車を表すこともあるが[31]、狭い意味では動力集中方式における旅客車を指す[32]。