電化は初期投資を要するが、輸送量の大きい路線では輸送単位当たりの維持費用は一般に低い。このため、一度電化が行われた路線の電化設備が撤去されることはまれであるが、電化当初に見込んでいた利用がなくなった路線など、気動車等の発展によって電化が必ずしも経済的に有利でないケースが生じることがある。
また、急勾配や長大トンネルでの蒸気機関車の煙対策のために電化していた路線の場合、強力なディーゼルエンジンと換気装置が登場することで代替されることがあり、アメリカのグレート・ノーザン鉄道(現・BNSF鉄道)が建設したカスケード山脈越えの路線(カスケードトンネル)は蒸気機関車時代に電化されていたが、このような理由からディーゼル化が行われている。
このほかには、アメリカ等のインターアーバンが貨物鉄道に転換された際、電車による頻発運転の旅客列車消滅により電化が不要になり、電化設備が撤去された事例も多い。
また、上記の理由以外で設備が撤去された例としては、運用される電気機関車を含めた従来からの直流電化設備全般の老朽化による設備更新を行わずに、高性能のディーゼル機関車へ置換えるといったものが挙げられる。例えば、ブラジルサンパウロ州には急勾配区間と近郊鉄道が運行される区間を除いたほぼ全電化区間の電気設備が撤去され、再び非電化となった路線が複数存在するほか、同様の例はチリのサンティアゴ - バルパライソの郊外間や、コンセプシオン郊外 - テムコ間等にも存在する。
緊急的な電化解除(意図的に行ったもの)では第一次世界大戦時のドイツで資源不足になり、電化鉄道の架線を撤去して銅を使用した結果、電気機関車が走れなくなったというケースもある[34]。 日本での事例としては、以下の路線で経費節減のために電車・電気機関車を気動車に置換えた事例がある。 下記の路線は電化施設を撤去または使用中止し、電車・電気機関車運行を中止した路線である。なお、こういった事例の路線の殆どは元々不採算路線だったため路線の大半が廃線となっている。★印は2023年4月現在で現存している路線。
日本での事例
電化施設を撤去・使用中止した路線
池田鉄道 - 1936年に気動車・ディーゼル機関車を新規に導入し内燃化。1938年6月6日廃止。
千歳線 - 1957年10月1日の定山渓鉄道旅客列車苗穂乗入廃止に伴い、苗穂 - 東札幌間直流電化設備を撤去。1973年9月9日に当該区間は新線切替で廃止。1980年10月1日に千歳線自体は交流20,000 Vで再電化。
小坂製錬小坂線 - 1962年10月1日から改軌と同時に内燃化。2009年4月1日廃止。
玉野市営電気鉄道 - 1964年12月24日に気動車を譲り受け内燃化。1972年4月1日廃止。
茨城交通茨城線 - 1965年4月25日、水浜線、上水戸 - 水戸駅前間営業廃止(6月11日)を控え、赤塚 - 大学前間電車運転を廃止。