鉄道の電化
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こうした大手の私鉄と異なり中小私鉄では戦前は電化ではなく内燃動車で効率を上げたところも多かったが、太平洋戦争の影響でガソリン等は配給制(闇市場でも高騰)になったため内燃動車に頼れなくなり、蒸気機関車が復帰を始めるも、戦争末期から石炭も品質が低下し数量確保さえ困難な時代[注釈 22]に成ったため、石炭産地の北海道九州以外の非電化私鉄は燃料の確保に支障をきたすようになった。

これに反し電気事業の進歩は著しく発電力は戦前以上に進んだため、中小私鉄でさえ多少の投資をしてでも電化した方が採算が合うと電化に踏み切ったところが多かった。
(特に昭和21年から26年(1946 - 1951年)は電化件数が多く、1946年1月の近江鉄道八日市線から、1951年12月の長岡鉄道(後の越後交通長岡線)の大半まで、(既存電化区間有無に関わらず)一部分の電化や軌道・貨物線も含めると24社[注釈 23]もあり、大半は十数km程度の電化だったが、大井川鉄道39.5 km、長岡鉄道31.6km(翌年残り2.0 kmも電化)と30 km以上も一度に電化している鉄道も存在している[注釈 24]。)
しかし、その後はドッジ・ラインによる金融引締めが始まり電化工事の資金繰りが困難になった事、さらに燃料事情が好転、石油類の安定供給並びに気動車の普及に伴い、非電化路線の電化事例は1954年(昭和29年)の三岐鉄道を最後に、約20社程度に留まった[注釈 25][注釈 26]

国鉄でも組織内部のみならず参画院方面からも鉄道電化が要望されることとなり、十河信二が国鉄総裁の時、3,000 kmの順次電化計画のため電化委員会が設けられ、蒸気運転の状態において電気と蒸気の経済比較の結果、直流1,500 Vでも十分電化運転が有利で、交流なら(地上設備を減らせるので)なお 有利となった[注釈 27]1950年代以降、多くの路線が電化されていき、東海道本線については1956年(昭和31年)11月19日、米原 - 京都間を最後に、支線を除く全線電化が完了した。これを記念し、1964年(昭和39年)に鉄道電化協会がこの日(11月19日)を「鉄道電化の日」に制定した(→日本の鉄道史1956年11月19日国鉄ダイヤ改正も参照)。

また、直流饋電は多くの地上設備が必要でありコスト高となるため、電化が遅れていた東北、北陸、九州、北海道の電化を今後進めることも見越して、1954(昭和29)年から仙山線で商用周波数による交流電化の試験が開始され、1957年には同じく交流電化試験を行った北陸本線と共に、仙台 - 作並間 (50 Hz) と、田村 - 敦賀間 (60 Hz) での営業運転が始まる[1]など実用化され、その後北海道・関東の太平洋側と東北・北陸(新潟周辺除外)・九州等に広がった[注釈 28]。戦後の電化は東海道本線を皮切りに、山陰地方を除く本州と九州で進められて行ったが、一方で北海道と四国の電化区間は短区間に留まった。特に四国では国鉄時代は国鉄分割民営化直前に本四備讃線開業に合わせて香川県内の一部区間で実施されたに過ぎない。分割民営化後も引き続き電化区間の延長が実施されているが、内燃動車の性能向上及びハイブリッド気動車や電気式気動車の発達で必ずしも電化の必要はなくなっているほか、蓄電池電車のバッテリー大容量化による航続距離伸展のため駅構内のみ電化されるケースも起きている。2018年現在、JRの在来線は北海道、東北、北陸、九州を中心に交流2万V(海峡線は交流2万5千V)饋電が行われているほかは直流1500V饋電、新幹線は全て交流2万5千Vである[1]
旅客線の電化

輸送量の多い都市圏では電化進捗率が高く、都府県単位では既に全旅客線が電化された地域もある。しかし、電化工事には変電所の増設や架線設備の設置をはじめ、歴史が古く建築限界が小さい区間ではトンネル改修を要する等多額の費用が掛かる。そのため国鉄では、大都市近郊や都市間路線でも非電化の路線が長らくそのままにされていた。特に並走する私鉄がある区間では近距離輸送でも積極的な競争を行わないため、比較すると旧態依然としていたほか、電化した路線でも特急列車以外は内燃動車を継続して用いる例が見られる等、消極的な経営が批判されることもあった。もっとも、民営化と前後して大都市近郊の路線電化も少し行われた。

一方、閑散路線でも急勾配路線は高速化のため電化することがあった。しかし財政難等から北海道・四国の主要幹線や宗谷本線[注釈 29]高山本線などでは国鉄時代に工事が中止された。その後気動車の性能が電車並に向上し、電化するよりも新製気動車を購入する方が低廉となったため、これらの路線では非電化のまま路線の高速化工事を実施し、出力を強化した気動車を投入して近代化を進めている[注釈 30]。また、沿線地方自治体が費用を負担した一部路線で、簡易方式による電化が行われた例もある[注釈 31]
旅客線が完全電化

奈良県 - 1984年関西本線和歌山線を最後に全線電化。2006年の急行「かすが」廃止で定期気動車列車も消滅。ただし、主に天理教の祭事が行われる時は、気動車による団体臨時列車が多数運行される。

大阪府 - 1989年片町線を最後に全線電化。但し1973年に関西本線大阪府内区間が電化されたことで、片町線長尾駅から京都府境までの区間を除いて全線電化されていた。なお、非電化区間へ直通する特急列車(「はまかぜ」・「スーパーはくと」・「ひだ」)や、間合い運用で気動車を使用する特急列車(びわこエクスプレスの一部)があるため、府内を走行する定期気動車列車は存在する。

神奈川県 - 1991年相模線を最後に全線電化。

東京都 - 1996年八高線を最後に全線電化。

沖縄県 - 唯一の鉄道(厳密には軌道法準拠路線)である沖縄都市モノレール線2003年の開通当初から電化。戦前に存在した沖縄県営鉄道等の非電化区間は戦争で破壊されたまま事実上廃止となっている。

旅客線がほぼ電化

和歌山県 - 紀勢本線JR東海区間のうち新宮駅から三重県との県境に当たる熊野川橋梁までの区間、及び紀州鉄道線を除いた残りの線・区間は電化。

静岡県 - JR旅客鉄道路線は全線電化。非電化路線は天竜浜名湖鉄道天竜浜名湖線大井川鐵道井川線(アプト区間のアプトいちしろ駅 - 長島ダム駅間を除く)のみ。このうち大井川鐵道井川線は2004年の名鉄三河線非電化区間廃止以降、中部地方で唯一残る非電化私鉄路線(第三セクター鉄道及びJR東海子会社の東海交通事業城北線を除く)となっている。

滋賀県 - JR旅客鉄道路線は全線電化。非電化路線は信楽高原鐵道信楽線のみ。一時期、全線電化の近江鉄道レールバスを使用したことがあったが、電車運転に戻された。

石川県 - JR旅客鉄道路線は全線電化。非電化路線はのと鉄道七尾線のみ。

愛知県 - 2015年3月1日武豊線電化以降、JR旅客鉄道路線は全線電化。非電化路線は東海交通事業城北線のみ、軌道路線を含めても名古屋ガイドウェイバスガイドウェイバス志段味線の2路線のみ[注釈 32]

福井県 - 非電化路線は越美北線のみ。

埼玉県 - 非電化路線は八高線高麗川駅以北の区間のみで、私鉄・その他JR線は電化。

群馬県 - 非電化路線は八高線倉賀野駅以南の区間、及びわたらせ渓谷鐵道わたらせ渓谷線のみで、その他私鉄・JR線は電化。

栃木県 - 非電化路線は烏山線わたらせ渓谷鐵道わたらせ渓谷線及び真岡鐵道真岡線のみ。


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