鉄道の電化
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同年[注釈 3]、アメリカのボルチモア・アンド・オハイオ鉄道で電気機関車[注釈 4]が3両作成され、ハワードストリートの1マイル以上ある急勾配トンネルに使用された[8]、なおこれが幹線の蒸気鉄道初の電化に成るが、電化区間はこのトンネルの部分のみでここを蒸気機関車ごと牽引した[9]

1897年:イタリアで蓄厚器・650V第三軌条・3000V15Hz三相交流という送電システムを比較し、3000V15Hz三相交流が安全性等から一番優れているとされた。後に1906年にシンプロントンネル(ブリーク?イゼル区間)でこの方式を採用[8]

1899年:スイスのブルグドルフ?トゥーン鉄道の山岳線で世界初の交流電化(三相750V)の営業が開始[10]

1905年:スイスのエーリコン社で単相交流が開発[11]

1911年:日本で碓氷峠が電化された。

1913年:スイスでベルン-レッチュベルク-シンプロン鉄道(BLS)が単相交流で1万5千ボルトの高圧による電化に成功[12](なお、周波数は16と2/3Hzと、一般的な商用周波数50Hzの1/3だった[13]。)。

1915年:アメリカのシカゴ・ミルウォーキー鉄道において直流3000V電化が開始され、1927年までこの方式で区間を広げ当時世界一長大な電化区間となる[14]

1922年:イタリアが直流3000Vを標準方式に置換、三相交流方式の新規電化を停止(三相交流既存区間は続けて使用しており二次大戦後も残存)[14]

1923年:ハンガリーブダペスト西駅 - ブダケスィ・アラグ駅間で16kV50Hzの商用周波数による単相交流を使う「相変換式交流電気機関車[注釈 5]」の試験運行が開始[15]

1932年:1923年からの実験後ハンガリーのブダペスト- コマロン駅間で16kV50Hzによる「営業運転」が開始[15][13]

1935年:ドイツ南部ヘレンタール線の一部でそれぞれ交流整流子電動機と水銀整流器+直流電動機を使った電気機関車を比較し、交流2万V50Hzの研究を開始、商用単相交流饋電方式の基盤構築。第二次世界大戦後、フランスがこれらの機関車と設備を接収して国内の交流電化を進める。交流電化ではBT饋電方式からAT饋電方式が主流になる[13]

各国の事例

電化は当初どこでも大都市の交通としての路面電車や地下鉄に採用されており、電気方式は600V直流を送電して軌道上に架線を設ける(路面電車)か軌道の片側に第3レールを設ける(地下鉄)のが一般的だった。このように輸送機関に対する電気の応用は良い成績を示したので次に汽車の電化[注釈 6]が問題となるに至った[16]

20世紀初頭になるとそれまで路面電車に使用されていた500-600Vよりはるかに高圧の交流電流が商用に供給されるようになったが、こうした交流送電における一般の電力の50?60Hzは(当時の)機関車の電動機に使いにくかったので、路面電車などで行われた「電流を変換し直流で使用する」か、3000V15Hzという「比較的電動機に使いやすい低周波数の三相交流を使う」案が生まれたものの、三相交流による交差点の架線複雑化や三相交流電動機が使いにくい[注釈 7]が懸念され、ここから交流送電は後にイタリアで見られる「それでも三相交流低周波数を使う[注釈 8]」かスイスで新しく見られた「はるかに高電圧(1万5千V)の単相交流を使う」という2案に分かれ、高電圧単相交流はその後ドイツやオーストリアにも普及した[8]。しかしこの単相交流は駆動用に適した交流整流子電動機には商用周波数では整流が困難であったため低周波数の交流を使う(低周波交流饋電方式)必要性があり、このためほかと融通の利かない鉄道独自の電源が必要になるという問題があった[13]

1910年(明治43年)頃までには(欧州)各国で汽車の電化計画が盛んになったが、煙害根絶目的のために電化したごく一部の地域(サンゴッタルドトンネル等)を除き「石炭の輸入若しくは移入を抑えるため水力等[注釈 9]でも得られる電力で鉄道を走らせる」という経済的な目的で始めたので、まず周到に採算性の計算を行ったところ、この時は大半の国で否定的な結論が出ており、後に電化大国になるスイス等でも1912年の調査報告で「いずれの線路でももっと運輸量が増加して施設の利用率が良くなるまでは、電化が利益になる路線はない」と結論を下している[注釈 10]。他ヨーロッパ諸国で電化されたのは元々石炭がルール地方から移入して高価だったバイエルン山間部(山の水力発電所近くなので電力は安い)やプロイセンデッソーからビッターフェルトの試験的な電化区間、スウェーデンの北部線(元々鉄鉱石輸送が盛んで、水力も利用でき、北極圏のため蒸気機関車が不利だった)等ごく僅かであった[17]

こうした「長距離鉄道の電化は経済的でない」とされた理由には、朝倉希一によると以下のような理由が挙げられている[18]

電力は備蓄できないので、多忙期と閑散期で輸送量が激しく変動する鉄道では電力消費量が大きく変わり、電力荷重として好ましくない。
さらに通常の電力として使われる三相交流は架線が2本必要なので複雑化するので、単相交流を使いたい[注釈 11]がこれでは特別の発電所が必要でほかと融通がない。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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