鉄筋コンクリート
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長崎県佐世保市宇久島に位置する宇久長崎鼻灯台は、1959年に海水練りのコンクリートを用いた鉄筋コンクリートにより建造され、50年以上も経過した段階でも現役の構造物として稼働している[5]
性質

鉄筋コンクリートは強度や耐久性のほか、遮音性能、水密性、流動性に優れた建材である。ただし、いくら鉄筋コンクリートが遮音性能に優れるとしても、実際の建物には窓や換気口などの開口部があるので、建築物全体としての総合性能は様々な要素を検討する必要がある。
遮音性能
遮音性能は物質の比重の大きさに比例し、単位当たりの重量が重いほど遮音効率が良い。
水密性
適正な品質管理を行ない密実に打設されたコンクリートは構造体として連続性をもち、セメントが化学反応により硬化する際に発生する
クラックと呼ぶひび割れが生じない限りは高い水密性が期待できる。
流動性
スランプと呼ぶコンクリートを打設する際の硬さや柔らかさの設定次第でいわゆるコンパネの通称で知られるコンポジットパネルにより組み立てられた型枠形状に流動性を以て追従し、平面形状や断面形状の自由度の高い形態を作り易い。
破壊メカニズム

鉄筋コンクリートには、曲げ引張破壊と曲げ圧縮破壊、せん断破壊、付着割裂破壊、疲労破壊などの破壊メカニズムがある。
曲げ引張破壊
コンクリート部材に曲げモーメントが作用したときに、引張り側の鉄筋が降伏に達して、部材が破壊するモード。
曲げ圧縮破壊
曲げ引張破壊と同じく、コンクリート部材に曲げモーメントが作用したときに、圧縮側のコンクリートが破壊に達して、部材が破壊するモード。鉄筋量が極端に多いときに発生する。
せん断破壊
コンクリート部材にせん断力が作用したときに、せん断耐力に達して破壊するモード。非常に脆性的な破壊であり、防がなければならない。
付着割裂破壊
鉄筋の引き抜きにより、鉄筋に沿ってクラックが入り、それが進展して部材の破壊に至るモード。異形鉄筋が引き抜きに耐えられなくなったときに発生する。
疲労破壊
部材の応力は破壊に達していなくとも、荷重を数百万回にもわたって受けることによって局所的にクラックが入り、それが進展して部材の破壊に至るモード。
コーン状破壊
コンクリート部材に打ち込んだアンカーに引き抜き力が作用したときに、せん断耐力に達して破壊するモード。

曲げ破壊を防止することを目的とした鉄筋を主鉄筋、せん断破壊を防止するための鉄筋をせん断補強鉄筋と呼ぶ。梁のせん断補強鉄筋を肋筋またはスターラップ、柱のせん断補強鉄筋を帯鉄筋またはフープと呼ぶこともある。主鉄筋は部材の長い方向に配され、せん断補強鉄筋はそれに垂直に固定される。梁の場合、通常、荷重は上からかかるので主鉄筋は上下端に配される。一方、柱の場合、地震などの方向の特定できない外力に耐える必要から四辺ともに配される。
歴史

コンクリートは古代ローマ時代から実用されており、ローマン・コンクリートが用いられた建造物としてパンテオン(西暦128年)などが知られている。しかしこれは無筋で使用されていた[1]

19世紀のフランスで、コンクリートに鉄筋を配して強度を高める技法が登場した。最初期のものとしては土木技師のフランソワ・コワニエ (Francois Coignet) によるサン=ドニの4階建て住宅(1853年)、ジョゼフ・ルイ・ランボー (Joseph-Louis Lambot) による小舟(1855年)などが知られている。1867年には庭師のジョゼフ・モニエが、園芸用の植木鉢の強度を上げるために金網とコンクリートの組み合わせを考案し、特許を取得した[1]。モニエの技術は橋梁などの強度を必要とする建造物に用いられるようになった。

20世紀に入るとオーギュスト・ペレが登場した。ペレは鉄筋コンクリートが自由に造形できる点や、高い強度があることで強度と意匠性を両立できる点に注目し、従来の石造りやレンガ造りではできなかった大開口や大空間の建物を建築した。「ランシーの教会堂」(1923年)などが知られているほか、オーギュスト・ペレによって再建された都市ル・アーヴルは後に世界遺産となった[1]

ペレに学んだル・コルビュジエの建築にも、鉄筋コンクリートの特性を活かしたスタイルを見出すことができる[1]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ これを「爆裂」と表現することもあるが、本来コンクリートにおける「爆裂」は火災の熱による剥離現象を指す。

出典^ a b c d e f 大日本印刷 アートスケープ ⇒鉄筋コンクリート 2016年7月6日閲覧。
^ a b 一般社団法人 日本セメント協会 ⇒コンクリートの種類/用途 2016年7月6日閲覧。
^ a b c d e f g h i 一般財団法人 建材試験センター コンクリートの基礎講座 ⇒6.コンクリート基礎編・コンクリートの中性化 (PDF) 2016年7月6日閲覧。


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