鈴木章
[Wikipedia|▼Menu]
この技術は、ARB(AngiotensinII Receptor Blocker, アンジオテンシンII 受容体拮抗薬)というタイプの高血圧剤や抗がん剤エイズ特効薬などの医薬品、殺菌剤などの農薬、またテレビ携帯電話パソコン画面の液晶の製造、有機ELディスプレイなど有機導電性材料の開発・製造に活用されるなど、有機合成化学材料科学などの広い分野に大きな影響を与えた[12]。クロスカップリングは、いろいろな物質を作って、そのはたらきを実験することに欠かせないため、新薬、新材料の開発を下支えする役割を担っている。

鈴木はこのカップリング技術の特許を取得していない。しかし、このことによってカップリング技術が普及し、この技術を応用した製品が多数実用化された[13]。鈴木・宮浦カップリング反応に関連する論文や特許は7,000を超えるといわれる[14]。これについて、鈴木は次のように語っている。特許を取るなんて、がめついヤツと言われた時代だった。それに、自分のお金でなく、国のお金で研究していたのだから。特許を取らずにオープンにしたおかげで、これだけ広く使ってもらえるようになったのだとも思う。 ? 鈴木章、『朝日新聞』2010年10月7日

また、次のようにも語っている。僕の怠慢。あのころは大学で特許を取ることなんてなかった。 ? 鈴木章、榊原智康「進化続く炭素結合 - 日本のお家芸支えた研究者」『東京新聞』2010年10月18日(月)【科学】19面
発言左側から鈴木章、根岸英一リチャード・ヘック(2010年)ノーベル賞受賞者達(2010年、スウェーデン王立科学アカデミーにて)内閣総理大臣(当時)の菅直人と(2010年、首相官邸にて)

「研究費のために信念を曲げない」「仕事を成功させるため、真剣に研究に対処し、結果を把握し、一生懸命続ける。そうしないと、幸運に恵まれない」が信条である[11]

ノーベル賞受賞後、各マスメディアからも注目を集めている。自宅玄関前に詰めかけた報道陣への第一声は「アンビリーバボーだね」であった[14]

2010年10月6日の北海道大学での記者会見では、「理科系をめざす日本の若者が減っているのがたいへんなげかわしい。資源が何もない国は、人と、その人の努力で得た知識しかない。これから何歳まで生きるかわからないが、若い人に役立つ仕事をしたい」と話した。

同日放送のテレビ朝日系の報道番組『報道ステーション』では、北海道大学からの中継で生出演したが、番組内で古舘伊知郎が間違ったベンゼン環の図を提示して「これであってますか?」と言ったところ、「両方間違ってます」と指摘し、その後に出てきた正しい図を提示して「あってます」との回答を得た。しかし、古舘が再び手際の悪さを見せ、鈴木はこれに対し「それ作れたらノーベル賞もらえますよ」と皮肉交じりに発言した。この件については、一連の古舘の対応を見て鈴木がイライラしていると理解され、インターネットの掲示板でも話題となった[15]

10月8日には、産経新聞の取材に対し、2009年11月以降行われた「事業仕分け」における内閣府特命担当大臣蓮舫(行政刷新担当)の、いわゆる「2位じゃダメなんですか発言」に対し、「科学や技術を全く知らない人の言葉だ」「研究は1番でないといけない。“2位ではどうか”などというのは愚問。このようなことを言う人は科学や技術を全く知らない人だ」として民主党政権による事業仕分けを厳しく批判した[16]

2010年12月8日のストックホルム大学での受賞記念講演では、みずからの研究成果について解説したのち、血圧降下剤などに用いられる「鈴木反応」は特許を取得していないことを述べ、「皆さん、安心して使って」と呼び掛けて会場を笑わせた[17]
エピソード

子どものころから大の
読書好きで、実家が理髪店だったため出入りする客の物音が気になると家の屋根に登って本を読み、また、国民学校でもトイレに本をもっていくほどであった。旧制中学への通学路でも歩きながら読み続けたため、つけられたあだ名二宮金次郎であった[18]

小学生時代の愛称は「あっこ」(名前が「あきら」なので)[18]

大学入学当初は数学を専攻したいと考えており、子ども時代の好きな教科も算数であった。いろいろな答えが考えられる国語などと違い、答えが1つではっきりしているところが好きだったという[14]

誠文堂新光社子供の科学』誌のインタビューには、友人と野球したり、魚釣りをしたりして遊んだ、ごく普通の子供だったと答えている。教科では、算数や理科が特に好きだったが、国語や歴史も好きだったとのことである[19]

当初数学を志していた鈴木が有機合成の道へ進んだ契機となったのが、2冊の本との出会いであったと語っている。一つは、北海道大学教養部の教科書として用いられた、米ハーバード大学ルイス・フィーザー教授、メアリー・フィーザー夫妻の著した『テキストブック・オブ・オーガニック・ケミストリー』というアジアの学生向けの英語による有機化学を説明した廉価本で、もう一つは、恩師となった米パデュー大学ブラウン教授の『ハイドロボレーション』という、英文で書かれたホウ素化合物の合成反応に関する本であった[14]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:53 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef