金融商品取引所は、公正な金融取引市場を維持し、投資家を保護するため、法に定めるところにより自主規制業務を行わなければならないとされている(法第84条)。
その自主規制業務は、
金融商品、金融指標又はオプションの上場又は上場廃止に関する業務
会員等の法令、法令に基づく行政官庁の処分若しくは定款その他の規則又は取引の信義則の遵守の状況調査
その他内閣府令で定めるもの
とされている。
この自主規制業務を担う組織形態につき、金融商品取引法は、金融商品取引所の採りうる方法につき選択肢を与えている。 内閣総理大臣の認可を受けて、自主規制業務を行うことを目的として設立される非営利法人である(法第102条の2以下)。会員金融商品取引所、株式会社金融商品取引所又は金融商品取引所持株会社が設立することが出来る(法第102条の3第1項)。 金融商品取引所のうち、特に株式会社金融商品取引所は、株式会社であるがゆえに株主価値を高める目的から利益の最大化が求められることとなる。一方、同一会社内で自主規制業務を並行して行うと、利益相反・自己矛盾の状況が発生しかねないと、従来から指摘があった。 具体例として、株式会社金融商品取引所でありかつ株券市場を運営する取引所(例:東京証券取引所)は、利益を得るために上場会社等から手数料等をより多く獲得するインセンティブがあることになる。 ところが一方では、上場会社が不正を起こしたため売買停止にする、上場廃止にするといった自主規制機能が働くことによって市場の信頼性確保・投資者保護が実現できるもののその結果、自らの手で手数料の獲得を減少させる状況が生じる。 そうすると、利益の追求ができないことで株式会社としての義務を果たせず、株式会社の義務を果たすために規制を恣意的に緩和し運用すると、市場の信頼性・投資者保護が実現できなくなるおそれがあるとされていた。 このような自主規制の機能不全リスクを極力排除し、自主規制機能の独立性を強化する意味から、別法人を設け自主規制機能を移管することで、利益相反・自己矛盾の状況を回避したとされている。 株式会社金融商品取引所の自主規制に関する事項を決定する機関である(法第105条の4第2項)。自主規制委員3名以上で構成され、その過半数を社外取締役としなければならないとされている(法第105条の5)。 ※なお、いずれの形態についても任意とされており、必ずしも自主規制法人を設立したり自主規制委員会を組織する必要はない。 以下は一覧ではなく例であることに注意[注釈 3]。また、以下分類で用いる「かつての(法律上の)証券取引所」「かつての(法律上の)金融先物取引所」については、あくまでも法律上の用語としての「証券取引所」「金融先物取引所」が消滅しただけであり、現在も(法律上の用語でない)証券取引所、または(法律上の用語でない)金融先物取引所のそれぞれの業態を維持すること、もしくは維持しないことのいずれも可能であることに注意。
自主規制法人
2019年9月現在現存する例として、日本取引所自主規制法人(株式会社日本取引所グループ(金融商品取引所持株会社)傘下の自主規制法人)がある。
背景
自主規制委員会
東京金融取引所は、自主規制委員会制度を採用している。
国内の金融商品取引所の例
かつての(法律上の)証券取引所
東京証券取引所【株式会社金融商品取引所】
大阪取引所(旧大阪証券取引所)【株式会社金融商品取引所】
名古屋証券取引所【株式会社金融商品取引所】
札幌証券取引所【会員金融商品取引所】
福岡証券取引所【会員金融商品取引所】
かつての(法律上の)金融先物取引所
東京金融取引所(旧東京金融先物取引所)【株式会社金融商品取引所】
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 市場デリバティブ取引には様々な種類が存在するが、特に金や原油などの、いわゆる商品’(商品先物取引法上の概念)に関する市場デリバティブ取引が、金融商品取引所へ上場可能とされるには一定の条件がクリアされる必要がある。すなわちそれぞれの、例えば金や原油といった商品種別ごとに、所定の条件を満たすとして政令で認められる必要がある(法2条8項1号、法2条24項3号の2)。また、そのような政令で認められた市場デリバティブ取引は「商品関連市場デリバティブ取引」(金融商品取引法上の用語)と呼ばれることになるが、金融商品取引所は「商品関連市場デリバティブ取引」のみを行う市場を開設することはできない。これは金融商品市場の定義として「商品関連市場デリバティブ取引」(後述)のみを行うものを除くとされている(法2条13項)ため。
^ 株式会社東京商品取引所の子会社でもあり、株式会社日本取引所グループから見ると間接保有の子会社である。孫会社とも言える
^ 金融商品取引所について、金融庁の作成した一覧は現時点で発見されていない。金融庁の免許・許可・登録等を受けている業者一覧
出典^ “株式会社日本取引所グループ|日本取引所グループ
関連項目
金融商品取引法
証券取引所
金融先物取引所
日本証券業協会
歴
証券取引所(金融商品取引所