金星
[Wikipedia|▼Menu]
2011年、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機「ビーナス・エクスプレス」が大気の上層からオゾン層を発見した[5]。2012年、ビーナス・エクスプレスの5年分のデータ解析した結果、上空125kmのところに、気温が-175℃の極低温の場所があることがわかった。この低温層は、2つの高温の層に挟まっており、夜の大気が優勢な部分が低温になっていると考えられている。この極低温から、二酸化炭素の氷が生じているとも考えられている[6]

2020年9月、カーディフ大学の研究者を中心とするイギリスアメリカ日本の研究者から成る研究チームがチリのアルマ望遠鏡とハワイジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡を用いて行った観測から、金星での環境下における地質学的条件や化学的条件のもとでは発生しないと考えられていたホスフィン(リン化水素)が金星の大気上層から検出されたという研究結果をネイチャーにて発表した。ホスフィンの生成要因として、研究チームは太陽光からの光化学反応火山作用によって供給された可能性も検討されたが、検出されたホスフィンの量はそれらの要因では説明できなかった。まだ人類が知りえない未知の化学プロセスによって生成されている可能性が高いとされているが、地球上ではホスフィンは一部の嫌気性生物から生成される事が知られているため、金星大気に生命が存在している痕跡である可能性も示されている[7][8][9]アメリカ航空宇宙局(NASA)の長官ジム・ブライデンスタイン(英語版)はこれまでの地球外生命探査において「最大」の発見であるという見解を示している[10][11]。ただしこのホスフィンの検出報告については、別の複数の研究者グループから疑義が呈されている[12]。同じ観測データを異なるグループが独立して再解析したところホスフィンの特徴は統計的に有意な水準では検出されず、先の報告は誤検出の可能性が高いとの指摘がなされている[13][14]
二酸化炭素による温室効果

金星の地表は太陽により近い水星の表面温度(平均442 K(169 ℃)[15])よりも高い[注 2]。金星の地表の気温が高いのは、大気の主成分である CO2による温室効果のためである。

金星の厚い雲は太陽光の80宇宙空間へと反射するため、金星大気への実質的なエネルギー供給は、太陽から遠い地球よりも少ない[3]。このエネルギー収支から予測される金星の有効温度は227K(-46℃) [16]と、実際の金星の地表温度に比べて約500K[3]も低温の氷点下となる[17]。それが実際にそうならないのは、膨大な量のCO2によって大気中で温室効果が生じるためで、高密度のCO2による温室効果が510K分の温度上昇をもたらしている[16]
スーパーローテーション

金星大気の上層部には4日で金星を一周するような強いが吹いている。この風は自転速度を超えて吹く風という意味でスーパーローテーションといわれる[18]。風速は100m/sに達し、243日で一周する自転速度の60倍以上である。このことが実際に確かめられるまでは、昼の面で暖められた大気が上昇して夜の面に向かい、そこで冷却して下降するという単純な循環の様式が予想されていた。この現象は多くの人々の興味を引くこととなりさまざまな理論が提示され、金星最大の謎のひとつとされていたが、2020年に日本の金星探査機「あかつき」の観測データの分析より、この加速機構を担うのが「熱潮汐波」であることが明らかになった[19]

南北の両極付近で巨大なが観測されている。北極の渦は1978年アメリカ航空宇宙局(NASA)の探査機「パイオニア・ヴィーナス」によって、南極の渦は2006年ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機「ビーナス・エクスプレス」によって発見された[20][21]。ビーナス・エクスプレスは南極の渦の観測を続け、2011年までにその詳細な構造を明らかにした[22]
地球大気との比較同縮尺の金星(左)と地球(右)

一見したところ、金星の大気物質と地球上の大気はまったくの別物である。しかし両者とも、かつてはほとんど同じような大気からなっていたとする以下の説があるため、地球の姉妹惑星とも言われてることから金星は地球の未来を知るための参考とされる。

太古の地球と金星はどちらも現在の金星に似た濃厚な二酸化炭素の大気を持っていた。

惑星の形成段階が終わりに近づき大気が冷却されると、地球ではが形成されたため、そこに二酸化炭素が溶け込んだ。二酸化炭素はさらに炭酸塩として岩石に組み込まれ、地球上の大気中から二酸化炭素が取り除かれた。

金星では海が形成されなかったか[23]、形成されたとしてもその後に蒸発し消滅した。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:124 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef