金属
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金属光沢は、自由電子がほとんどの可視光をはねかえす、実際は自由電子の集団が様々な波長の光を吸収し再放出するために、全体では反射し光沢を持っている様に見えることによる[11]。導電性には、電荷を持つ電子が自由に動き回りながら電極間に電荷を受け渡すことで寄与している[11]
バンド理論における金属金属、半導体絶縁体バンド構造の模式図

原子中の電子が取りうるエネルギーのレベルは、複数の原子が存在する状態下ではおのおのが重ならない電子軌道を取る。量子力学が要請するこの分裂によって生じる軌道は、金属においてアボガドロ数程度の原子が存在する状況ではエネルギーが低いところから順々に埋められ、最も高いエネルギー(フェルミエネルギー)を持つ電子が球状のフェルミ面を形成し、全体として定まった幅を持つ[12]。これは「バンド構造」と呼ばれる(バンド理論)。このバンドには物質によっては電子が軌道を取りえない断絶したエネルギー領域(バンドギャップ、禁制帯)があり、電子が取りうる最大のエネルギー領域がこのバンドギャップ部分にあると、電子軌道はギャップよりも低く原子核に束縛される[13] バンド領域(価電子帯、バレンスバンド)に詰まってしまい、電流は流れない。しかし金属にはこのバンドギャップが無いため、電子は自由に動くことができ、電流が流れる[14]

半導体は、このバンドギャップが1eV前後であるため、光や熱のエネルギーを加えることで電子の一部をバンドギャップよりもエネルギー位置が高いところにある伝導帯(コンダクションバンド)まで引き上げることができ、結果通電するようになる物質である[14]
性質
融点

自由度を規定するギブスの相律では、物質の状態は以下の式で示される。 F = C − P + 2 {\displaystyle F\,=C-P+2} ただし、

F {\displaystyle F} は、自由度(平衡状態中に取り得る外的因子の数)。

C {\displaystyle C} は、成分の数。

P {\displaystyle P} は、その体系中において存在する相の数。

金属の相律を考える際、わずかな圧力変化が及ぼす影響は無視してかまわないため、変数2が表す示強性のうち圧力を減らした次式を用いる。 F = C − P + 1 {\displaystyle F\,=C-P+1}

純金属の成分 C {\displaystyle C} は1となるため、上式を変形すると F = 2 − P {\displaystyle F\,=2-P}

となり、 P {\displaystyle P} = 2 すなわち固相液相が共存する状態での自由度 F {\displaystyle F} は0になる。これは、純金属が一定の融点を持つことを示す。一方、合金では C {\displaystyle C} は2、 F {\displaystyle F} は1となり、融け始める温度(固相線温度)と完全に融ける温度(液相線温度)が異なるため、固相線温度を融点と置いている。これらの変化は、溶融状態の金属を徐々に冷却しながら凝固させ得られる冷却曲線から分析する[15]

この、一定である純金属の融点(凝固点)は、温度の定点として利用されている。国際温度目盛1990年改訂 (ITS-90) ではスズアルミニウムなどの凝固点が採用されている[15]融点から沸点の間で液体状になった金属、または狭義では室温付近で液体状になる金属を液体金属という[16][17]
硬さ

金属は一般には硬いものとしてイメージされ、ひっかき硬さなどの意味に置いては実際に硬いものが多い。しかし、アルカリ金属アルカリ土類金属のように柔らかいものもある。また、塑性という観点に立てば、むしろ金属は柔らかく(延性があり)加工しやすいのが特徴といえる。工業的に大量に利用されている理由も、強度と加工しやすさのバランスの良さにある。辷り(すべり)

塑性には、金属原子がどのような構造配列を持っているかも影響を与える。金属の塑性変形は原子密度が高い辷り面(すべりめん)と呼ばれる結晶面に沿って、原子の間隔が広く抵抗が少ないところから間隔が狭い方向(辷り方向)に起こる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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