量子論
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したがって、二つの可観測量を別の順序で状態に作用させれば、異る終状態を得ることができる。二つの可観測量の観測順序を決めなければ終状態が変わってしまうので、不確定性関係と呼ばれる観察可能な要因の測定が重要なので、最終的な状態の異なるなかで、これまでのいわゆる 不確定性関係と呼ばれる関係が生じる。この関係は位置と運動量の間についてハイゼンベルクにより1927年に初めて記述された。これらの関係は、可観測量の交換にともなう測定値の統計的ゆらぎによって終状態の違いを定量的に記述することによって実証される。

1927年、ボーアとハイゼンベルクは、量子力学における正統的な解釈としても知られる、コペンハーゲン解釈をまとめた。彼らは系の状態を表す波動関数の絶対値の二乗(ドイツ語版)を確率密度として理解する、マックス・ボルンの提案を元にした。コペンハーゲン解釈は現在に至るまでほとんどの物理学者に支持されている量子力学の解釈であるが、その他にも多くの解釈が存在する。

1927年ごろ、ポール・ディラックは量子力学と特殊相対性理論とを統合した。彼はまた、ブラ-ケット記法を含めた作用素理論を初めて導入し、それを用いた数学的計算を1930年にモノグラフとして発表した[12]。同時期に、ジョン・フォン・ノイマンにより量子力学の厳密な数学的基礎が確立された。例えば、ヒルベルト空間上の線形作用素の理論は、1932年にモノグラフとして発表された[13]。量子物理学(Quantenphysik) という用語は、1929年のマックス・プランクによる講義「新しい物理学の世界観」に初めて見られる[14]。この時期までに確立された成果が現在に至るまで量子力学的問題に取り組むために用いられている。
量子場の理論

1927年から、粒子のみならずへも量子力学を適用しようという試みから、量子場の理論の発達が始まった。この分野における最初の業績は、ポール・ディラック、ヴォルフガング・パウリビクター・ヴァイスコップ、 パスクアル・ヨルダンらによるものである。波動、粒子、場を統一的に表現できるようにするため、これらを量子場という、可観測量と似たものとして考える。ただし、これらは必ずしも実数であるとは限らない。このことは、量子場が測定可能な量を表現するものではないことを示している。しかし、量子場の複雑な散乱過程の計算において、無限の結果が得られるという問題があった。 唯一計算できる簡単なプロセスですら、結果が測定値と大きく乖離することはしばしばであった。

1940年代終わりになって初めて、この無限大の問題は繰り込みにより解決された。これを受けて、量子電磁力学リチャード・P・ファインマンフリーマン・ダイソンジュリアン・シュウィンガー朝永振一郎らにより定式化された。量子電気力学は、電子は、陽電子電磁場を初めて統一的な手法で記述した。また、これによる予測値は、測定結果と非常に高い精度で一致することも確かめられた[15]。ここで発達した概念や手法は、この後さらに発展した場の量子論において手本とされることになった

1960年代初頭、量子色力学理論が開発された。今日知られる形式の理論は、1975年にデビッド・ポリツァーデイビッド・グロスフランク・ウィルチェックにより定式化された。ジュリアン・シーモア・シュウィンガーピーター・ヒッグスジェフリー・ゴールドストーンシェルドン・グラショーの先駆的な業績をもとに、スティーヴン・ワインバーグアブドゥス・サラムが互いに独立に弱い核力を量子電磁力学に統合し、電弱相互作用の理論を確立した。

現在に至っても場の量子論は活発な研究分野であり、数多くの新しい手法が開発されている。また、全ての基本相互作用の統一理論の確立にむけての基礎理論としても重要である。場の量子論の手法や概念を基に構築された理論の中でも代表的なものとして、超対称性弦理論は、ループ量子重力理論ツイスター理論が挙げられる。
研究の概歴

以下のリストは完全なものではない。

発見[注釈 1]発見者発見年備考
線スペクトル(ドイツ語版)、分光法ブンゼンキルヒホフ1860
光電効果ハルヴァクス(ドイツ語版)1886
リュードベリの公式(ドイツ語版)リュードベリ1888水素原子についての経験式。ボーアの原子模型により初めて理論的に裏付けることができた。
電界放出ウッド1897ずっと後に理解されることになる、トンネル効果の最初の観測例。
プランクの法則プランク1900量子仮説の最初の例。量子論「誕生」の時。
光子アインシュタイン1905光が量子化される。
超伝導カメルリング・オンネス1911
フランク=ヘルツの実験フランクヘルツ1911?1914原子における離散的なエネルギー準位の確認
ボーアの原子模型ボーア1913最初の量子的原子モデル。1916年にゾンマーフェルトにより拡張(ボーア=ゾンマーフェルトの量子化条件)されるが、それ以降は発展せず。
コンプトン効果コンプトン1922光子が運動量を持つ。
シュテルン・ゲルラッハの実験シュテルンゲルラッハ1922角運動量が量子化される。
物質波ド・ブロイ1924粒子と波動の二重性の基礎
行列力学ハイゼンベルク1925量子力学の最初の厳密な定式化
電子スピングートシュミットウーレンベックパウリ1925
波動力学シュレーディンガー1926数学的に行列力学と等価
水素原子におけるシュレーディンガー方程式の解シュレーディンガー1926水素原子中の電子のエネルギー準位と軌道
フェルミ・ディラック統計フェルミディラック1926フェルミオン気体の理論にして、固体物理学、特に半導体理論の基礎
不確定性原理ハイゼンベルク1927位置と運動量を共に精度良く求めることはできない。


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