野獣刑事
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工藤監督が音楽が好きでミュージシャンと肌が合い[6]、工藤監督のファンである泉谷しげるは出演を快諾し熱演した[4][7]いしだあゆみは工藤監督ならと引き受けたが[5]、直前の映画が『男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋』のマドンナ役で、神波の脚本を読んでハードな描写に怖気づき、酷い汚れ役でもあり、夫の萩原健一からも降りろと言われたと噂されたが[5]、萩原も同時期に東映の大作『誘拐報道』を撮影しており、迷いに迷った挙句に引き受けた[8]。いしだは実生活ではお酒は一滴も飲めず、奈良漬けの匂いでも気分が悪くなるというが、子持ちのピンクキャバレーホステスを演じた[8]。工藤はいしだは最初から脱ぐことになっていたと話しているが[4]、いしだはシナリオには脱ぐと書いてなかったと話しており[9]、現場で工藤に説得されて脱ぎ、初めてヌードを披露し代表作とした[4][9][10]試写では涙が止まらず、「温かい映画で出演してよかった」と話した[8]益岡徹は田中輝一役が出来る役者がいないので「俳優座の中に新人でいいのいないか」と頼み、益岡を紹介されて抜擢した[4]。子役の川上恭尚はオーディションで、のほほんとしてあまり役者をやる気がない子を選んだ[4]
撮影

大阪のドヤ街を中心とした脚本から、ドヤ街独特な体臭が常に画面いっぱいに漂ってなければならないと考えた工藤は、東京のセントラルアーツがオールロケで実績を上げつつあったこともあり[4]東映京都撮影所(以下、京撮)活性化も踏まえ、京撮でもオールロケで映画を作るようにしないといけない、とオールロケを東映に提案、ベースをほぼ大阪に置き、オールロケで撮影を敢行した[3][4][11]。また、カメラの仙元誠三を始め、セントラルアーツの仕事をしていた東京のスタッフを招いた[4][12]

撮影に入る前に工藤とスタッフは、イメージするロケ場所を探すため、3ヶ月の間ロケハンを行った[4]。絶好のロケ場所を見逃してはならないと車を使わず、国鉄私鉄地下鉄バスを乗り継ぎ、地図と磁石を頼りに大阪中を歩き回った[4]。大阪の主舞台となる恵子(いしだあゆみ)が住むボロアパートもその成果で、イメージ通りのアパートを探し当てた[3]。ここは大阪十三神崎川の縁に建っていた空家を借り切って撮影している[3]

「映像の刺客」とも称される工藤監督は全編オールロケという悪条件の中、随所に光と影の演出テクニックを披露している[3]。恵子のアパートの部屋は狭く照明器具が持ち込めず、外にイントレ()を組み、ミラーレフで外光を室内に送り込む手法がとられた[3]。またこのアパートで撮影中、偶然対岸の伊丹空港近くの町工場が火事を起こし、ドラム缶がボンボン爆発し、黒煙を上げて燃え始めた[13]。工藤は即座にシナリオを書き換え、燃え上がる工場をバックに恵子と阪上(泉谷しげる)の芝居を撮り上げた[3]。映画のために火事を演出したら、当時の撮影事情では膨大な経費が掛かったものと見られ、ハプニングでも取り入れる工藤流のダイナミックな映像作りが垣間見られる[3]。後半、シャブで頭がおかしくなった阪上が恵子の子・稔(川上恭尚)を連れて大阪中を逃げ回りながら、無差別に市民を射殺するシーンでは、入り組んだガード下に外からレフで光を取って撮影した[3]

同時期に相米慎二が別の仕事のロケハンで近くにいて深夜に来訪し、工藤の演出をずっと見ていたという[6]
「撮り足し」

降りしきる雨の夜、いしだを抱き立ち尽くす緒形の姿は、映画のキービジュアルとなり、ポスター(撮影朝倉俊博、デザイン小島武)等に使用された[14]。映画もここで終結するように見えるが、エンドマークが出ないのは、岡田茂東映社長から「おい工藤、東映の映画で、これで終わるってのはおかしいやないか。もっと見せろ!」とアクションを大幅に増強するようにと命令が下ったため[13]。このため渾身の演技で映画を一旦退場した泉谷が、復讐のため緒形の前に現れ、大バトルを繰り広げるという展開が発案され追加撮影が行われた[13]。こうした事情で第一部と第二部みたいな構成を持つ映画となった。仙元に対して「勘弁してな」と詫びる工藤が可哀そうで仙元は「監督のためならやりますよ」と毅然と答えた。

一方で、一連の復讐劇はシーン100?123としてシナリオ準備稿の段階から存在しており、執筆した神波自身「バランスの悪い構成」と2011年のイベントで述懐している[15]

また、カーチェイスについてもクランクイン(3月7日)より前の2月18日に和泉聖治監督『オン・ザ・ロード』の参考試写が行われており、その縁で「スリーチェイス」の福田伸、竹内雅敏が「野獣刑事」本編のスタントも担当することとなった[16]。大阪梅田ほか繁華街での暴走カーチェイスは、許可が降りるはずはないため、無許可によるゲリラ撮影

泉谷が立てこもるのは千里の新興住宅地[13]とも楠葉住宅地[16]とも言われている。
ロケ地

ほとんどのロケが大阪で行われたが、国鉄跡地は京都で、他に梅小路などの撮影が京都で行われた[4][3]あいりん地区が主舞台ではあるが[5][17]、盗み撮りであってもここにカメラを持ち込むことは難しく[2]、当地でのシーンはあまりない[2]

緒形扮する大滝と蟹江敬三扮するヤクザたちが乱闘する酒場は京都市右京区にあり、キャメラの仙元誠三の生家近くで、酒場の前が仙元の兄や親戚が勤め、仙元自身も就職予定だった三興線材工業(現・サンコール)で、撮影当日は「誠三がキャメラマンになって映画撮っとるらしいぞ」と仙元の親戚や近所の人たちがズラーッと並んだという[13]
封切り

『野獣刑事』は当初、仮タイトルで、変更されると予想されたが変更されず、正式タイトルになった[5]


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