アメリカ合衆国連邦政府が多重国籍を公式に支持しない理由は、アメリカ国民が国民に義務を要求する場合に、他方の国の法律と反するような状況に陥ったり、二重国籍者が他方の国で問題となった場合に、政府が自国民として保護することが制限されたりする場合があるためとしている[2]。さらには、新たにアメリカ合衆国市民となる移民は、アメリカ合衆国に対して忠誠を誓う宣誓を宣誓式で行うこと、以前に保持したすべての外国への忠誠の放棄、法律が定めた場合の兵役従事・内外の敵と戦う国防などの誓いが必要とされる(忠誠の誓い (アメリカ))[23]。
二重国籍者は中央情報局 (CIA) やアメリカ合衆国国務省で、国家機密を扱う職への応募資格を失うことがある[24]。1967年の連邦最高裁では、重国籍の権利が憲法修正第14条第1節(市民権条項)に基づいて認められているとする判例が出ている[7]。 民間資料によれば、オランダ、オーストリア、アンドラ、ノルウェー、グリーンランド(デンマーク領)、ベラルーシ、エストニア、モナコ、モルドバ、スロバキア、ウクライナ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、サンマリノ、アゼルバイジャン、ブルガリア、ジョージアなどでは一定条件下での多重国籍を認めており[25]、欧州連合加盟国では出生時に2つの市民権所持で成人以前・相手国の法律で自国籍離脱が不可能な場合は例外として容認されている。スペインではラテン系やスペイン語圏の国家[注釈 1]の二重国籍の場合にのみ認めている[26]。 ポーランドでは、他国の市民権を持つ者は非多重国籍者同様に防衛の義務[注釈 2]を負うことが求められている。いくつかの州では二重国籍を認識せずに他国の市民権を取得した場合、自動的に以前の市民権を失うことがある[27][28]。 フィンランドではウクライナを巡るロシアとEUの緊張関係を背景として、2017年にロシアとの二重国籍者にはフィンランド軍への入隊を認めないとともに、現職士官も軍事機密情報へアクセスできる立場から外す[29]ほか、外務省での採用を見送った[30]。さらには、ロシアとの二重国籍者について政府全体としても二重国籍者の重要公職への就任制限を検討中であると報じられた[29]。同年には、フィンランドの防諜機関は二重国籍保持者がロシアのスパイとして勧誘されていると警告した[31]。 きわめて特殊な例ではあるが、バチカンでは国籍に相当する「居住権」はバチカンで居住権を必要とする職務についている期間に限って必要に応じて与えられる特殊な地位であり、バチカンの居住権を持つ者は全員が従来の国籍を合わせて保持している二重国籍者である。 ロシアでは二重国籍は公職者以外は認められているが、国籍や保有する他国の市民権の秘匿が犯罪である。2014年2月以降、アメリカの市民権取得者のように厳密な忠誠宣言と、他国の市民権・国籍を取得した場合には2か月以内にロシア連邦移民局に届け出をしなければならず、違反した場合は500 - 1000ルーブル(約1500 - 3000円)の罰金が課され、意図的に隠した場合は20万ルーブル(約60万円)の罰金か400時間の労働刑がある[21]。 イスラエルでは多重国籍は認められており、兵役義務もある[32]。 バーレーン、オマーン、カタール、サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦、イエメンなどでは二重国籍は認められていない[25]。 アフリカ諸国のうち南アフリカ共和国、エジプト、エリトリアでは他国の国籍を取得する場合、自国の国籍を維持するためには許可を必要とする[33]。ボツワナ、コンゴ民主共和国、エチオピア、ジブチ、モザンビーク、ジンバブエ、エスワティニなどでは原則として認められていない[25] アルゼンチンは自国民の国籍離脱を認めていないため、他国の国籍を取得すると必然的に二重国籍となる[34]。ブラジルは憲法第12条第4項の規定により国籍離脱を認めているが、複雑な手続きを必要とするため、非常に難しい[35]。1991年以降、コロンビア、ドミニカ共和国、エクアドル、コスタリカ、ブラジル、メキシコの順に、国籍を有しながら外国に移住した国民の二重国籍を認める法改正を行っている[7]。ハイチでは二重国籍が2012年に合法化された[36][37]ほか、キューバ、スリナム、バハマ、ベネズエラなどでは二重国籍が禁止または制限されている[25][36][38][39]。 太平洋地域や日本、中国(香港・マカオを含む)、インド、インドネシア、タイ王国、ベトナム、マレーシアなどアジアの多くの国は、国籍選択年齢に達していない者以外の二重国籍を制限または禁止している[25]。パキスタンでは特定の国家[注釈 3]の二重国籍のみ認めている[40]。 イランや北朝鮮では他国の国籍を取得しても、自国の国籍を放棄することは困難・不可能となっている。オーストラリア、フィジー、ニュージーランド、フィリピン、サモア、バヌアツでは、二重国籍が認められている[25]。フィリピン、オーストラリア、フィジー[注釈 4][41]では二重国籍が認められているが、公職者になることは禁止している[42][3]。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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