重国籍
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日本の多重国籍者数については、1984年(昭和59年)の改正国籍法の施行前については未調査で、1985年(昭和60年)当時は年間約1万人程度、その後に増加して1992年(平成4年)には2万人程度、2002年(平成14年)では約3万3千人を超えている[19]。1985年(昭和60年)から2002年(平成14年)までの数の総計は約40万人であり、2008年(平成20年)の国籍法改正の時点の集計では約58万人である[5]
各国の実情

ヨーロッパでは1997年の国籍に関するヨーロッパ条約において、域内の国際結婚などで多重国籍となった場合は成人するまで容認するという規定が盛り込まれた。このため、オーストリアブルガリアなどのように二重国籍を認めない国では、出生時に2つの市民権を持つ場合、相手国の法律で自国籍離脱が不可能な場合は例外として容認されている[5]。また、多重国籍を認めている国でも、政府要職に就任する人物が多重国籍である場合は国家の権力行使において問題視されることがあるため、多重国籍者の政府要職者就任禁止が規定されていることがある。法の明文で禁止されていなくても、多重国籍を公表したうえで他国籍離脱の検討および国家に対する忠誠に問題ないか、厳しく問われる社会文化となっている国もある[20]

国籍(または市民権)に関しては、国ごとに基準を設け、国ごとに決定されている。1国を超える市民権を得る状況になった時、どちらかの国に法の規定がない場合は、二重国籍が発生し得る。認めている国でも、ロシアのように二重国籍の秘匿は避けるべきものと考えている国もある[21]
アメリカ合衆国の実情

アメリカ合衆国では、多重国籍者の存在を認めてはいるものの、積極的には容認していない。アメリカ合衆国国務省も、多重国籍は租税回避テロリズムへの対策のために推奨しないと公表している。出生時に自動的に他国の国籍を得た場合はアメリカ国籍に影響を与えないが、アメリカ人は米国籍を放棄する意志を持ってアメリカ以外の国籍を得た場合は、米国移民国籍法によってアメリカ国籍を失う可能性がある[2][22]

アメリカ合衆国連邦政府が多重国籍を公式に支持しない理由は、アメリカ国民が国民に義務を要求する場合に、他方の国の法律と反するような状況に陥ったり、二重国籍者が他方の国で問題となった場合に、政府が自国民として保護することが制限されたりする場合があるためとしている[2]。さらには、新たにアメリカ合衆国市民となる移民は、アメリカ合衆国に対して忠誠を誓う宣誓を宣誓式で行うこと、以前に保持したすべての外国への忠誠の放棄、法律が定めた場合の兵役従事・内外の敵と戦う国防などの誓いが必要とされる(忠誠の誓い (アメリカ))[23]

二重国籍者は中央情報局 (CIA) やアメリカ合衆国国務省で、国家機密を扱う職への応募資格を失うことがある[24]1967年連邦最高裁では、重国籍の権利が憲法修正第14条第1節(市民権条項)に基づいて認められているとする判例が出ている[7]
欧州の実情

民間資料によれば、オランダオーストリアアンドラノルウェーグリーンランドデンマーク領)、ベラルーシエストニアモナコモルドバスロバキアウクライナボスニア・ヘルツェゴビナサンマリノアゼルバイジャンブルガリアジョージアなどでは一定条件下での多重国籍を認めており[25]欧州連合加盟国では出生時に2つの市民権所持で成人以前・相手国の法律で自国籍離脱が不可能な場合は例外として容認されている。スペインではラテン系やスペイン語圏の国家[注釈 1]の二重国籍の場合にのみ認めている[26]

ポーランドでは、他国の市民権を持つ者は非多重国籍者同様に防衛の義務[注釈 2]を負うことが求められている。いくつかの州では二重国籍を認識せずに他国の市民権を取得した場合、自動的に以前の市民権を失うことがある[27][28]

フィンランドではウクライナを巡るロシアとEUの緊張関係を背景として、2017年にロシアとの二重国籍者にはフィンランド軍への入隊を認めないとともに、現職士官軍事機密情報へアクセスできる立場から外す[29]ほか、外務省での採用を見送った[30]。さらには、ロシアとの二重国籍者について政府全体としても二重国籍者の重要公職への就任制限を検討中であると報じられた[29]。同年には、フィンランドの防諜機関は二重国籍保持者がロシアのスパイとして勧誘されていると警告した[31]

きわめて特殊な例ではあるが、バチカンでは国籍に相当する「居住権」はバチカンで居住権を必要とする職務についている期間に限って必要に応じて与えられる特殊な地位であり、バチカンの居住権を持つ者は全員が従来の国籍を合わせて保持している二重国籍者である。
ロシアの実情

ロシアでは二重国籍は公職者以外は認められているが、国籍や保有する他国の市民権の秘匿が犯罪である。2014年2月以降、アメリカの市民権取得者のように厳密な忠誠宣言と、他国の市民権・国籍を取得した場合には2か月以内にロシア連邦移民局に届け出をしなければならず、違反した場合は500 - 1000ルーブル(約1500 - 3000円)の罰金が課され、意図的に隠した場合は20万ルーブル(約60万円)の罰金か400時間の労働刑がある[21]
中東の事情

イスラエルでは多重国籍は認められており、兵役義務もある[32]

バーレーンオマーンカタールサウジアラビアクウェートアラブ首長国連邦イエメンなどでは二重国籍は認められていない[25]
アフリカの実情

アフリカ諸国のうち南アフリカ共和国エジプトエリトリアでは他国の国籍を取得する場合、自国の国籍を維持するためには許可を必要とする[33]ボツワナコンゴ民主共和国エチオピアジブチモザンビークジンバブエエスワティニなどでは原則として認められていない[25]
南米・中米の実情

アルゼンチンは自国民の国籍離脱を認めていないため、他国の国籍を取得すると必然的に二重国籍となる[34]ブラジルは憲法第12条第4項の規定により国籍離脱を認めているが、複雑な手続きを必要とするため、非常に難しい[35]。1991年以降、コロンビアドミニカ共和国エクアドルコスタリカ、ブラジル、メキシコの順に、国籍を有しながら外国に移住した国民の二重国籍を認める法改正を行っている[7]ハイチでは二重国籍が2012年に合法化された[36][37]ほか、キューバスリナムバハマベネズエラなどでは二重国籍が禁止または制限されている[25][36][38][39]


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