酸化鉄(III)
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臨界温度950 K以上では反磁性を示す[2]。そして熱分解や溶液からの沈殿により容易に製造することができる。
β相

面心立方構造の準安定状態の物質で、500度以上の温度域でα相に変化する。ヘマタイトを炭素で還元したり、塩化鉄(III) 溶液や硫化鉄(III)熱分解して得ることができる。
γ相

立方構造の準安定状態の物質で、高温域でα相に変化する。自然界では磁赤鉄鉱として産出する。フェリ磁性を示し、10ナノメートル以下の超微粒子状態では超常磁性を示す。γ-オキシ水酸化鉄の熱脱水素化や、酸化鉄(II,III) を慎重に酸化することにより得ることができる。高純度粒子を得るにはシュウ酸鉄(III) の熱分解で製造する。
ε相

斜方晶構造でγ相からα相への変態の途中でみることができる。それ故単一相の物質として製造することはできず、常にα相とγ相との混在状態で存在する。ε相の比率が高い素材はγ相の熱分解で調製する。ε相は準安定状態で500 - 750度の温度域でα相へ変態する。電気放電で生じた鉄の酸化物や硝酸鉄(III) から沈殿したゲルの中にも見られる。
その他の相

高圧状態ではアモルファスが知られている ⇒[2]
用途
磁気記録

酸化鉄(III) は磁気記録に利用され、例としてはフロッピーディスクの磁性面に利用されている。それは双軸性PETフィルム (w:en:PET film (biaxially oriented)) に酸化鉄(III) が塗布され、微粒子がデータの二進数表現にしたがって帯磁することで記録される。磁気インク文字認識 (MICR) は酸化鉄(III) 化合物をインク中にけん濁させ、特殊な機器により読み取ることができるようにしている。

文章写真など)社会での情報記録の大半は酸化鉄(III) の薄膜に磁気パターンとして記録されている。それは光ディスク媒体のあるいはマイクロフィルムなど、他の代替物のビット当たりコストに比べ鉄を基材とした磁気メディアのビット当たりコストがはるかに低い為である。
研磨剤

酸化鉄(III) の非常に細かい粒子はjeweller's rouge、 red rougeあるいは単にrougeと呼ばれ、金属装飾品ガラスレンズに利用されている。歴史的にはrougeは化粧品としても利用された。

Rougeは酸化セリウム(IV) など次第に現代的な研磨剤に置き換えられつつあるが、光学機器や装飾品の上質な輝きを求める細工師などはいまだに利用している。金を磨く際にRougeはわずかに染色することで部品の輝き具合に影響を与える。Rougeは粉末状の固体で、糊状にして研磨布と組み合わせたり、(グリースと混合して)棒状にして利用する。酸化第二鉄以外の研磨剤もRougeと呼ばれることもあるが、そのばあいは酸化鉄は含まれていない。装飾細工師は装飾品からrougeを取り除くのに超音波洗浄機を利用する。
化学

酸化鉄(III) は溶鉱炉で金属鉄を製造するのに利用されている。また、酸化鉄(III) はテルミット法と呼ばれる激しい発熱反応にも利用される[3]。 2 Al + Fe 2 O 3 ⟶ 2 Fe + Al 2 O 3 {\displaystyle {\ce {2 {Al}+ Fe2O3 -> {2Fe}+ Al2O3}}}
色素酸化鉄で赤く着色したこんにゃく

酸化鉄(III) は色素としても利用され、Pigment Brown 6、 Pigment Brown 7そしてPigment Red 101などと呼ばれている[4]。いくつかの色素、たとえば Pigment Red 101やPigment Brown 6はアメリカ食品医薬局は化粧品に利用することを許可している。滋賀県近江八幡市付近では、酸化鉄で赤く着色した赤こんにゃくが伝統的に生産、消費されている。

陶芸の釉薬とされる。焼きにより分解して Fe3O4 の黒色を生じる。
医療

酸化鉄(III) のナノ粒子は医療機材として応用され、核磁気共鳴画像法のコントラスト造影剤としても利用されている。そしてこれを癌組織を標識させると磁気制御による薬剤輸送にも、局所的な温熱療法にも利用される[5]。あるいは磁性流体の製造にも利用される[6]
脚注[脚注の使い方]^経済産業省生産動態統計・生産・出荷・在庫統計平成20年年計による
^ J.E Greedon, (1994), Magnetic oxides in Encyclopedia of Inorganic chemistry Ed. R. Bruce King, John Wiley & Sons ISBN 0471936200
^ Adlam & Price, Higher School Certificate Inorganic Chemistry, Leslie Slater Price, 1945.
^ Paint and Surface Coatings: Theory and Practice William Andrew Inc. ISBN 1884207731
^ 酸化鉄(III) のナノ粒子で標識された組織は交流電界で粒子が加熱される。
^[1]

関連項目

酸化鉄

参考文献

N. N. Greenwood; A. Earnshaw (1984). Chemistry of the Elements. Pergamon Press 

外部リンク

NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards










鉄の化合物
二元化合物

FeBr2

FeBr3

Fe3C

FeCl2

FeCl3

FeF2

FeF3

FeH2

FeH3

FeI2

FeI3

FeN

Fe3N

Fe3N2

Fe(N3)2

FeO

Fe2O3

Fe3O4

FeS

FeS2

Fe2S3

Fe3S4

FeSe

Fe2Se3

FeSi2

三元化合物

Fe(C5H5)2

Fe(ClO3)3

Fe(ClO4)2

Fe(ClO4)3

Fe(CN)2

Fe(CN)3

FeCO3

Fe(CO)5

FeC2O4

Fe2(CO3)3

Fe2(CO)9

Fe2(C2O4)3

Fe3(CO)12

Fe2(CrO4)3

Fe2(Cr2O7)3

Fe5(IO6)2

FeMoO4

Fe(NO3)2

Fe(NO3)3

Fe(OH)2

Fe(OH)3

FeO(OH)

FePO4

Fe3(PO4)2

FeSeO4

FeSO3

FeSO4

Fe2(SO4)3

H2FeO4

BaFeO4

K2FeO4

Fe(IO3)2

Fe(IO3)3


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