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健康への影響デビッド・ナット薬物に関する独立科学評議会(ISCD)による2010年に『ランセット』に掲載された薬物の相対的な有害性に関する論文は、社会的な有害性も評価し暴力や事故を引き起こす傾向の強いアルコールを最も有害とした[7]
人体への作用「人体へのエタノールの作用」も参照

摂取した酒に含まれるアルコール(エタノール)は、主に小腸粘膜で吸収される。吸収されたアルコールは迅速に酸化されアセトアルデヒドとなる。酒に含まれるエチルアルコールは向精神性物質であり、人間の不安感や抑うつ感を抑える効果がある。しかし、一度に大量のアルコールを摂取すると代謝が間に合わず、血中アルコール濃度が上昇を始める。血中のアルコールは中枢神経系を麻痺させ、酩酊や急性アルコール中毒を引き起こす。嘔吐することもある。

アルコールの作用が強くなると、一時的に記憶がなくなることもある。このような作用を持つ薬物としては睡眠薬と同じであり、共にGABA受容体に作用するため、アルコールと睡眠薬の併用では呼吸を抑制して死亡するリスクは高まる。

判断力を低下させる。アメリカでは、アルコールによる死因の14%(毎年約1万4千人)を運転事故、8%を他殺、7%を自殺、5.6%を転落死で占め[9]、暴力や事故に起因する死亡につながる。

週7回以上の飲酒は不妊治療を受けている女性の妊娠確率を低下させるという研究がある[23]

また、祝日などで大量の飲酒を行うとホリデーハート症候群(英語版)と呼ばれるアルコール性心筋症などを引き起こす。
飲酒習慣と健康「急性アルコール中毒」および「向精神薬#死亡者数」も参照

世界の疾病負荷(WHO、2019年)[24]順位疾病DALYs
(万)DALYs
(%)DALYs
(10万人当たり)
1新生児疾患20,182.18.02,618
2虚血性心疾患18,084.77.12,346
3脳卒中13,942.95.51,809
4下気道感染症10,565.24.21,371
5下痢性疾患7,931.13.11,029
6交通事故7,911.63.11,026
7COPD7,398.12.9960
8糖尿病7,041.12.8913
9結核6,602.42.6857
10先天異常5,179.72.0672
11背中と首の痛み4,653.21.8604
12うつ病性障害4,635.91.8601
13肝硬変4,279.81.7555
14気管、気管支、肺がん4,137.81.6537
15腎臓病4,057.11.6526
16HIV / AIDS4,014.71.6521
17その他の難聴3,947.71.6512
18墜死3,821.61.5496
19マラリア3,339.81.3433
20裸眼の屈折異常3,198.11.3415

アルコールは毎年250万人の死亡につながっており、世界死因の4%を占める[8]ロシアでは男性の37%が55歳以前に死亡しており、主な原因は強いアルコール飲料、特にウォッカが原因と考えられる[25]。イギリスでは、このような早期死亡の比率は7%である[25]

2012年の研究は44件の研究から、男性5杯以上、女性4杯以上の過剰な飲酒がひと月に1度でもあると、これまで言われていた少量の飲酒での健康効果を損なうとした[26]。しかし、ハーバード大学医学大学院によると適度なアルコール摂取は、健康な高密度リポタンパク質(HDLコレステロールのレベルを上昇させる。アルコールはまた、インスリンに対する細胞の抵抗性を低下させ、血糖値をより効果的に低下させることができる[27]

従来、1日にビール1缶程度の飲酒であれば死亡率が低下するとされてきたが、禁酒の理由には死亡率に影響するような病気になっているということがあるため、2016年には疾患の有無を区別し87件の研究から解析したところ、そうした飲酒と飲酒しない人の間には、総死亡率には違いがなかった[28]。月に一度の大量飲酒(男5杯・女4杯以上)によって、リスクが上回る[28]

また2016年の別の研究は、195か国の592研究のデータを分析し、飲酒しないことが最も健康を保つとした[26]
アルコール依存症詳細は「アルコール依存症」、「精神依存」、および「身体依存」を参照

アルコール依存症とは、長期にわたり多量の飲酒した事から、アルコールに対し精神的依存や身体依存をきたす、精神疾患である。アルコールを繰り返し摂取し、アルコールに対する依存を形成し、精神的に身体的に続的に障害されている状態をいう。長期間多量に飲酒を続ければ、誰でもアルコール依存症になる可能性があり、世界保健機関(WHO)の策定した『国際疾病分類』第10版には"精神および行動の障害"の項に分類されており、個人の性格や意志の問題ではなく、精神障害と考えられている。

アルコール依存症の症状には精神依存と身体依存とがある。精神依存としては、飲酒への強烈な欲求をもつようになり、飲酒のコントロールがきかず節酒ができない状態となる。また精神的身体的問題が悪化しているにもかかわらず断酒できない、などが挙げられる。身体依存としては、アルコールが体から切れてくる事で、指のふるえが起きたり、発汗症状などの禁断症状が現れたり、以前と比べて酔うために必要な酒量が増大する、などが挙げられる。アルコール依存症になると他の娯楽や生活をおざなりに、飲酒をすることをすべてに優先的な行動となってしまう傾向にある。

飲用量が多い場合、急な飲酒は振戦せん妄を起こして致命的となりうる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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