以下のすべての要件を満たしている者は、都道府県知事の被選挙権を有する(第19条
第2項)。都道府県知事の被選挙権については、地方議会の議員のそれとは異なり、当該都道府県に住所を有していることは要件とはされない。これは、当該普通地方公共団体の住民以外からも広く有為な人材を求めるためである。(なお、市区町村長も同様に当該市区町村に住所を有していることを要件とはされていない)ただ、実際には、ほとんどの知事、または立候補者は、その都道府県に住所を移している。これは、いわゆる「よその自治体の人」が、その都道府県政に責任が持てるのか疑問だ、などと主張する住民も一部にいるためと思われる。あと、年齢についても引き下げるべきとの意見もある(例えば、25歳とか、20歳などに)。 任期は4年(第140条
任期について
なお、住民の直接請求の制度として解職請求(リコール)の制度があり、4年の期間満了前に都道府県知事の地位を失うことがある。 都道府県知事は、衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができない。また、地方公共団体の議会の議員並びに常勤の職員及び短時間勤務職員と兼ねることができない(第141条
兼職禁止について
よって、知事が国会議員選挙に出馬する場合や、逆に、国会議員が知事選挙に出馬する場合は、まず、辞職をしてから立候補する必要がある。辞職せずに立候補したときは立候補の届け出をもって辞職したとみなされる。
なお知事が国務大臣と兼任することについては明確に禁ずる規定は存しないが[2]、内閣は「兼任を禁止する明文の規定はない。しかしながら、内閣の一員として国政を担う国務大臣には全力を尽くして職務に専念することが求められており、都道府県を統轄しこれを代表する知事も同様である。こうした職責の重大さにかんがみ、現に都道府県知事である者を国務大臣に任命することは考えられない」と答弁している[3]。なお、後述の増田寛也・片山善博は知事退任後に総務大臣に就任しているほか、岸田内閣では、かつて長崎県知事を務めていた金子原二郎が、農林水産大臣として入閣している。 都道府県知事は、 又は たることができない(第142条
兼業禁止について
当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人
主として同一の行為をする法人の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人
ただし、法人について、当該普通地方公共団体が資本金の2分の1以上を出資するものを除く。
これは、地方公共団体と請負関係にある法人の中には、地方公共団体が主体となって設立し、本来当該地方公共団体が主体となって行う事業を当該地方公共団体にかわって運営しているものがあるという実態にかんがみて認められているものである。
このような場合においては、知事を代表者などとして置くことにより、当該法人の対外的な信用を高めることができる・当該法人に地方公共団体の意向をより反映させることができると考えられている。 地方自治法は首長制(大統領制)を採用しており、知事と都道府県議会との関係についても大統領制下における大統領の権限に類似しているが、議会による知事の不信任決議(178条)、知事による議会の解散権(同条1項)や議案提案権(149条1号)等、一部議院内閣制的な要素もみられる[4]。 特徴的な権限は以下のとおりである。
権限の強さについて
議会を解散する権限について
議会が知事の不信任の議決をした場合および不信任の議決をしたと見なせる場合にはその通知を受けて10日以内に議会を解散する権限を有する[注 2]。
条例案に対する拒否権について
議会が議決した条例や予算について再議に付す権限を有する。ただし、議会が3分の2以上の多数で再可決をすればその議決が確定する。
予算の調製と執行について
予算を調製して議会に提出する権限を有する。議会には予算の増額修正権(もちろん減額修正も)が認められているが、長の予算案提出権限を侵すような修正はできない。過去にはこの権限をフル活用して、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}国のダム建設[要出典]や大規模博覧会の中止など大胆な行動に出た知事もいる。
人事権について
行政委員会職員などを除く知事部局職員の人事権を自由に行使する権限を有する。一部の行政委員会については委員の任命権を持ち、政治的影響力の行使が可能。
地方税の賦課について
議会の議決と総務大臣の同意を取り付ければ新たな租税(地方税)を創設することができる。例えば、石原慎太郎東京都知事が作り出したホテル税
専決処分権限について
議会を招集する時間的余裕がないと認められる場合など、独自の判断で条例を制定することができる。ただし次の議会で承認を求めなければならない場合もある。
予算の調製・執行
議案の提案
地方税の賦課徴収、分担金・使用料・加入金、または手数料の徴収、過料を科すること
決算を普通地方公共団体の議会の認定に付すること
会計の監督
財産の取得・管理・処分
公の施設の設置・管理・廃止(第149条)
規則制定権(第15条第1項)
補助機関たる職員の指揮監督権(第154条)
当該普通地方公共団体の区域内の公共的団体等についての指揮監督権(第157条)
支庁・地方事務所、保健所・警察署その他の行政機関及びその他必要な内部組織に係る設置権限
組織に関する総合調整権
なお、普通地方公共団体の事務を執行することは、一般に長の権限に属するものとされる(第149条第9号)ことから、明文により他の執行機関の権限に属するとされる事務以外は長の権限であると推定される。
機関委任事務について詳細は「機関委任事務」を参照
従来は知事が国の行政機関として主務大臣の指揮監督を受けながら国の事務を執行する機関委任事務という制度があったが、2000年(平成12年)4月1日施行の地方分権一括法により廃止され、その大半は自治事務及び法定受託事務となった。
知事賞「内閣総理大臣賞」および「文部科学大臣賞」も参照
各都道府県において顕著な功績を挙げた者に対して各都道府県知事の名で授与される賞。主に全国規模で開催される文化的なコンクールの成績上位者または各都道府県規模で開催される文化的なコンクールの成績最優秀者に対して知事賞が贈られることが多い。また、特定の高等学校の卒業式において、在学中に学業または部活動で顕著な功績を挙げた者に対して知事賞が贈られることもある。 現在の知事の傾向としては過半数が中央官僚や県庁職員出身である(最終履歴が財団法人や社団法人関連の幹部であっても、それ以前は中央官僚であったという例は多い)。次いで多いのは国会議員、県議会(市議会)議員、市町村長、民間(会社員からタレントまで)の順である。 中央官庁出身者が多いことには「中央官庁や地元選出の政治家との太いパイプ」を強調し大きい公共事業を呼び込むことが期待できるため、地元財界や建設業者は歓迎する一方で、一部メディアなどからは、「政・官・業の癒着になりやすい」、「中央官庁にコントロールされやすく真の地方自治からはほど遠い」という批判がある。ただし、中央官庁出身者とはいえ、全員が全員このようなタイプというわけではなく、岩手県の増田寛也(建設省)や鳥取県の片山善博(自治省)のように改革派として実績を挙げ、後に民間人閣僚として総務大臣に就任する知事もいる。 近年は芸能人などが「タレント政治家」として多数知事選挙に参加しており、都道府県知事になるケースも多い。1995年(平成7年)に東京都で青島幸男、大阪府で横山ノックが相次いで当選したことにより一種の「タレント知事」ブームが起きた。その後、国政経験のない田中康夫(長野県)、東国原英夫(宮崎県)、橋下徹(大阪府)、黒岩祐治(神奈川県)、三反園訓(鹿児島県)などが当選してタレントや文化人などの有名人が知事になることは今やすっかり定着したといえる。東京都では青島から石原慎太郎を経て猪瀬直樹まで、3代続けて作家出身の知事が誕生している。 前述の青島知事、横山知事が政党の公認や支持を得ない、いわゆる「無党派」知事であったことや、55年体制の崩壊などによる政界再編で国政政党と地方会派の結びつきが弱くなっている現状から、近年、国政政党の公認を受けるケースはまれである。ただし、政党の党員であっても選挙では無所属として当選した人物は少なくない。2023年奈良県知事選挙で日本維新の会公認の山下真が当選したが、それ以前は2007年(平成19年)、群馬県の大沢正明(自民党公認)まで遡る(なお、大沢は2011年(平成23年)の再選時に無所属に転じた)。地域政党など「その他の政治団体」による公認としては、大阪府の吉村洋文(大阪維新の会公認)が挙げられる[注 3]。しかし、選挙の際には政党が公認ではなく「推薦」または「支持」という形で支援するケースは多く存在する。それでも無党派層を取り込むため、政党の推薦・支持があっても政党色を薄めて選挙を戦うことが比較的多い。 他方で、2010年頃から知事や政令指定都市市長が地域政党を立ち上げて、彼らの政策を支持する都道府県議を取り込んだり議員選挙に新たに候補を擁立したりする例が出ている(代表例:大阪府知事の橋下徹と府議会議員らが立ち上げた大阪維新の会、名古屋市長の河村たかしが立ち上げた減税日本)。そのような潮流の中、2011年の大阪府知事選挙では大阪維新の会公認の松井一郎が国政政党の支援する候補を破り、それ以降の2015年と2019年の選挙も同党の公認候補が当選を重ねることとなり、地域政党の勢いに国政政党が翻弄されている状況も存在する。 現職の知事47人中46人が大学もしくはそれ以上の教育機関に入学しており(文部科学省所轄ではない防衛大学校および日本国外の大学を含む)、その中でも東京大学出身者が最も多数を占める(特に西日本の知事に東大出身者が多い)。学部別では、法学部出身者が最も多い。沖縄県の玉城デニーは、現職で唯一最終学歴が専門学校卒である。 戦前の官選時代には複数の府県で知事を歴任する例も見られ、また官選知事の経験者が戦後になって別の府県の知事選に出て当選した事例があったが、戦後の公選制のもとでは、都道府県知事の経験者が他の都道府県で知事選に立候補した事例はあるものの、当選した事例は2023年時点で1例もない[注 4]。 また戦後の公選知事で知事を一旦離れて別の人が就任していたがその後の知事選で当選して再任となった例としては北野重雄(群馬県)と川村和嘉治(高知県)の2例がある。 8選 31年間 ※現職知事は含まない。 5人 10人
就任者の傾向について
中央官庁出身者
タレント・文化人
国政政党の公認との関わりについて
地域政党
学歴
知事の歴任
記録
最多当選知事
中西陽一石川県知事
奥田良三奈良県知事
最長在任知事
中西陽一石川県知事
現職では福田富一栃木県知事(2004年12月9日-、2023年8月1日現在)
最短在任知事
加納久朗千葉県知事(111日間、逝去によるものとして)
館哲二富山県知事(211日間、辞任(公職追放)によるものとして)
大田正徳島県知事(338日間、不信任案可決・失職に伴う出直し選挙における落選によるものとして)
猪瀬直樹東京都知事(372日間、辞任(公職追放以外)によるものとして)
最年長在任公選知事
88歳:武藤嘉門岐阜県知事
現職では古田肇岐阜県知事(1947年9月13日生まれ)
最年少就任公選知事
35歳5か月:田中敏文北海道知事(官選を含めると、1844年8月20日生まれ、就任時、1869年7月28日に24歳で第4代兵庫県知事に就任した陸奥宗光)
現職では大石賢吾長崎県知事(1982年7月8日生まれ、2022年3月2日の就任時は39歳)
最少公選知事人数
石川県、茨城県
最多公選知事人数
新潟県、宮城県
親族関係にある知事
父・天野久山梨県知事、子・天野建山梨県知事(父子2代・24年間の空白期間あり)
祖父・大原博夫広島県知事、孫・藤田雄山広島県知事(大原の娘が藤田の母・31年間の空白期間あり)
祖父・高辻武邦富山県知事、孫・高橋はるみ北海道知事、新田八朗富山県知事(高辻の娘が高橋と新田の母・高橋とは47年間、新田とは64年間の空白期間あり)
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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