都市ガス
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供給ガスの発熱量はマーケットごとに異なる[1]。日本では低発熱量のアラスカLNG(液化天然ガス)プロジェクトと高発熱量のブルネイLNGプロジェクトがあったが、高発熱量のほうがコストを抑えることができ、パイプラインの輸送能力も有効活用できることから高発熱量のLNGが導入された[1]韓国台湾も日本とほぼ同じLNG供給源を選択したため、日本・韓国・台湾では高発熱量対応のガス機器で構成されるマーケットとなっている[1]。一方、米英ではガスの国内生産もあり低発熱量の国産ガスを基準としたマーケットになっている[1]

なお、かつては石炭ガスや石油改質ガスが使われていたが、石炭ガスおよび石油改質ガスは一酸化炭素が含まれているため、(不完全燃焼が起きなくても)ガス漏れによる中毒が発生しやすい。

都市ガスは本来無臭であるが、実際には悪臭(俗に言う「ガス臭い」におい)がする。これはガス漏れ時にすぐ気が付くように、微量の付臭剤を添加しているためである。付臭剤としては、玉ねぎの腐敗したようなにおいがするtert-ブチル メルカプタン(TBM; tertiary-butylmercaptan) C4H10S や、石炭ガス臭のテトラヒドロチオフェン(THT; tetrahydro thiophene)、シクロヘキセン C6H10 [5]またはこれらの混合物が用いられる。

これらのガスはそのほとんどが大気中の空気より比重が軽いものであるが、液化石油ガス(LPガス)を熱量調整した一部のガスは空気より重い。
アメリカ合衆国

米国では天然ガスが自国生産されるが高発熱量成分は石油化学工業に回され、一般には純メタンに近い低発熱量のガスが流通している[1]

しかし、2002年初頭から天然ガス価格が石油価格に対して相対的に上昇し、従来のように国産ガスを発熱量で分離して販売するより、液体成分の抽出を行わず高発熱量ガスのまま販売する方が利益が上がるようになった[1]。そのためパイプライン事業者が保有する機器(パイプラインコンプレッサー)への影響が問題となった[1]。また、国内需要の増大に伴い天然ガスの輸入が必要となるが、従来の低発熱量のガスに対応した機器のままでは不完全燃焼やノッキング、計量設備の不良などの問題を生じるおそれが出るため、ガスの規格をめぐって論争となった[1]
日本

1970年代までは、石炭ガスやナフサブタンなどを改質したガスが使われていたが、中東・東南アジアなどから輸入した液化天然ガス(LNG)を気化した天然ガス、および国内で産出される天然ガスに石油ガスを混合して熱量調整した「13A」(燃焼性等によるガスグループ区分)と呼ばれる規格が主流になっている。1973年に28%だった石炭ガスのシェアは、1989年には5.3%と激減し、現在では製鉄所のある地域で高炉ガスを利用する形で使われている程度である。
ガスの種類

日本では都市ガスはウォッベ指数(Wobbe index[6]と燃焼速度指数の組み合わせにより13A・12A・6A・5C・L1・L2・L3の7種類の区分がある[1]

13A・12Aの発熱量が高いグループと、それ以外の発熱量が低いグループに大別される。また、後ろの3つは、以前あった発熱量の低いグループに属するガスの規格を3つずつまとめたものであり、L1 > L2 > L3の順で出力が小さくなる。また、6A、及び簡易都市ガスとして供給される L13A はLPガスの主要成分であるブタンを火力調整のため空気で薄めたものであり、空気より重くゴム類を侵す働きが強いためガス漏れ警報器の設置やホース類、補修部品手配の際にはそれぞれの種類に対応した製品が必要である。

「13A」などのガス規格の意味は、数字で熱量を、A、B、Cの文字で燃焼速度を表す。

1m3あたりの発熱量

13:46.04655メガジュール(11メガカロリー)?43.14メガジュール(10.306メガカロリー)

12:41.8605メガジュール(10メガカロリー)


燃焼速度(現在主流の12A・13AにはAしかないため、あまり気にしなくてよい)

A:遅い

B:中間

C:速い

ガス燃焼機器の好燃焼範囲から外れた種類のガスを供給すると燃焼不良が引き起こされる[1]。たとえば燃焼速度が速いガスが供給されると、バーナー外部で燃えず内部で燃えることになり過熱事故を引き起こす。逆に燃焼速度が遅いガスが供給されると、バーナーから離れようとする(リフティング燃焼という)。都市ガスとは関係ないが、ガス溶接で使われるアセチレンや水素も非常に燃焼速度の速いガスであるのに対し、プロパンガスは燃焼速度が遅いため、それぞれ専用の溶接火口となる。

供給されるガスについては、日本全国で複数の種類が使用されていたが、1969年に液化天然ガスの輸入が開始されたことを契機にガス種の転換、統一が始まった。天然ガスは石油系のガスと比べ製造過程が環境調和的であり、家庭においても熱量が高く、消費機器の選択肢の拡大や安全性の向上が期待できた[7]


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