都市ガス
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ガス燃焼機器の好燃焼範囲から外れた種類のガスを供給すると燃焼不良が引き起こされる[1]。たとえば燃焼速度が速いガスが供給されると、バーナー外部で燃えず内部で燃えることになり過熱事故を引き起こす。逆に燃焼速度が遅いガスが供給されると、バーナーから離れようとする(リフティング燃焼という)。都市ガスとは関係ないが、ガス溶接で使われるアセチレンや水素も非常に燃焼速度の速いガスであるのに対し、プロパンガスは燃焼速度が遅いため、それぞれ専用の溶接火口となる。

供給されるガスについては、日本全国で複数の種類が使用されていたが、1969年に液化天然ガスの輸入が開始されたことを契機にガス種の転換、統一が始まった。天然ガスは石油系のガスと比べ製造過程が環境調和的であり、家庭においても熱量が高く、消費機器の選択肢の拡大や安全性の向上が期待できた[7]。ガス種の転換に際しては、ガス会社が各家庭を訪問してガス器具の調整が行われたが、一部では作業ミスにより一酸化炭素中毒死が発生する事故も生じた[8]

経済産業省は1991年5月にIGF21計画を発表、2010年までに熱量が高い13Aへの転換がより強力に推進され、最終的には2018年8月に、唯一12A・13A以外の都市ガス(5AN)を送出していた秋田県の湖東ガスが廃業したことで、7種類の区分のうち、13A・12Aの2種類のみが供給されることとなった[1]
ガスの組成例

単一の成分ではなく、数種類の成分の混合ガスである。

13A の組成例(代表値)
[9][10]
メタン 89.2 - 89.60%エタン 5.62 - 6.1%プロパン 3.43 - 3.7%ブタン 1.0 - 1.35%窒素 0.0 - 0.2%[11]
供給ガスに一酸化炭素を含む事業者

一酸化炭素を含むガスは、その問題が浮上した2007年の北見市都市ガス漏れ事故の時点で16事業者が残っていたが、これを契機として経産省・日本ガス協会は家庭用ガスの無毒化を前倒しして進めることになった。計画では2010年12月に完全転換としていたが、ほとんどが2009年までに12A・13Aに転換され、2010年3月25日、最後の四国ガスが13Aに全面転換し、日本国内から一酸化炭素を含む一般熱機器用ガスは根絶されている。

ただし天然ガスの主成分メタンは、LPガスの主成分であるプロパンブタンと比べても酸化還元作用が強く、燃焼状態でなくとも微量ずつ酸素と結合するため、大量に吸引すると酸欠となる可能性が高い。2009年に発生した杉並工業高校都市ガス漏れ事故では、13A転換済みであったにもかかわらず、20人が中毒症状を訴え搬送されている[12]

なお、これら一酸化炭素を含む都市ガスの原料として、一部に石油ガスがあったことから、プロパンガスには今でも一酸化炭素、或いはそれ以外の毒性物質が含まれているという誤解があるが、一般熱機器用及び自動車用のプロパンガスは元々、無毒性である。

秋田市ではかつて、同一市内で2つの規格がある状態で、旧秋田市ガス局は5Aを採用していたが、東部ガスの4Aから13Aへの転換(ただし、御所野ニュータウンのみ、町開きの時点で先行して13Aを最初から導入していた)に併せた統一方針に併せるためのコスト捻出が公営企業として出来なかったことから、東部ガスへの譲渡を決めた経緯がある。譲受された東部ガスによって、市内で2つ(13Aが先行導入された御所野ニュータウンを加味すると3つ)のガス方式が併存し、同一市内の引越等で支障が来すような状況から改善されている(当然、プロパンガスを考慮しない場合)。13Aへの転換・統一で、COを含むガスからの、天然ガス中心の供給への転換が実現した。

前述の通り、1970年代まで日本国内で供給されていた都市ガスの一部には、石炭ガスやナフサを接触分解することで発生する一酸化炭素が含まれていた。その濃度は接触分解のプロセスにより異なるが、およそ0.7?3vol%であった。このため自殺目的で故意にガスを開栓することで、ガス中毒死するケースが見られた。こうした自殺方法は一酸化炭素を全く含まない天然ガスへの転換により過去のものとなったが、自殺手段の一つとして広まったイメージはなかなか払拭できず、本人が中毒死する前にガス爆発を生じさせて近隣に大きな被害を与えるケースが増えた。1978年には東京都内だけでも9件のガス自殺を発端とするガス爆発が発生している[13]
ガスホルダー(ガスタンク)ドイツのガスホルダー現代風の球形のガスホルダー詳細は「ガスタンク」を参照

都市ガスの供給のために、貯蔵用のタンクが設置されており、ガスタンクと呼ばれている(通称。正式名称は「ガスホルダー」)。かつてはほとんどが円筒形、現代ではほとんどが球形である。

タンクは穴が空いてもガスが大気に放出される圧力の方が強く、また燃焼に必要な酸素がタンク内に存在しないため、着火した場合には燃え出すのみで、穴から火を吹くことはあっても直ちに爆発することはない仕組みになっている。

近年ではガス事業者によってはこのタンクに絵柄などを描いているところがあり、一部には球状のタンクの全面にわたって(同様の球状物体である)スイカサッカーボールなどの絵柄を描いているところもある。
ガス管

輸送用埋設ガス管は、被覆鋼管が使われる場合が多い。地震時でも伸びや曲げに強い鋼材が使用される。幹線用埋設ガス管は、被覆鋼管、ステンレス管、鋳鉄管、中密度ガス用ポリエチレン(PE)管等が使用される、古く埋設された歴青材被覆鋼管や片状黒鉛鋳鉄管は地震に弱く、入れ替えを進めている都市ガス事業が多い(PE管なら引っ張られても伸びるだけだが、金属管では破断してしまう)。

最近の低圧用埋設ガス管は、地震などで揺れた場合にひびや割れが生じない(配管接続部は融着接合されているため、引抜き応力時においても抜け外れない)中密度ガス用ポリエチレン管が主流である。中密度ガス用ポリエチレン管は黄色(以前は緑)に着色されており、見分けやすい。融着接合方法はエレクトリックフュージョンとヒートフュージョンがあり、機械接合も可能である。

大口径低圧埋設管は球状黒鉛鋳鉄管を使用する場合も多い、片状黒鉛鋳鉄管に比べ耐震性・耐腐食性・耐衝撃性に優れる。しかしこれは東京ガス仕様、大阪ガス仕様と分かれており融通性がないため、災害時においては復旧現場にて混乱を招く一因ともなっている。
都市ガス用ガスメーター
規格都市ガスメーター(マイコン内蔵メーター)。デジタル表示部の右上に取り付けられているのが検定証印(鉛封印)。

家庭用及び商業用都市ガスは、日本その他先進国では膜式ダイヤフラム式のガスメーターを都市ガスを使用している各家庭・各機関に取り付け料金換算のためガス使用量(容量、体積)を測定している。


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