郵便貯金創業当初、貯金を取り扱う機関が他に存在しないため、単に「貯金」といえば、現在の「郵便貯金」を指していた。しかし、民間金融機関の出現により、1880年3月に「駅逓局貯金」という名称が導入された。駅逓局は、当時の郵便局の名称である。その後、1887年4月に「郵便貯金預所貯金」と改称し、1890年8月13日に翌1891年1月から施行される「郵便貯金条例」が制定され、以後、「郵便貯金」という名称が使われることとなった。 郵便貯金は、郵便貯金法第1条により、「簡易で確実な貯蓄の手段としてあまねく公平に利用させること」と規定されていたことから、公社が「貯金非取扱い郵便局」として定めた郵便局を除き、日本全国全ての郵便局の貯金窓口において取扱いが行われた。非取扱局して指定された郵便局では「郵便貯金業務を取り扱わない」旨の掲示が行われた。 簡易郵便局では農協(JA)の店舗に併設されている簡易局などで郵便貯金業務の全部又は一部(郵便為替業務のみを取り扱う場合を含む)を受託しておらず、取り扱わない簡易局が存在した。 郵便貯金法第10条により、郵便貯金のうち通常郵便貯金、通常貯蓄郵便貯金、積立郵便貯金、教育積立郵便貯金、定額郵便貯金、定期郵便貯金については合算して1預金者につき1000万円の預入限度額が存在した。このうち、教育積立郵便貯金については1000万円の限度額内で200万円という制限があった。 住宅積立郵便貯金、財形定額郵便貯金、財形住宅定額郵便貯金、財形年金定額郵便貯金については、1000万円の限度額とは別枠で預入することができ、住宅積立については50万円、財形・財形住宅は550万円、財形年金は財形の550万円の限度額内で385万円の限度額がそれぞれ設けられていた。 例えば、預金者Aが1000万円の定額郵便貯金を預入した場合、積立・教育積立・定期郵便貯金は一切預入することができないが、住宅積立・財形(一般・住宅・年金)をすることは可能であった。通常郵便貯金については、通常郵便貯金と同一記号番号である郵便振替口座を開設(新総合通帳サービスを利用)し、かつ「移替基準額」を0円とすれば利用することは可能である。これは移替基準額0円の通常郵便貯金は、全額郵便振替の預り金として制度上は管理されるため、郵便貯金の預入限度額に関係しないためである(郵便振替の預り金には限度額がない)。 なお、預金者Aの定額郵便貯金1000万円が預入日から10年経ち満期を迎えた場合、利息が付いた上で全額が通常郵便貯金となるが、この利息分全額が1000万円を超えるため「限度額超過」となり(仮に元金1000万円の定額郵便貯金に10万円の利息が付いた場合、郵便貯金の預入が1010万円となり、利息分10万円が限度額を超えている)、速やかに預金者Aは減額(払戻)をしなければならなかった。 そもそも、預入限度額は郵便貯金創設当初より存在しており、当初は「年間総額元利合わせて500円」であった。1881年から預入限度額という制度が撤廃されたが、1891年1月に復活し、郵政民営化(2007年10月1日)以降も、郵便貯金とその後身の株式会社ゆうちょ銀行には預入限度額が存在している。
取扱郵便局
預入限度額