郵便切手
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また、発行国名の表記はなく、額面の記載も英語のみとなっている。他方、すでに裏糊はついていた。これらの特徴、特に国名表記の欠如は、その後発行された各国の切手にも共通した[注釈 8]

のちに成立した万国郵便連合(UPU)は、国際郵便における郵便物交換を円滑に行うため、切手には発行国の国名を示すこととした[注釈 9]。ただし、イギリスに限って、世界最初の切手発行国であることに敬意を表し、イギリスの君主のシルエットを国名表記の代わりとすることを許している(“U.K. POSTAGE” の表記はない)。しかしながらサウジアラビアの切手には国名表記がなく、代わりに国章のシルエットがある[4]。また、UPUは算用数字で額面を表していない切手は国内郵便へのみに有効であるとしたが、現在ではこの規制は撤廃され、国際郵便用の無額面切手のような切手もある。

この時期にはマルレディ封筒(英語版)[注釈 10](日本の郵便書簡に相当)など切手以外の方法による前払いの方法もあったが、込み入った図案で宛名欄が狭く使い勝手が悪いといった官製封筒のデザインの問題もあり、切手の方がその簡便さもあって、広く受け入れられた。制度が始まったのがイギリスであったこともあり、切手発行国はヨーロッパや、イギリス植民地が中心であったが、徐々に世界各国に広まった。
日本における切手詳細は「日本の切手」を参照日本切手の一例(横山大観「富嶽飛翔」)

日本で最初に発行された切手は、1871年(明治4年)4月20日に発行された竜文切手であり、48、100文、200文、500文の計4種である。この当時はまだ通貨改革が行われていなかったため、江戸時代の通貨による額面表示がなされていた。翌1872年(明治5年)には「銭」の単位に変更された竜銭切手が発行された[注釈 11]。なお、前2者をあわせて竜切手と呼称する。1883年(明治16年)には「円」の単位が表記された切手が発行された。

日本切手では、戦前は「大日本帝国郵便」と表記されるとともに菊花紋章が入っていた[注釈 12]が、戦後は「日本郵便」と表記されるようになった。また1966年1月以降に発行された切手では、ローマ字による国名表記を求めるUPUの決定に従って「"NIPPON"」と表記されている[注釈 13][5]

日本でこれまでに発行された切手は、『さくら日本切手カタログ2018』に掲載された分だけで約8,100種類に達し、その後も増え続けている。日本郵便株式会社の切手・葉書室には7人の切手デザイナーがおり、新たな切手を毎年発行している[6]。形も長方形だけでなく、中には円形やハート型、キャラクターをかたどったもの[注釈 14]など多種多様である。下記は日本で発行された、主な切手の種類である。分類は、発行目的によって区分した。
普通切手詳細は「日本の普通切手」を参照

普通切手は、郵便料金の納付を主目的に発行される切手で、通常切手とも呼ばれる。1円から500円[注釈 15]まで用意されている。切手は郵便局の窓口、コンビニエンスストアなど日本郵便から委託を受けた郵便切手類販売所で購入することができる。
グリーティング切手

の季節ごとに発行されるシールタイプの切手で、それぞれの時期に合わせたデザインである。販売期間が限られている点が普通切手とは異なる。

ドラえもん』をモチーフとしたものもある。また、2012年秋以降春・秋のグリーティング切手には、日本郵便オリジナルのキャラクターであるぽすくまが登場する。
写真付き切手・フレーム切手詳細は「写真付き切手」および「フレーム切手」を参照

切手に付随した箇所に写真やイラストなど任意のデザインを入れることができる切手である。任意のデザイン部分は切り離しでき、切手としての効力は持たない。
記念・特殊切手詳細は「日本の記念切手一覧」および「日本の特殊切手一覧」を参照

記念特殊切手は、国内外の行事の記念、宣伝キャンペーン文化財の紹介などの意図をもって発行される切手である。年賀切手国際文通週間切手のように毎年同時期に発行されるものや、シリーズとして発行されるものもあり、これらを収集家は恒例切手と呼ぶ場合もある。使用目的は普通切手と同様であるため、諸外国では通常切手と区別したカタログ番号を与えていない場合も多い。なお、日本の最初の記念・特殊切手は 、1894年(明治27年)3月9日に発行された明治銀婚記念(2銭と5銭の2種)である。
ふるさと切手詳細は「ふるさと切手」を参照

ふるさと切手は、ふるさと振興の意図で地域の風物や行事をテーマにして発行される切手である。
寄付金付切手

寄附金付切手は、公共的な目的への寄付分を切手の額面に付加して販売される切手である。切手の販売金額の一部が寄付に活用され、寄付金を除く金額部分だけが郵便に使用できる。一般に、切手額面のほかに寄付金額を示す数字を「+」の記号で示し、切手には「80+10」などと表示される。日本最初の寄付金付切手は、1937年発行の愛国切手であり、飛行場建設を目的としていた。年賀切手では1991年以降、寄付金つきが毎年発行されている。例:阪神・淡路大震災寄付金つき切手趣味週間(1995年)、長野オリンピック冬季大会募金(1997年)
電子郵便切手

1981年からサービスの始まったファクシミリを使い郵便物を送付するレタックス電子郵便)専用の切手。1984年および1985年に額面500円の専用切手[注釈 16]が発売されたが、前者については後者が発売された時点で販売打ち切りになったため、流通量が少ない。昭和時代晩期から平成時代初期にかけて、大学などの受験生への合否通知(合格者の受験番号表)に多く使われた[7]が、インターネットなど他のメディアが発達したため、サービス自体使われることが少なくなった。そのため、その後は消費税導入など料金改定が行われても、そのときの料金に対応した電子郵便切手の発行は行われなかった。
在外国局切手

日本の郵便局が1876年以降に朝鮮および中国の各地に開設されていた。これらの在外国局で当初は日本切手がそのまま販売されていたが、為替相場の差益目当てに在外国郵便局で購入し内地で売却する投機が行われたため、それを防止する目的で、1900年から販売地域を加刷した。

在朝鮮日本郵便局では「朝鮮」の文字を加刷したが、1900年1月1日から1901年3月31日までしか使用されなかった。そのうえ1905年に当時の大韓帝国の行っていた郵政事業および電信事業を「日韓通信業務合同」の名の下に日本政府が接収したため、1910年日韓併合を待たずして日本切手がそのまま使用されることになった。

中国(清朝および中華民国)では「支那」の文字を加刷した。在中国の日本郵便局は長期間活動したため、用紙の違いなども含め49種類の切手が発行された。最終的に1922年12月31日に在中国局が廃止されるまで使用されていた。
軍事切手

軍事切手とは軍人が郵便物を差し立てる際、差出通数の管理などを目的に貼り付けさせる切手である。日本を含め、この制度の対象とされたのは下士官兵である場合が多く、将校については通数を問わず有料とされた。日本の場合、20世紀初頭に中国,台湾朝鮮半島関東州南洋諸島に駐留していた大日本帝国陸海軍の下士官兵士に、月2枚支給されていた。封書で使用されるのが原則であり、重量便は取り扱わないことになっていたが、実際にはそのような使用例も存在する。切手自体は、当時の普通切手に「軍事」の文字を加刷したものである。 1910年から 1944年まで使用され、収集家は台切手と加刷された文字の形式をもとに6種に分類している。

これ以外に、1921年に中華民国青島市で、正規の軍事切手の配給が間に合わず、現地郵便局[注釈 17]が手持ちの「支那」切手へ逓信省に無断で加刷し製造した「青島軍事切手」がある。
航空切手

航空切手は、航空郵便に使用する目的で発行された切手である。世界各国で発行されており飛行機や鳥といったデザインが使われることが多く、額面も総じて高額である。日本においては 1929年に発行されたが、国内における航空郵便制度が速達郵便制度に統合された1953年以降は国際郵便用も含めて専用の切手は発行されていない。


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