郊外住宅地は、都市の外側にある住宅地である。
都市から周辺地域に向かって鉄道が次々と引かれると、鉄道沿いに郊外住宅地が出現し、そこに居住し都市部に鉄道で通勤する人々が出現した。また、様々な理論や理想を基に、機能性、安全性、利便性を考慮し、近代的な都市計画に基づいて計画的に作られた地区も多い。
郊外住宅地の例として次のようなエリアを挙げることができる。
(ロンドンの郊外にある)ベッドフォード・パーク
世界各地で大発展し、都市より人口が多くなる郊外カナダ・トロント郊外のミシサガ川崎市武蔵小杉の超高層ビル群
世界的に見て、人口の大多数は郊外に住む状況になっている。「田舎」「郊外」「都市」の三者の中で、郊外は最も住みやすい場所だと判断され、住民が増えて行く傾向が強い。
伝統的に北アメリカでは、郊外とは、商店街区や学校の近くに一戸建ての家族の家が建ち、鉄道駅や自動車道やその他交通機関に容易にアクセスできる住宅地だった。しかし今多くの大都市圏において、人口の急増などにより、郊外は人口が密集しアパートや集合住宅、オフィスビルの複合施設や軽工業の工場、ショッピングセンターや大規模ショッピングモールまでが立ち並ぶ状態である。
郊外に人口が密集する現在、郊外自治体が10万人を超える人口を抱えることもある。事実、アメリカ合衆国やカナダの郊外自治体は、ほかの大都市圏の中心都市より大きい場合がある。たとえば、アリゾナ州フェニックスの郊外自治体、メサ市(Mesa、2020年国勢調査による人口504,258人[5])は、アトランタ、マイアミ、クリーブランド、ミネアポリス、ニューオーリンズ、セントルイス、ピッツバーグ、シンシナティよりも人口が多く、1990年から2000年にかけての間、中心都市のフェニックス自体よりも人口が急成長している。その他、カナダのトロントの郊外自治体であるミシサガ(Mississauga)は北米最大の郊外自治体で、人口は721,599人(2016年国勢調査)[6]に達し、カナダ全国でも第6位で、デトロイト、ボルチモア、ボストン、ワシントンD.C.、ナッシュビル、デンバー、ミルウォーキー、ポートランド、ラスベガス、ウィニペグ、バンクーバーなどよりも人口が大きい。
これには20世紀初頭以後、アメリカ合衆国の中心都市の市境に変化がほとんどないことも挙げられる。(クリーブランド市などは典型である。)20世紀初頭の米国の郊外自治体は、中心都市に合併されるより次第に資産価値の維持のため自治を重視するようになり、特に第二次世界大戦後は、郊外都市は独立を維持し、アフリカ系住民や移民の増えた中心都市から距離を置き、中心都市から流出した比較的裕福な住民層(主に白人やアジア系)を吸収している。このため、アメリカの各都市圏では、小さな中心都市が大きな郊外自治体(市や郡など)に取り囲まれている状態になっている。
北米の人口の多い郊外自治体5つを上げると、上から順に、ミシソガ、ブランプトン(Brampton、カナダ・オンタリオ州)、サレー(Surrey、カナダ・ブリティッシュコロンビア州)、メサ、ロングビーチ(Long Beach、アメリカ合衆国カリフォルニア州)となる。
アメリカ合衆国行政管理予算局による「大都市圏」の認定において、その圏内の最大自治体が郊外自治体ということもある。たとえばバージニア州南東部の人口180万弱の「ハンプトン・ローズ大都市圏」の最大自治体は人口459,470人(2020年国勢調査)[7]のバージニアビーチである(バージニア州内でも最大都市である)。統計局によればこの大都市圏は正式には「バージニアビーチ・ノーフォーク・ニューポートニューズ」と呼ばれ、慣例によって人口最大の自治体を大都市圏名の先頭に持ってきているが、この名称ではこの大都市圏の性格が誤解される恐れがある。実は、この大都市圏は、大規模コンテナ港湾と、第2艦隊が母港とするアメリカ海軍最大の基地で名高いノーフォーク市(人口238,005人)[8]が中心都市である。また、大都市圏の名には含まれていないチェサピーク(人口249,422人)[9]も、既にノーフォークを抜いている。
日本でも同じような郊外の人口増の例は、特に東京20 - 30km圏内に位置する政令指定都市の横浜、川崎、さいたま、千葉などにも見られる。これら以外にも中核市や施行時特例市では、八王子、川口、越谷、川越、所沢、草加、柏、船橋があり、これらはいずれも世界最大級の郊外自治体と呼べるかもしれない。また、大阪25km圏内でも、政令指定都市の堺をはじめ、宝塚、西宮、尼崎、豊中、吹田、高槻、茨木、枚方、寝屋川、奈良、東大阪といった比較的大きな郊外都市を抱えている。