避妊
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開発途上国では、避妊を望んでいる女性の約2億2200万人が現代の避妊手法を利用できない[17][18]。途上国での避妊の利用により、妊娠中または妊娠前後の死亡(英語版)数は40%減少し(2008年には約270,000人の死亡が防げた)、避妊の完全な需要が満たされれば、死亡数を70%防止できる[19][20]。避妊を行って妊娠間の期間を長くすることで、成人女性の出産の結果と子供の生存率を改善することができる[19]。途上国では、女性の収入・資産・体重・子供の学校教育と健康のすべては、避妊へのアクセスが改善することで向上することがわかっている[21]。避妊により扶養される子供が少なくなり、労働に参加する女性が多くなり、希少な資源の利用を減らすことができるため、経済成長の促進に貢献できる[21][22]

避妊そのものは、世界各地で古くから行われているが、第二次世界大戦以前の日本においては避妊の知識は少なく、確実性も低かった。ようやく戦後に普及し始め、教育機関では性教育の一環として避妊を教える所もあるが、これには賛否両論がある[要出典]。

アフリカなどでは、児童就労を目的とした出産や医療の進歩、戦争や部族間抗争の減少の一方で、避妊知識や避妊具の普及が遅れているため、人口の急激な増加の原因の一つになっているとされる。また、元々アフリカでは貧困家庭が多く、避妊具が高価であるが故に、その普及を遅らせている要因の一つになっている[要出典]。
パールインデックス(PI)

前述のとおり、完全な避妊法は存在しないが、よく議論されるのが「避妊の効果」である。その避妊の効果を示す一般的な指標が、パールインデックス(PI、パール指数)である。パールインデックスとは、ある避妊法を1年間用いた場合に、避妊に失敗する確率(厳密な定義ではないが、妊娠する確率ともいえる)を示すものである。名称は、アメリカ合衆国の生物学者、生物遺伝学者のレイモンド・パール(Raymond Pearl)の名前にちなむ。

例えば、ある避妊法のパールインデックスが3の場合、その避妊法のみを1年間使った女性のうち3%の人数が妊娠するということになる。避妊をしなかった場合のパールインデックスは85程度といわれている。これは、避妊をまったくしなかった(もしくは妊娠を望んでいる)カップルの女性が1年後に妊娠している率が85%程度であることを示す。
PIの計算法

PIは「100人の女性が1年間避妊」または「10人の女性が10年間避妊」した場合の「100女性年」を用いて算出される。PIはあくまで避妊方法を数値化し、各々の避妊効果を比較するための数値であり、避妊効果自体を算出するものではない。

PIの算出には3つの数値が必要である。

何ヶ月間避妊検証が行われたか、または避妊中の
月経回数。

妊娠回数。

検証完了理由(妊娠が0、その他が1。下記Bを参照)。

PIの算出には2つの方法がある。

妊娠回数を避妊検証の合計月で割り、1200を掛ける。

妊娠回数を月経回数で割り、1300を掛ける(1300を掛けるのは月経の平均的期間が28日間、年間13回ほどだからである)。

一般的に検証結果には2つのPIが表示される。

(A)実使用例:すべての妊娠回数と検証期間が含まれる。

(B)完璧使用例:検証中避妊方法を誤り、妊娠してしまった例は除外して計算。

PIの信憑性

統計的にPIは0 - 100の間ではあるものの、科学的に「実験失敗」の確率を含めるとPIはパーセントで表せない数値であることがわかる。避妊方法の検証に参加した女性達が皆1か月目で妊娠してしまったら、PIは1200 - 1300のパーフェクトな数値となってしまう。これはPIがパーセントで表すPearl Rate(パール率)からそうでないPearl Index(パール指数)と呼ばれるようになった由来でもある。

また避妊実験を行う被験者の国柄、人種、年齢、学歴などにより避妊失敗率は激変し、PIにも大きく影響する。もちろん健康的で妊娠しやすいカップルから妊娠し、不健康で不妊性のカップルは避妊しなくても妊娠できないこと、避妊道具は使用方法を練習するほど効果が上がることなどは数値化されていない。さらには避妊方法への不満、妊娠願望、避妊方法の副作用、後日検証に現れない被験者などはPIに反映することができない。

だからといってPIに信憑性がなくなるわけではない。科学的根拠にだけ基づいた指数であることを踏まえた上で避妊検証実験の状況を勘案して、PIをどれだけ重視すべきかを検討すべきである。
避妊方法

使用開始後1年間に妊娠する確率[23][24]避妊方法典型的な使用の場合完璧に使用した場合
避妊をしない85%85%
複合経口避妊薬9%0.3%
プロゲスチンのみのピル13%1.1%
不妊手術(女性)0.5%0.5%
不妊手術(男性)0.15%0.1%
コンドーム(女性)21%5%
コンドーム(男性)18%2%
銅の子宮内避妊器具(IUD)0.8%0.6%
ホルモンの子宮内避妊器具(IUD)0.2%0.2%
避妊パッチ9%0.3%
膣リング9%0.3%
MPAの注射6%0.2%
避妊用インプラント0.05%0.05%
ダイヤフラムと殺精子剤12%6%
生理的変化を利用した方法(Fertility awareness)24%0.4?5%
膣外射精22%4%
泌乳性無月経法 (6ヶ月の失敗率)0?7.5%[25]<2%[26]

避妊具の使用
コンドーム詳細は「コンドーム」を参照使用前のコンドーム(突起部が精液溜まり)

コンドームはラテックスポリウレタンの薄膜をサック状にした避妊具で、に挿入する前に勃起した状態のペニスに被せて使用する。避妊具の中では最も一般的に使用される(PI:3 - 14%程度)。確実な避妊のためには、勃起直後に装着することが勧められる。また、勃起したペニスの大きさに適応したコンドームを使用しないと行為中に外れる可能性があるため、自身(パートナー)の勃起したペニスの大きさを測定した上で、大きさに応じたコンドームを装着しなければならない。

勃起時のペニスの参考サイズは、コンドームを参照のこと。ペニスの太さにあわせて多様なサイズが用意されており、SSやLLは店頭になくともECサイトで気軽に購入できる。効果を確実にするために、適切なサイズのコンドームを選択することが望まれる。大鵬薬品工業から2004年4月30日まで発売されていた女性用コンドーム「マイフェミィ」

単に「コンドーム」と言うと男性が装着する避妊具を指すが、女性器に装着する女性用コンドームも市販されている。
ペッサリーペッサリーの装着位置詳細は「ペッサリー」を参照

避妊用のペッサリーはより挿入するゴム状の避妊具で、本来は子宮の位置を直すための道具である。子宮口に被せるように指で挿入し、通常は殺精子剤と併用するが現在では殆ど使われていない。膣内に入った精子が子宮に達せず避妊することができる。装着状態が見えないために正しく装着するのが難しい。

装着方法については指導が必要であり、避妊の確率もあまり高くなく(PI:6 - 20%程度)単独ではあまり使用されない。また、人によって適したサイズ・形状などが異なるために薬局では販売されておらず、入手するためには産婦人科医の診察を受ける必要がある。ペッサリーは避妊の目的以外にも、膀胱脱や子宮下垂、子宮脱の矯正にも使用される。
子宮内避妊用具(IUD)銅付加IUD「パラガード(英語版)」T 380A詳細は「子宮内避妊器具」を参照

子宮内避妊用具にはリング状・ループ状・コイル状など様々な形がある。これを病院において子宮内に挿入しておくと体機能としての異物排除機能が働き、受精卵の着床を妨げることで妊娠を防ぐ。避妊の確率はあまり高くなかったが、近年の改良により徐々に確率は高くなっているとされる。日本では単純タイプに加え、銅付加タイプ(PI:0.6 - 0.8%程度)が認められている。Intra-uterine (Contraceptive) Deviceの頭文字をとってIUD(あるいはIUCD)とも呼ばれる。日本ではリング状のものが早くから普及したため「避妊リング」と呼ばれることも多い。

月経が終了してから、 4 - 5日の間に装着する。副作用として月経の出血量増加や期間延長、下腹痛、不正性器出血が起きる場合がある。ある製品では総症例1,047例中602例(57.5%)に使用に関係する副作用が認められ、主な副作用としては月経異常269件)(25.7%)、過多月経136件(13.0%)、月経中間期出血120件(11.5%)、腹痛116件(11.1%)、疼痛111件(10.6%)、白帯下108件(10.3%)等であった[27]。また、IUDが子宮から飛び出してくる滑脱子宮の壁を突き破る穿孔、骨盤内炎症性疾患(PID)、挿入後の子宮や卵管感染などの有害事象がある。誰でも使用できるわけではなく、先天性心疾患又は心臓弁膜症の患者には慎重な使用が求められる。また使用ができないケースとしては通常、出血性素因のある女性や診断の確定していない異常性器出血のある人、妊娠のしたことのない人や子宮外妊娠をしたことがある人、貧血を伴う過多月経のある人、性感染症や性器感染症のある人、頸管炎又は腟炎の患者や産婦人科領域外であっても重篤な疾患のある患者、先天性・後天性の子宮形体異常のある女性などがある。また普通の妊娠は防げても、子宮外妊娠は防げない。また、定期検診と数年に一度の取替えが必要である。
ミレーナ子宮内避妊システム「ミレーナ」詳細は「ミレーナ (子宮内避妊システム)」を参照

挿入方法、形状はIUDと同じだが、中央の部分から黄体ホルモン女性ホルモンの一種)が持続的に子宮内に放出されるのが特徴であることから、「レボノルゲストレル放出子宮内避妊システム」と呼ばれることとなった。黄体ホルモンは子宮頸管(子宮の入り口)の粘膜を変化させ精子の侵入を防ぎ、また子宮内膜の増殖を抑制し、受精卵着床を防ぐ作用がある。


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