避妊
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

一部の人々は避妊を倫理的、宗教的、または政治的に望ましくないことだと考え、避妊手段へのアクセスを制限したり阻止したりしている[4]
概要

世界保健機関(WHO)とアメリカ合衆国疾病予防センター(CDC)は、特定の病状を持つ女性の避妊手法の安全性に関するガイダンスを提供している[5][6]。最も効果的な避妊方法は、男性の精管結紮術および女性の卵管結紮術(英語版)、子宮内避妊器具(IUD)、避妊インプラント(英語版)による不妊手術である[7]。これに続いて効果的な方法は、経口避妊薬、避妊パッチ(英語版)、膣リング(英語版)、注射可能な避妊薬(英語版)など、ホルモン避妊薬(英語版)がいくつかある[7]。効果の低い避妊方法には、コンドーム、ダイヤフラム(英語版)、避妊用スポンジ(英語版)などの物理的な障壁を導入する方法や、生理的変化を利用した方法(Fertility awareness(英語版))がある[7]。最も効果の低い避妊方法は、殺精子剤膣外射精である[7]。男性の精管切除は非常に効果的であるが、通常は元の状態に戻すことができない[7]。男性用コンドームや女性用コンドームなど使用したセーフセックス(英語版)は、性感染症の予防にも役に立つ[8]。他の避妊方法は、性感染症は予防できない[9]緊急避妊薬を用いると、避妊せずに行われた性交から72?120時間以内に服用した場合に、妊娠を防ぐことができる[10][11]。性的な禁欲(英語版)も避妊の一形態であると主張する人もいるが、純潔のみの性教育(英語版)は、避妊教育なしで実施された場合に、10代の妊娠を増加させる可能性がある[12][13]

10代の若者の場合、妊娠は悪い結果につながるリスクが高くなる。包括的な性教育と避妊へのアクセスにより、この年齢層の望まない妊娠(英語版)の割合を減らすことができる事が分かっている[14][15]。一般に若年層はどのような避妊手法も利用できるが、インプラント、IUD、または膣リングなどの長時間作用型の可逆的な避妊方法(英語版)は、10代の妊娠率を減らせる可能性がより高いとされる[15]。出産後、母乳だけで子供を育てていない女性は、わずか4?6週間で再び妊娠する可能性がある[16]。避妊の方法の中には、出生直後に開始できるものもあれば、開始を出産後に最大6か月遅らせる必要があるものもある[16]。母乳育児をしている女性には、複合経口避妊薬をよりもプロゲスチンのみを使用する方法が好まれる[16]閉経に達した女性は、最後の月経から1年間避妊を継続することが推奨されている[16]

開発途上国では、避妊を望んでいる女性の約2億2200万人が現代の避妊手法を利用できない[17][18]。途上国での避妊の利用により、妊娠中または妊娠前後の死亡(英語版)数は40%減少し(2008年には約270,000人の死亡が防げた)、避妊の完全な需要が満たされれば、死亡数を70%防止できる[19][20]。避妊を行って妊娠間の期間を長くすることで、成人女性の出産の結果と子供の生存率を改善することができる[19]。途上国では、女性の収入・資産・体重・子供の学校教育と健康のすべては、避妊へのアクセスが改善することで向上することがわかっている[21]。避妊により扶養される子供が少なくなり、労働に参加する女性が多くなり、希少な資源の利用を減らすことができるため、経済成長の促進に貢献できる[21][22]

避妊そのものは、世界各地で古くから行われているが、第二次世界大戦以前の日本においては避妊の知識は少なく、確実性も低かった。ようやく戦後に普及し始め、教育機関では性教育の一環として避妊を教える所もあるが、これには賛否両論がある[要出典]。

アフリカなどでは、児童就労を目的とした出産や医療の進歩、戦争や部族間抗争の減少の一方で、避妊知識や避妊具の普及が遅れているため、人口の急激な増加の原因の一つになっているとされる。また、元々アフリカでは貧困家庭が多く、避妊具が高価であるが故に、その普及を遅らせている要因の一つになっている[要出典]。
パールインデックス(PI)

前述のとおり、完全な避妊法は存在しないが、よく議論されるのが「避妊の効果」である。その避妊の効果を示す一般的な指標が、パールインデックス(PI、パール指数)である。パールインデックスとは、ある避妊法を1年間用いた場合に、避妊に失敗する確率(厳密な定義ではないが、妊娠する確率ともいえる)を示すものである。名称は、アメリカ合衆国の生物学者、生物遺伝学者のレイモンド・パール(Raymond Pearl)の名前にちなむ。

例えば、ある避妊法のパールインデックスが3の場合、その避妊法のみを1年間使った女性のうち3%の人数が妊娠するということになる。避妊をしなかった場合のパールインデックスは85程度といわれている。これは、避妊をまったくしなかった(もしくは妊娠を望んでいる)カップルの女性が1年後に妊娠している率が85%程度であることを示す。
PIの計算法

PIは「100人の女性が1年間避妊」または「10人の女性が10年間避妊」した場合の「100女性年」を用いて算出される。PIはあくまで避妊方法を数値化し、各々の避妊効果を比較するための数値であり、避妊効果自体を算出するものではない。

PIの算出には3つの数値が必要である。

何ヶ月間避妊検証が行われたか、または避妊中の
月経回数。

妊娠回数。

検証完了理由(妊娠が0、その他が1。下記Bを参照)。

PIの算出には2つの方法がある。

妊娠回数を避妊検証の合計月で割り、1200を掛ける。

妊娠回数を月経回数で割り、1300を掛ける(1300を掛けるのは月経の平均的期間が28日間、年間13回ほどだからである)。

一般的に検証結果には2つのPIが表示される。

(A)実使用例:すべての妊娠回数と検証期間が含まれる。

(B)完璧使用例:検証中避妊方法を誤り、妊娠してしまった例は除外して計算。

PIの信憑性

統計的にPIは0 - 100の間ではあるものの、科学的に「実験失敗」の確率を含めるとPIはパーセントで表せない数値であることがわかる。避妊方法の検証に参加した女性達が皆1か月目で妊娠してしまったら、PIは1200 - 1300のパーフェクトな数値となってしまう。これはPIがパーセントで表すPearl Rate(パール率)からそうでないPearl Index(パール指数)と呼ばれるようになった由来でもある。

また避妊実験を行う被験者の国柄、人種、年齢、学歴などにより避妊失敗率は激変し、PIにも大きく影響する。もちろん健康的で妊娠しやすいカップルから妊娠し、不健康で不妊性のカップルは避妊しなくても妊娠できないこと、避妊道具は使用方法を練習するほど効果が上がることなどは数値化されていない。さらには避妊方法への不満、妊娠願望、避妊方法の副作用、後日検証に現れない被験者などはPIに反映することができない。

だからといってPIに信憑性がなくなるわけではない。科学的根拠にだけ基づいた指数であることを踏まえた上で避妊検証実験の状況を勘案して、PIをどれだけ重視すべきかを検討すべきである。
避妊方法

使用開始後1年間に妊娠する確率[23][24]避妊方法典型的な使用の場合完璧に使用した場合
避妊をしない85%85%
複合経口避妊薬9%0.3%
プロゲスチンのみのピル13%1.1%
不妊手術(女性)0.5%0.5%
不妊手術(男性)0.15%0.1%
コンドーム(女性)21%5%
コンドーム(男性)18%2%
銅の子宮内避妊器具(IUD)0.8%0.6%
ホルモンの子宮内避妊器具(IUD)0.2%0.2%
避妊パッチ9%0.3%
膣リング9%0.3%
MPAの注射6%0.2%
避妊用インプラント0.05%0.05%
ダイヤフラムと殺精子剤12%6%
生理的変化を利用した方法(Fertility awareness)24%0.4?5%
膣外射精22%4%
泌乳性無月経法 (6ヶ月の失敗率)0?7.5%[25]<2%[26]

避妊具の使用
コンドーム詳細は「コンドーム」を参照使用前のコンドーム(突起部が精液溜まり)

コンドームはラテックスポリウレタンの薄膜をサック状にした避妊具で、に挿入する前に勃起した状態のペニスに被せて使用する。避妊具の中では最も一般的に使用される(PI:3 - 14%程度)。確実な避妊のためには、勃起直後に装着することが勧められる。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:104 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef