避妊
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その中で死亡例は11件あり10代1人、20代2人、30代4人、40代1人、50代2人、不明1人だった[29]

発癌性に関しては、国際がん研究機関によるIARC発がん性リスク一覧で、「経口避妊薬の常用」に関して「Group1 ヒトに対する発癌性が認められる」と評価されている。また、喫煙を伴うと心臓・循環器系への副作用が高まるため、ピルを服用するなら喫煙をしないことが望ましい。

ピルを服用できない場合としては、乳がん子宮体がん子宮頸がん子宮筋腫の患者及び疑いのある人、原因不明の出血や血栓症を起こしたことがあるがある人及び肺塞栓症冠動脈疾患・血栓症静脈炎・脳血管障害の患者やこれらの病気にこれまでにかかったことがある、その疑いのある人、片頭痛の患者、糖尿病患者、高血圧の人、35歳以上で1日15本以上のタバコを吸う人、コレステロール値や中性脂肪の高い人、腎臓肝臓に病気のある人、以前妊娠した時に持続的なかゆみまたは黄疸や妊娠ヘルペスの症状が出たことのある人。

また肥満や40歳以上の人、子宮筋腫のある人などには慎重な投与が求められる。かつては中用量ピルが用いられていたが、副作用のリスクの低減を目的として低用量ピル、超低用量ピルが開発された。

日本でのピルの承認は、他先進国と比較して酷く遅れ、ピルの発見から40年間の年月を必要とした(アメリカ合衆国では1960年代に認可されている)。日本では、まず最初に治療目的の中用量ピルが最初に認可されたが、避妊を目的としたものではなく、副作用も強かった。1998年やっと避妊目的の低用量ピルが認可された。2010年に超低用量ピルが月経困難症の治療薬として認可されたが、避妊用としては低用量ピルが主流になっている。
インプラント

プロゲステロンを含有した徐放性のスティックを女性の上腕の皮下に埋没させ、長期間にわたって避妊効果を発揮させるもの[30]。処置は局所麻酔で簡便に実施できる。アメリカでは1回の挿入によって3年間の避妊効果が得られる。避妊効果もピルより高い。3年後あるいは妊娠を望む時は切開してスティックを取り出す必要があるのが欠点であり、挿入時よりも手間がかかる[30]。日本では未認可。
皮膚パッチ剤

エブラ (EVRA) 避妊パッチなど。エストロゲンとプロゲステロンを含有したパッチ剤を女性の皮膚に貼ることによって避妊効果を発揮する[30]。1枚のパッチ剤で1週間の避妊が出来る[30]。日本では未認可であるが、個人の責任で自己使用できる避妊薬なので[注 1]個人輸入されている。
注射剤

プロゲステロンを皮下ないし筋肉注射する避妊法[30]。3か月毎の注射が必要[30]。注射の中止によって、半分の女性が半年以内に生殖能力を回復するが、最長1年かかる場合もあるとされる[30]。日本では未認可。
殺精子剤大鵬薬品工業が2001年まで発売していたマイルーラ(フィルムタイプ)

精子を殺す作用のある薬剤を性交の一定時間前に膣内に挿入し、避妊を行う。ピルのような全身の副作用がなく、女性自身の手で避妊できるという利点がある。欠点は錠剤やフィルム状の製品は膣内奥に留置するのにコツが必要であり、溶解するのに時間が掛かるので、初心者では失敗しやすく、避妊の確率はあまり高くない(PI:6-26程度)。すなわち、精子が全て死ぬわけではなく、生き残った精子が受精することも非常に多い。そのため、他の避妊方法と併用すべきである。

また、性交後に薬剤が流れ出て下着やシーツが汚れやすいという欠点や、薬剤によるアレルギーで外陰部炎を起こすケースもある。スポンジ以外の製品は、1回の射精につき1つ使用する必要があり、2回目以降の射精では追加投与が必要である。

日本では嘗てマイルーラ大鵬薬品工業)やサンプーン(エーザイ)等が国内向けに販売されていたが(詳しくは後述)、2015年までに全て販売終了となっている。ただ認可はされているので、世界からの個人輸入で取り寄せることは可能。

以下の5種類のタイプが存在する。
錠剤
溶けるのに時間がかかり即効性でなく、行為の後に流れ出た薬剤で下着やシーツを汚しやすいのが欠点。反面携帯に便利という利点もある。薬剤は膣液で絶えず希釈され体外に流出することもあるので射精のたびに追加使用する必要がある。日本ではエーザイからメンフェゴールを主成分とする「ネオサンプーン ループ錠」が製造販売されていたが、原料の入手難により2011年3月に製造終了した。トローチ状のリング形状をした白色の錠剤であり、膣の奥に入れると膣液で溶解・発泡して効果を発揮する仕組みであった。アメリカでは半固形の坐薬状の形状のものが「Encare」(エンケア)の商品名で販売されている(エンケアの主成分はノノキシノール-9)。
ゼリー
海外ではペッサリーに塗布して使用する薬剤や、アプリケーターで膣内に注入する製品が販売されている。使用直後から効果発揮するのが利点であるが、アプリケーターが必要であり、使用後に洗浄などの手間隙が必要なのが欠点。充填済みの使い捨てアプリケーター形式の製品も海外では販売されている。アプリケーターに充填してから使用する商品では、アプリケーターは再使用するために使用後に洗浄が必要である。日本ではかつてFPゼリー:発売/日本家族計画協会(製造/ ⇒第一薬品産業株式会社)が販売されていた。FPゼリーの ⇒成分ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルであったが、発売中止されている。アメリカではOrtho(Ortho Options Vaginal Contraceptive Jelly)やOptions Conceptrolという製品が販売されている。
フィルム
3cm四方の半透明のフィルム状の薬剤を折りたたんで膣の奥に留置し、膣液で溶解して効果を発揮するもの。携帯に便利であるが折りたたんだ薬剤を膣の奥に留置するのが難しいという欠点がある。錠剤と同じく即効性ではない。日本ではマイルーラという製品が大鵬薬品工業から販売されていたが、外陰部の刺激症状のトラブル報告などもあり、2001年3月に販売中止された。マイルーラの ⇒成分もFPゼリーと同じく、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルである。アメリカでは同じ成分の「VCF」という製品が販売されている(VCF Dissolving Vaginal Contraceptive Films)。
スポンジ
殺精子剤を染み込ませたポリウレタン製のスポンジを膣円蓋に留置して避妊するもの。精子を物理的・化学的に阻止する。妊娠阻止率は89% - 91%でアメリカの「トゥデイ・スポンジ」(Today Sponge) が代表的商品。24時間効果が持続するのが特徴で2回目以降の射精に対しても追加で使用する必要は無い。性交渉の後6時間は膣内にスポンジを留置する必要がある。最大留置時間は30時間とされている。スポンジは使用前に水を含ませてから膣内に挿入する。タンポンの使用経験が無い女性には正しい位置にスポンジを留置するのは難しいとされ、使用を避けるべきと説明書には勧告されている。スポンジには子宮頚部にフィットするように凹部が設けられており、また取り出すときに指を引っ掛けやすいようにバンドが取り付けられている。スポンジの硬さは膣組織と同じ硬さに設定されており、性交時の男性側の違和感を緩和する工夫がなされている。1995年に製造元の設備劣化のために販売中止となり、在庫を巡って騒ぎになった。映画『となりのサインフェルド』では、主人公がスポンジを愛用していたが製造中止によって手持ちが少なくなり、使う相手を厳選するというエピソードが紹介されている[31]。2005年に製造権利を買い取った新興企業アレンデール・ファーマスーティカルズ社から再発売された[32][33]
フォーム
殺精子剤を泡状にしたもの。スプレー缶に充填されており、使用前にアプリケーターに泡状の殺精子剤を充填し、アプリケーターを膣内に挿入して注入する。特徴はゼリーとほぼ同じで即効性。アプリケーターは再使用するために使用後に洗浄が必要である。2000年代までアメリカで流通していたが、その後発売中止となっている。
生理的変化を利用した避妊
オギノ式

女性の月経周期に基づいて妊娠可能な期間を計算・予測し、その期間中の性行為に限り避妊を行う方法(PI:9程度)。周期法とも呼ばれる。簡便な方法であるが、排卵の乱れなどにより予測を失敗してしまう可能性もある。不妊治療のため日本人産婦人科医・荻野久作が発見した、月経周期に関する「荻野学説」が避妊法に応用されたものである。

なお、荻野本人は自分の学説が避妊法として利用されることについて、より確実な避妊法が存在する上に中絶の増加に繋がるとして大いに反対していた。「女の身体には1日たりとも『安全日』などありはしない」「迷惑だ。むしろ不妊治療に役立つ学説だ」と主張しつづけた。

カトリック教会の教学上(人のいのちを育む家庭のいしずえとして、夫婦の本来の性のあり方を守るため)、排卵法(ビリングス・メソッド)と共に認められている、受胎調節法(自然な家族計画)の一つである。
基礎体温法

女性の月経の周期のうち、基礎体温を計測して低温相から高温相に変わった日(排卵日)を知り、それから4日目以降に性行為を行う方法(PI:3程度)。毎日規則正しい生活を行い、かつ定時に基礎体温を測り続ける必要がある。

上記のオギノ式と併用することで、より避妊成功率を高めることができる。
長期授乳

妊娠可能年齢の女性には、母体が必要なエネルギーを脂肪として蓄えないと妊娠可能とはならない生理的メカニズムがある[34]。女性の正常な妊娠には平均的に27,000カロリーのエネルギーを必要とし、出産後に体重に対する脂肪の割合が20から25パーセント程度の水準まで脂肪を蓄えないと排卵が再開されない。嬰児への授乳は1日に約1,000カロリーを必要とするため、授乳によって子育てを行う環境では排卵の再開が遅くなる。動物性蛋白質を主な栄養源とし、日常的に移動する狩猟採集民サン族の女性は、授乳期間を長くすることで意図的に妊娠間隔を4年以上に伸ばすことを可能としている[34]
その他の方法

この他、子宮頚管粘液の状態で排卵日を確認する頚管粘液法もある(PI:2程度としているが、詳しく検証されているかなど不明である)。


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