遺伝
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実際、近年の学生向けの生物学や入門書などでは、分子生物学的な研究の進展にしたがって、遺伝について遺伝子を用いた分子レベルの解説が中心となっている[2]。だが、学問的に厳密に言えば、遺伝子以外の要素によって起きる、親子間の何らかの性質の継承も、研究者間では扱われることがあるのである。上に挙げたプリオン、ウイロイド以外にも、例えば母体が持つ細胞が直接に子へと移るキメラ現象(やマイクロキメリズム)もまた、それなりに研究されている。つまり、遺伝の実相というのは、必ずしも入門者向けの教科書で描かれる遺伝子がらみの説明だけで終わるような単純なものではなく、もう少し複雑な面もある、ということがすでに明らかになっているのである(エピジェネティック現象も参照)。

なお遺伝は、親と同一の形の子供を作る働きであるが、他方、生物は長い年月の中では、次第にその姿を変化させる。この変化を「進化」と呼ぶ。この両者、つまり《同一性》と《変化》は一見矛盾する。それに説明を与えようとしたのが進化論である。生物の形質の変化に関しては、多くの人々が様々な理論を提唱してきた歴史がある。ラマルクは、用不用説を唱え、チャールズ・ダーウィンはその用不用説を支持しつつも、自説の説明のために遺伝の研究の必要を感じ、ハトの遺伝を研究した。ダーウィンは遺伝のしくみに関する説としてパンゲン説を唱えたが、後にそれは否定されることになった。

ラマルクによって提唱された獲得形質に関して、分子生物学の研究結果より新たな事実が明らかになった。2014年、スイスのチューリッヒ大学のIsabelle M. Mansuyらは、遺伝子発現を制御しているマイクロRNAと呼ばれる小さな核酸分子が、遺伝に深く関与していることを発見した[3]。彼女らは、雄のマウスに過度なストレスを与えることで、そのマウスのマイクロRNAの発現量を乱した。その結果、マイクロRNAの発現量の乱されたマウスは異常行動を示すようになった。このマウスを雌のマウスと交配させ、子マウスを生ませた。驚くべきことに、この子マウスは父親マウスと同様に異常行動を示した。つまり、父親マウスの精子中に存在している異常な発現量のマイクロRNAが子マウスに伝わり、異常な子マウスが誕生した。このことから、父親マウスが獲得した形質が、マイクロRNAを介して子に伝わったといえる。さらに、この現象は孫マウスにも観察された。これらの事実から、これまで遺伝についてはDNAが中心であると考えられており父親の経験した獲得形質が子供や孫に伝わらないとされていたが、マイクロRNAを通じて父親の経験は子孫に伝わることが明らかになった。つまり、このことはラマルクの用不用説を強く支持する根拠となり得る。DNA。
出典[脚注の使い方]^ 文部省日本遺伝学会『 ⇒学術用語集 遺伝学編』(増訂版)丸善、1993年。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 4-621-03805-2。 ⇒http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi。 
^ サダヴァ, デイヴィッドほか著(2010)『カラー図解アメリカ版大学生物学の教科書 第2巻 分子遺伝学 (ブルーバックス)』(石崎泰樹・丸山敬監訳翻訳)講談社.
^ Katharina Gapp, Ali Jawaid, Peter Sarkies, Johannes Bohacek, Pawel Pelczar, Julien Prados, Laurent Farinelli, Eric Miska & Isabelle M Mansuy. Implication of sperm RNAs in transgenerational inheritance of the effects of early trauma in mice. Nature Neuroscience 17, 667?669 (2014).

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