以下は分子遺伝学的検査を受けるべき高リスク者を選択するためのアムステルダム基準である:[27]
アムステルダム基準:
3人以上が家族内で大腸癌の確定診断を得ており、その内のひとりは他のふたりの一度近親者である。
連続した2世代で罹患している。
ひとり以上の50歳未満での大腸癌患者がいる。
家族性大腸ポリポーシスは除外されている。
アムステルダム基準II (新アムステルダム基準): 新アムステルダム基準に沿って診断を下す。切除組織の病理学的診断と遺伝子検査を行う。 HNPCCの治療の第一選択は外科手術である。ステージ1および2を主として、HNPCCに対する5FUを中心としたアジュバント療法については未だ議論の余地がある[28]。 リンチ症候群の大腸癌・直腸癌に対するアスピリンを用いた無作為二重盲検試験の結果は有意でなかったことが報告された[29]。バーンらは先日NEJMにおいてその後の経過を追ったデータを報告した。それによると4年間以上の高用量アスピリン投与は、リンチ症候群患者において新規発症を減少させることを示していた[30]。現在、高用量アスピリンによる危険性を低下させるため、アスピリン投与量の調節が検討されている。 リンチ症候群では,胃,尿路,肝臓、胆管,膵臓,小腸,中枢神経系に腫瘍が発生するリスクも高いが,大腸、子宮体癌や卵巣癌ほど高くはない。欧米では、すべてのあるいは70歳以下すべての、大腸癌や子宮内膜癌に対しMSI検査などのスクリーニング検査を行うことが提唱されている。このユニバーサル・スクリーニングから得られたLynch症候群の割合は2.4?3.7%と報告され、感度と費用対効果に優れているとして推奨されている[32]。 腫瘍に対し、外科切除が行われる他、MSI陽性である結腸直腸癌とそれ以外の悪性腫瘍に対する免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体,ペムブロリズマブ)の効果が認められている[33]。米国ではニボルマブが高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)の転移性大腸癌に適応を取得している[34]。 日本でもHNPCC家系の症例が報告されている[35]。米国では毎年およそ16万人が大腸癌・直腸癌と診断される。HNPCCはこれらのうち2から7%を占めると考えられている。 日本では、これよりも少なく0.15%から2%との報告がある[36]。HNPCC患者の癌発症年齢の平均は44歳であり、非HNPCC患者の大腸癌発症平均年齢 64歳と比べると非常に若い[37]。
3人以上が家族内でHNPCC関連癌の確定診断を得ており、その内のひとりは他のふたりの一度近親者である。
連続した2世代で罹患している。
ひとり以上の50歳未満でのHNPCC関連癌患者がいる。
家族性大腸ポリポーシスは除外されている。
診断
管理
リンチ症候群患者が 70 歳までに大腸癌を発症するリスクは 52?82%であるのに対し,一般集団では 5.5%である[31]。リンチ症候群患者は、各種の癌に対する検診を定期的に受けなければならず、特に大腸癌・直腸癌に対しては毎年大腸内視鏡を受けることが推奨されている。リンチ症候群の女性は、子宮体癌と卵巣癌の発症リスクが高い。リンチ症候群の女性における子宮体癌の発症率は 25?60%であるのに対し,一般集団では 2.7%である。リンチ症候群の女性の卵巣癌発症率は 4?12%であるのに対し,一般集団では 1.6%である。
治療
疫学
脚注[脚注の使い方]
出典^ Kastrinos F, Mukherjee B, Tayob N, et al. (October 2009). “Risk of pancreatic cancer in families with Lynch syndrome”. JAMA 302 (16): 1790?5. doi:10.1001/jama.2009.1529