遠心式圧縮機
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ガスタービン以外では多段式のものも多く存在し、各段[注 2]で水冷による中間冷却が行われる[注 3]。この場合の動力には蒸気タービンや電気モーターが使用され、増速ギアを介して羽根車を駆動する。

航空機エンジン用など圧縮機内の流速が速い場合、圧縮効率の観点から衝撃波の発生を抑える必要があり、流路内のマッハ数は0.8程度に抑え、圧縮機出口の流速は90m/s程度になるように設計する[注 4]。遠心式羽根車(インペラー)の設計においては、3次元CADの登場や5軸加工の進歩などによって流路の3次元化が進み、CFD(数値流体力学)による設計開発が盛んである。
構成
流体要素羽根車流体にトルクを与える要素である。目的に合わせて径向き羽根、後向き羽根が使用される。翼の上にシュラウド(覆い)が付いているものも有る。流路面積は通常、底面では末広がりだが翼の高さは低くなっていくので全体としてそれほど拡散胴にはなっていない。流れは三次元的に曲がっており速度および圧力分布は極めて複雑である。よって効率のよい流れを求めて流れの視覚化技術やCFD解析技術の向上も模索されている。特徴として更に、流れに垂直な方向にも圧力勾配が生じている。これは回転系から見ると「コリオリの力」と「流線曲率の定理」の影響による圧力勾配が生じるためで、その結果翼の両側に圧力差が生じている。羽根車出口の周速は遷音速(せんおんそく)に達しているものもあるが、流速はスリップと呼ばれる現象などの要因によって減速しディフューザー入り口ではマッハ0.8程度の高亜音速になるように設計される。加工方法は切削加工[注 5]、精密鋳造、鍛造などがあり所要の目的に応じて選択され、材料はチタン合金やアルミ合金が使用される。固定流路流れを整流するケーシングやガイド、減速して昇圧するためのディフューザーなどの要素である。流れを転向あるいは変速させる所に翼型を用いるのは、流れの剥離すなわち圧力損失を抑えるためである。その他の流路形状によっても様々な損失が有り精度良く見積もることが重要である。例として吸込み流路、戻り流路、案内羽根、クロスオーバー、円形翼列、案内羽根なしディフューザー、ボリュート(スクロール)などがある。
機械要素

様々なものがある中、特に重要な要素を挙げると、大きな荷重を受ける軸受、漏れを抑える軸封装置、ガイドベーンを動かすリンク機構などがある。
機械構造

圧縮機本体

増速歯車装置

流量制御装置

給油装置

冷却器

その他:必要に応じて脱湿装置など

軸流式圧縮機との比較 (航空用)

第二次世界大戦中より本格的な開発が始まったターボジェットエンジンに関して、その圧縮機に注目するとイギリスは遠心式[注 6]、ドイツは軸流式が中心であった。その後、遠心式はチタン合金の登場や航空技術の進歩とあいまって大きな圧力比が実現できるようになった。以下、航空用の観点からもう一方の代表的な圧縮方式である軸流式圧縮機との比較で記述する。
優位な点

小型化しても効率は
軸流式ほど落ちないので補助動力装置(APU)等の小型の用途に用いられる。

部品点数が少ないので軽量化、コストダウンに適している。また回転数が変動しても効率は軸流式ほど変動せず、同じ圧力比なら長さを短くする事ができるため小型機のエンジンとしては適している。

軸流では問題になりやすいサージングが発生しにくい。

異物の吸入による損傷に強く、翼表面の付着物による性能劣化が穏やかである。

所定の回転数で作動可能な流量範囲が広く、タービンとのマッチングがしやすい。

不利な点

同じ正面面積の軸流式圧縮機より流量が少ない。

圧力比を上げるには多段化する必要があるが、構造上、多段化が難しいため、多くは単段である
[注 7]

多段化せずに圧力比や推力を増やす為に圧縮機の直径を大きくすると空気抵抗が問題となり、回転数を高めると、遠心力の増大に対する強度の問題が生じる。

大型化した際には重量の増加も著しく、大出力エンジンにおいては軸流式との大差が無くなるばかりか、の一点に荷重が集中してバランスを損ねる。さらに大径化によって空気抵抗も増加する[注 8]。このため、小型、軽量化に適した遠心圧縮式の利点を必要としながら、1段のみで圧力比が不足する場合でも、遠心式を多段化するケースは少なく、最終1段のみを遠心式とし、その前に軸流式を数段配置した併用型が多くを占めている[注 9]

流入した気体の流れを途中で90度曲げるので気体がスムーズに流れず、流路で損失が生じる。

羽根車の翼(ベーン)は高圧には強いが、その一方で遠心力によるストレス(金属疲労)が圧縮機の安全性耐用年数の限界となる。

用途

パイプラインにおける天然ガスの圧送

石油化学プラントにおける気体圧送

遠心冷凍機

大型空気圧縮機

空調機器

空気分離装置

ガスタービン

航空機の与圧機補助動力装置(APU)


レシプロ機関ターボ過給機

ロケットエンジンターボポンプ

脚注
出典^ JIS B 0132 2005

注釈^ 機械エネルギーの一部を流体のエネルギーに、更に流体のエネルギーの一部を圧力エネルギーに変換している。
^ 羽根車+ディフューザーで、1段と数える。
^ 冷却による全圧損失が生じる。
^ 入り口ガイドベーンで予回転するのもマッハ数を抑えたり流量を調整するためである。
^ NC旋盤やマシニングセンタなどのCNC工作機械による加工
^ 史上初のジェット旅客機による定期便で使用されたコメットのエンジンは遠心式圧縮機を採用している
^ ヴィッカース ヴァイカウントアームストロング・ホイットワース アーゴシー、ハンドレページ ヘラルド、フォッカー F.27フレンドシップ、YS-11等多くの航空機に搭載されたロールス・ロイス ダートが@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}軸流圧縮エンジンに劣らぬ成功を収めた2段遠心圧縮エンジンとして非常に有名。ダート以外にも2段遠心圧縮を採用したエンジンは小型のものを中心にいくつか存在するが成功作は少ない。3段以上の遠心圧縮を採用した実用機は存在しない模様[独自研究?]。
^ 軸流式であれば多段化や高回転化 で容易に圧力比を上げることができ、いたずらに直径を増す必要はない。
^ ホンダジェットHF120エンジンなど

参考文献

出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。記事の信頼性向上にご協力をお願いいたします。(2023年2月)


Lakshminarayana, B. Fluid Dynamics and Heat Transfer of Turbomachinery. Wiley-Interscience. ISBN 0-471-85546-4 

Wilson, D.G. and Korakianitis, T. (1998). The Design of High-Efficiency Turbomachinery and Gas Turbines (2nd Edition ed.). Prentice Hall. ISBN 0-13-312000-7 

Cumpsty, N.A. (2004). Compressor Aerodynamics. Krieger Publishing. ISBN 1-57524-247-8 

Whitfield, A. and Baines, N.C. (1990). Design of Radial Turbomachines. Longman Scientific & Technical. ISBN 0-470-21667-0 

Saravanamuttoo, H.I.H., Rogers, G.F.C. and Cohen, H. (2001). Gas Turbine Theory (5th Edition ed.). Prentice Hall. ISBN 0-13-015847-X 


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