違法薬物の取引
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DEAがベネズエラから撤退したことにくわえて、2005年にはDEAがコロンビアとの提携を拡大した結果、ベネズエラは麻薬密売人にとって魅力的な国となった[31]。 2008年から2012年の間に、コカイン押収量ランキングでベネズエラでは順位を下げ、2008年には世界第4位だったのが[32] 、2012年には世界第6位になった[33]

2016年11月18日、ナルコソブリノス事件として知られている事件の後、ベネズエラ大統領ニコラスマドゥロの2人の甥は、「一族が権力を維持するために多額の現金を得る」ために米国に薬物を出荷しようとしたとして、有罪となった[34]

ヤヌス・イニシアチブと呼ばれる活動の一環としてアバ・エバン研究所が実施した調査によると、ヒズボラが薬物密輸に使用する主なルートは、コロンビア、ベネズエラ、ブラジルから西アフリカへ入り、そして北アフリカを通ってヨーロッパへと輸送される。このルートは、ヒズボラがコカイン密輸市場で利益を上げ、テロ活動の資金源とされている[35]
西アフリカ

コロンビアとボリビアで生産されたコカインは、西アフリカ(特に、カーボベルデマリベニントーゴナイジェリアカメルーンギニアビサウガーナ)を経由して出荷されるケースが増えている[36]。ナイジェリア、ガーナ、セネガルなどの国では、資金洗浄が頻繁に発生している。

アフリカ経済研究所によると、ギニアビサウでの違法薬物の密輸額は、国のGDPのほぼ2倍にも上るという[36]。不動産が資金洗浄の手段に利用されている。違法に得た資金で住宅を建設し、それが売れると合法な収入となるのである[37]サハラ砂漠を経由して薬物を輸送する陸路は、アルカイダ組織AQIMなどのテロ組織の資金源となっている[38][39]
東部および南部アフリカ

ヘロインは、アフガニスタンからアフリカ東部と南部の国々を経由してヨーロッパとアメリカにますます人身売買されている。この経路は、「南ルート」または「スマック・トラック(英語: smack track)」として知られている。その結果、アフリカの中間国ではヘロインの使用量が急増し、政治的腐敗が進んでいる[40]
アジア

従来、アジアの麻薬は東南アジアや中国南部の主要な商路である南ルートを通っていたが、その中にはかつてのアヘン生産国であるタイイランパキスタンなども含まれている[41]。1990年代以降、特に冷戦の終結後(1991年)に国境が開かれ、貿易協定と関税協定が締結されると、中国・中央アジア・ロシアへとルートが拡大された。そのため、今日では、特にヘロイン取引において多様な麻薬密売ルートが構築されており、新しい市場が継続的に開発され興隆している。大量の麻薬がアジアからヨーロッパに密輸されている。これらの薬の主な供給源は、アフガニスタンを始めとする、いわゆる黄金の三日月地帯を構成する国々である。これらの生産国から、麻薬は西アジアと中央アジアに密輸され、ヨーロッパと米国の目的地に運ばれる[42]。かつて主要な取引ルートであったイランでは、麻薬密売に対する多額の資金を投じた大規模な取締のために、密輸業者が持ち込みをするようになった。イランの国境警察署長は、自国が「コーカサス、特にアゼルバイジャン共和国への違法薬物の密売に対する強力な障壁となっている」と述べている[43]。一方、ミャンマー・ラオス・タイの黄金の三角地帯で生産された薬物は、南ルートを通過してオーストラリア・米国・アジアの市場に供給される[44]

薬物はダークウェブ上のダークネット・マーケットでますますオンラインで取引されるようになっている[45]メキシコの麻薬密売人ZhenliYeGonから押収した2億700万米ドルその他の通貨(2007年)アフガニスタン当局・NATO・DEA合同の「アルバトロス作戦」で押収された、ハシシ

麻薬取引からの利益に関する統計は、その違法性故に不透明である。2007年に英国内務省が発表したオンラインレポートでは、英国の違法薬物市場は40?66億ポンドと推定されている[46]

2009年12月、国連薬物犯罪事務所のアントニオ・マリア・コスタ事務局長は、違法薬物の資金が銀行業界を崩壊から救ったと主張した。同事務局長は、組織犯罪の収益が、2008年に崩壊寸前であった一部銀行が利用できた「唯一の流動的な投資資本」であったという証拠を見たと主張した。同氏は、3520億ドル(2160億ポンド)の麻薬収益の大部分が、結果的に経済システムに吸収されたと述べている。

「多くの場合、薬物からのお金が唯一の流動的な投資資本であった。 2008年下半期には、流動性が銀行システムの主要な問題であったため、流動性資本が重要な要素にとなった…銀行間融資は、薬物から発生した資金によって賄われており、一部の銀行がそのようにして救済された兆候があった」 [47]警察が密輸業者から押収した、ハシシの5cmパッケージ。

コスタは、責任の所在を明らかにするのではなく、問題に対処することを目的としているとして、麻薬のお金を受け取った可能性のある国や銀行を明かさなかった。

市中での麻薬販売は儲かると広く見られているが、 Sudhir Venkateshの調査によると、多くの末端売人の報酬は低い。彼が1990年代にシカゴの「ブラック・ギャングスター・ディサイプル・ネーション」(BGDN)の構成員に密着して行った調査では、1つのギャング(基本的にはフランチャイズ)は、リーダー(J.T.という名前の大学卒業生)、3人の上級幹部、および25人から季節に応じて75人の市中でのセールスマン(「歩兵(英語: foot soldiers)」)で構成されていることが分かった。

彼らがクラック・コカインを6年間販売して得た報酬は、月平均約32,000ドルであった。その使い道は次のようなものだった。まず、BDGNの20人の役員に5,000ドルを渡す(彼らはそのようなギャングを100監督しており、月収約500,000ドルを得る。)。コカインの仕入れに月5,000ドル、その他賃金以外の費用に4,000ドルが支払われる。J.T.は自分の給料に月額8,500ドルを当てる。残りの月額9,500ドルは、幹部には1時間あたり7ドル、歩兵には1時間あたり3.30ドルの賃金を従業員に支払うかたちで分配された。儲かる職業としての麻薬販売の一般的なイメージとは対照的に、多くの構成員は必然的に母親と一緒に暮らしていた。それにもかかわらずギャングには、さらにその4倍の数の、歩兵になることを夢見る無給のメンバーがいた[48]
自由貿易との関係

自由貿易が違法薬物取引の活動の増加と相関関係があるかどうかについては、いくらか議論がある。現在、違法薬物産業の構造と運営は、主に国際分業の観点から説明されている[49]。自由貿易は、違法薬物を輸出に頼らざるを得ない国内生産者に新しい市場を開くことができる。また、国家間の広範な自由貿易は、国境を越えた麻薬取締りや、異なる国の法執行機関間の連携を強化する。しかし、自由貿易はまた、膨大な量の国境を越えた合法の貿易をもたらし、違法な貨物を隠すための十分な機会を提供することにより、違法薬物取引の隠れ蓑となっている。国際自由貿易が合法取引の量を拡大させ続ける一方で、麻薬密売を検知・阻止する能力を著しく低下させている。 1990年代後半に向けて、世界の上位10の港湾では3,360万にも及ぶコンテナが処理された。自由貿易は金融市場の統合を促進し、麻薬密売人に資金洗浄や他の活動への投資の機会を提供してきた。これは、合法的な経済への麻薬の流入を監視する法執行機関の努力を弱める一方で、麻薬業界を助長する。カルテル間の協力は、その活動範囲を遠方の市場に拡大し、地元の法執行機関による検出を回避する能力を強化する。さらに、犯罪組織は、組織毎にプロセスを分担して処理することにより、資金洗浄活動を相互に調整・協力している。ある組織は、資金洗浄の金融取引プロセスを構築し、別の犯罪グループは資金洗浄に用いられる「汚れた」資金を提供する。自由貿易は、貿易と世界的な輸送ネットワークの拡大を促進することにより、さまざまな国の犯罪組織間の協力と同盟の形成を促進する。ラテンアメリカでの麻薬取引は1930年代初頭に出現した[50]。ペルー・ボリビア・チリ・エクアドル・コロンビア・ベネズエラなどのアンデス諸国で大きな成長が見られた。20世紀前半のアンダーグラウンド・マーケットは主にヨーロッパと関係があった。第二次世界大戦後、アンデス諸国では、特にコカインとの取引が拡大を見た。
国別の状況
日本

数十年にわたり日本で最も乱用されている薬物は覚醒剤であるが、錠剤型麻薬であるMDMAなども出回っている[51]

従前の密売は暴力団関係者が中心となっていたが、大都市では外国人密売人も多数暗躍している[51]。2019年中の覚醒剤事犯の総検挙人員の43.5%を、暴力団構成員等が占めている[52]


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