道饗祭
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進幣帛者明妙・照妙・和妙・荒妙尓備奉、御酒者?辺高知、瓺腹満双氐、汁尓母穎尓母、山野尓住物者、毛能和物・毛能荒物、青海原尓住物者、鰭乃広物・鰭乃狭物、奥津海菜・辺津海菜尓至万尓氐、横山之如久置所足?、進宇豆乃幣帛乎平気久聞食氐

八衢尓湯津磐村之如久塞坐氐皇御孫命乎堅磐尓常磐尓齋奉、茂御世尓幸閉奉給止申、又親王等・王等・臣等・百官人等、天下公民尓至万氐尓平久斎給部止、神官天津祝詞乃太祝詞事乎以?、称辞竟奉止申 ? 『延喜式』、道饗祭祝詞
意義・備考

高天之原(たかまのはら)に事始(ことはじ)めて/高天之原尓事始? - 意味:高天原に坐す御祖神等が事始め給いて。
道饗祭は
高天原に起源を発する神事であり、斎行している道饗祭は高天原で事始まった皇祖天神神勅によって行っている、といった内容である[10]。同様の記述が『古史伝』(平田篤胤・著書)にもあり、踏襲の解釈[10]

皇御孫の命と/皇御孫之命止 - 意味:御代知らし食す今上天皇の詔(みことのり)・仰言によって。
本来は「皇御孫命の命」が正しいが、命の漢字が重複するため一つ省いてある[10]。皇御孫は各時代国を治める今上天皇を指し、命は御言の意味でありや仰言である[10]

称辞(たたへごと)竟(を)へ奉る/称辞竟奉 - 意味:祭祀を行い奉る。
祝詞に多く用いる一種の慣用句[11]。「たたへごと」は「たたへことば」のことで賛詞を意味し、「たたへ」は水を湛えるの「たたえ」と同じく満ち足りを表現している、次の「をへ」は極め尽くすの意味である[11]。従って本来の原義は「称辞を竟へ奉る(意味:善言美辞を尽くし、神の威徳を褒め称え奉る)」になるものの、慣用句と頻繁に用いられた結果、単に「祭る」や「幣帛などを奉献する」「神の御名を唱え奉る」の意味にも転じるようになった[11]

大八衢(おおやちまた) - 意味:宮城外にある大道路の衢(ちまた)。
「八」は数字の8ではなく、数が多いことを表す[12]。「衢」は道俣(ちまた)を意味し、辻道のように四方(又はそれ以上)に道が分岐した場所のことである[12]

湯津磐村(ゆついはむら)の如く/湯津磐村之如久 - 意味:神聖な巌群(いわむら)の如く。
「ゆ」は斎庭(ゆにわ、祭場のこと)の「ゆ」と同じ[13]。「ゆつ」は中臣寿詞(なかとみのよごと)に見える由都五百(ゆついほ)篁(たかむら)の「ゆつ」(厳橿(いつかし)[14]の古語)と同じで、神聖や清浄を表し、即ち「神聖な岩の群のように」の意味になる[13]

坐り塞す/塞坐 - 意味:立ち塞がり邪悪を防ぎ給う。
古事記黄泉比良坂の段で、黄泉国から逃げ出す伊弉諾尊(いざなぎのみこと)は「爾ち千引石を其の黄泉比良坂に引き塞(さ)へて」と偉大なる岩石の力によって禍を塞いだが、それと同様の意義である[13]。この場合の「さやる」は塞ぐ、防ぐ、遮る、留める、封じる、などの意味を表す[13]

皇神(すめかみ) - 意味:神の尊称。
神を敬う尊称、または皇室の祖先の神を敬う尊称、皇祖神のことである[15]。ここでは神の尊称を指す。

根国底国(ねのくにそこのくに) - 意味:黄泉国
地下深くや遥か海の向こうにあるとする、死者が行く現世とは別の他界[16]。思想的には罪や厄災が行き来し、祓いの後穢れが流れてゆく場所[16]

麁(あら)び疎(うと)び来(こ)む物/麁備疎備来物 - 意味:朝廷に対して親しまずに荒ぶる禍神(まがかみ[17])や物の怪。
多くの災禍は黄泉国よりやって来ると考えられていたことから、黄泉国から来る禍事(まがごと[注 2][18])のことである[19]。言葉としての「荒び」は和む・穏やかな様子の対義語概念、荒々しい・荒立っている様子の表現で使われている[20]。かつ疎疎しいといった親しまない意味[20]。「疎び」は睦むの対義語で、忌み嫌う表現である[20]。「物」は「もののけ(物の怪・物の気)の「もの」であり、邪神悪霊や妖怪などの類い全般を指す[13]

明妙(あかるたへ)照妙(てるたへ)和妙(にぎたへ)荒妙(あらたへ)/明妙・照妙・和妙・荒妙 - 意味:多彩な織物。
上代、布帛の原料は・ 木綿(ゆう)・が多く、それらによる色々な織物[21]。特に繊維料植物の中で穀(かじ)の樹木樹皮からの織った織物は古代から盛んに用い、これを「たへ(栲)」と呼び原文の「妙(たへ)」に当る[21]。そして布帛の材料となる緒(お)を木綿(ゆう)と言った[注 3]。また穀の木は穀紙(こくし、又は楮紙)の原料となるのこととされる[21]

皇御孫命(すめみまのみこと) - 意味:今上天皇
「皇」は皇神(すめかみ)や天皇命(すめらみこと)と同じ「すめ」[22]。「孫命(みま)」は御真子(みまなご)の意味と御子に親愛を示した表現であり、本来は皇孫瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を指していたが、転じて各時代国を治める今上天皇のことを呼ぶようになった[22]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 律令制で、前1日間を物忌みして行う祭祀。
^ 災厄、禍、災難、不幸な出来事。縁起の悪い不吉な言葉も意味するが、ここでは凶事を指す。
^ 緒(お)とはを含め、繊維によった細く線状のもの。

出典^デジタル大辞泉「みちあえのまつり〔道饗の祭〕」 小学館 2015年07月12日閲覧
^ a b 世界大百科事典 第2版「みちあえのまつり〔道饗祭〕」 平凡社 2015年07月12日閲覧
^ a b 西牟田 2003年、p119
^デジタル大辞泉「しょうし〔小祀〕」 小学館 2015年07月12日閲覧
^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「みちあえのまつり〔道饗祭〕」 日本語版 2015年07月12日閲覧
^ a b 次田 2008年、p378
^ a b c 次田 2008年、p380
^ 甲田 1976年、p229
^ 次田 2008年、p381
^ a b c d 次田 2008年、p383
^ a b c 次田 2008年、p69
^ a bデジタル大辞泉「や‐ちまた〔八衢〕」 小学館 2015年7月18日閲覧
^ a b c d e 次田 2008年、p105
^大辞林 第三版「いつかし〔厳し〕」 三省堂 2015年7月19日閲覧
^大辞林 第三版「すめかみ〔皇神〕」 三省堂 2015年7月19日閲覧
^ a b大辞林 第三版「ねのくに〔根の国〕」 三省堂 2015年7月18日閲覧
^デジタル大辞泉「まが-かみ〔禍神〕」 小学館 2015年7月19日閲覧


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