運転整理
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国土交通省は鉄道各社に、発表等のタイムライン[要曖昧さ回避]を作成するよう要請している。
運用変更

ある列車に使用する車両や乗務員の運用を変更する方法。車両や乗務員の行路は決められているが、特に到着列車の折返し遅れを出さないために、別の車両や乗務員を手配するという形で運用変更することが多い。車両の変更によっては通常時と車両数が変更になるケースも生じる。
段落とし

運転休止と運用変更を組み合わせた特殊例で、ある特定の列車を全区間または部分運休にした上で、その車輌を後続列車に充当する方法。それまで運転されていた後続列車に一瞬にして変わることになり、結果として、その分遅延が回復したり、遅れを「なかったことにする」ことができる。
特発・延長運転

遅延している列車を段落としによって後続の列車に充当させて、ある駅からは別の車両を充当させて時刻通りに運転する方法(ここでの特発は特殊信号発光機の意味ではない)。輸送力が不足している区間に、ほかで運休・運転打ち切りをした車両と乗務員を手配したり、新たに基地から送り込んだりして、臨時列車を運転することもある。既存の列車の運転区間を延長するのも同様の事例である。
運転整理の業務

運転整理の実際の業務は、路線の特性を熟知した指令員が行っているが、それでもなお大変困難な業務となっている。これには以下のような理由が挙げられる。
情報収集が困難
平常時とは異なる状況下で現場は大変混乱しているため、なかなか指令員が必要とする情報が現場から上がってこない。
評価・判断が困難
後述するように、どのような運転整理がよいか評価・判断することが難しい。
問題が複雑
前述したように取りうる運転整理手段は何通りもあり、それを多数組み合わせて運転整理を実施していくため、可能な組み合わせは膨大な数になる。その中から適切な方法を選択するのは大変な作業である。
リアルタイム性
運転整理に取り組んでいる間も列車は実際に走り続けており、手配が遅れると時機を逸してしまう。極めて複雑な問題に対処しなければならないにもかかわらず、短時間で処理しなければならない。
状況が随時変化して予測困難
天候が理由で運転を見合わせている場合、いつ運転を再開できるかの見極めは困難である。大雪になった場合などは、運転不能区間が次々に拡大していくこともあり、そのたびに運転整理計画はやり直しになる。
情報伝達が困難
伝達しなければならないのは
運転士車掌、駅員など多数に上るが、その路線を担当している指令員の数は限られているため、電話や列車無線を使って情報を伝達する業務は煩雑なものとなり、現場が必要としている情報が指令員からなかなか伝達されないことが起きる。

これらの問題に対して、現在様々な対処が進められている。情報収集の問題に対しては、要所にビデオカメラを設置して指令所から駅員や乗務員を煩わせることなく現場の様子を確認できるようにするといった対策がある。情報伝達の問題に対しては、情報機器の発達を利用して、各人の所持する携帯情報端末や運転台に搭載のモニタ装置に必要な指示を一斉に伝送できるようにし、かつ駅員や乗務員が必要とする情報に随時アクセスできるようにするといった方策が考えられている。

情報伝達に関しては、2004年4月にNTTドコモが当時実施していたDoPaを利用して、指令員が作成した指令情報を乗務員に配信するシステムが中央・総武緩行線で稼動していた(2012年3月31日のDoPa廃止に伴い終了)。また2007年8月から山手線においてデジタル列車無線を利用して、運行管理システムに入力された指令内容を直接運転台に表示し、それを乗務員が承認することで実行に移す「通告伝達システム」が稼動しており、2011年までに首都圏各線に導入された[3]
運転整理の評価

どのような運転整理案をよいと評価するかは難しい問題であるとされる。一般には平常運転に回復する時刻が早い方がよいとか、列車の総遅延時間が少ない方がよいと考えられがちであるが、遅れている列車を全て運休にしてしまえば遅延はすぐに回復するため、そのような評価方法ではとにかく運休する方がよいということになってしまう。

運転障害が朝ラッシュ時間帯に起きたのであれば、遅れが長引いたとしてもとにかく列車を運転して輸送力を維持しなければならない。昼過ぎに起きたのであれば大胆に列車を運休してでも夕ラッシュが始まるまでにダイヤを平常運転に回復させたい。夜間帯に起きたのであれば、列車の遅れそのものよりも終電との接続関係や翌日朝の立ち上がりに向けた車両・乗務員運用を考慮しなければならない。このようにどのような運転整理がよいかはケース・バイ・ケースで複雑に変わるため、一概に判断することは難しい。

こうした問題に対処するため、乗客の立場から見た運転整理の評価というアイデアが提示され、乗換接続の喪失や列車運行頻度の低下など、いくつかのパターンに応じて乗客の感じる不満度を点数化して表す方法が考えられている(参考文献参照)。
運転整理のシステム化

運転整理を自動的にコンピュータで行うことは、前述したような要素により難しいものとなっている。状況を限定して他の問題を無視できたとしても、大規模な組み合わせ最適化問題であるため、実用的な時間で解くことは困難である。しかしながら様々な研究が進められており、制約プログラミングの技術を利用してJR東日本新幹線に適用した研究[4]、同様に制約プログラミングを適用したフランス国鉄の研究[5]などがある。
その他

運転整理という言葉は英語では、再スケジューリングということに着目して"rescheduling"と言ったり、運行管理であるということに着目して"dispatching"と言ったりする。
脚注[脚注の使い方]^ 計画運休は「必要」 台風24号対応を検証 - 毎日新聞 2018年10月10日19時26分発信、同日20時35分更新、同日閲覧。
^ “JR西日本の「計画運休」に称賛の声、台風21号から乗客守る”. ニフティニュース. (2018年10月1日). https://news.nifty.com/article/magazine/12126-096787/ 2018年10月2日閲覧。 
^ 『列車ダイヤと運行管理』pp.184 - 185
^ 清水宏之、野末尚次「新しい計画技術と鉄道運行管理 - 制約プログラミングを用いた新幹線運転整理システム - 」 平成14年電気学会産業応用部門全国大会 pp.831-836
^ L. Gely, G. Dessagne, C. Lerin "Modeling Train Re-Scheduling with Optimization and Operational Research Techniques: Results and Applications at SNCF" World Congress on Railway Research 2006 T1.4.2.4

参考文献

(財)鉄道総合技術研究所 運転システム研究室著『鉄道のスケジューリングアルゴリズム』NTS、2005年。
ISBN 4-86043-099-9。 

列車ダイヤ研究会『列車ダイヤと運行管理』成山堂書店、2008年。ISBN 978-4-425-76151-7。 

日本鉄道運転協会 運転協会誌 各号

日本交通公社「列車ダイヤ」 茂原弘明 1983年

関連項目

鉄道運行計画

ダイヤグラム

運用 (鉄道)

停車 (鉄道)

バス代行

振替輸送

運転通告券


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