進化をはっきりと示す化石証拠はダーウィンの時代には乏しかったが、現在では豊富に存在する。まず全体的なパターンとして、単純で祖先的と思われる生物は古い地層からも発見されるが、複雑で現生種に似た生物は新しい地層からしか見つからない[8]。
化石証拠の豊富な生物については、化石を年代順に並べることで、特定の系統の進化を復元することもできる。プランクトンは死骸が古いものから順に連続的に堆積していくため、このような研究が容易であり、有孔虫や放散虫、珪藻の形態が徐々に進化し、時には種分化する過程が確認できる[9][10]。プランクトン以外にも、三葉虫の尾節の数の進化を示す一連の化石などがある[10]。
ミッシング・リンク魚類と両生類の特徴を併せ持つティクターリクの復元画
進化を否定する創造論者は、分類群間の中間的な特徴を示す化石が得られないことを指して「ミッシング・リンク」と呼んでいる。しかし、分類群間の移行段階と考えられる化石は既に一部得られている[11][12]。
分類群の起源となった種そのものを見つけるのは確かに困難だが、その近縁種の化石があれば、進化過程を解明するのに充分である[11]。たとえば爬虫類と鳥類の特徴を併せ持つ化石には有名な始祖鳥に加えて、多数の羽毛恐竜がある[13][14]。クジラの進化過程は、時折水に入る陸生哺乳類であったインドヒウスに始まり、徐々に水中生活に適応していく一連の化石から明らかになっている[15][16]。
現在の魚類と両生類をつなぐ移行化石としてはエウステノプテロン、パンデリクチス、アカンソステガ、イクチオステガなどが知られていたが、さらにパンデリクチスよりも両生類に近く、アカンソステガよりも魚類に近いティクターリクが2006年に発表された[17][18]。無脊椎動物では、祖先的なハチの特徴と、より新しく進化したアリの特徴を併せ持つアケボノアリ
などの例がある[19]。移行化石は次々と発見されており、たとえば2009年には、鰭脚類(アシカやアザラシ)と陸上食肉類との中間的な特徴を示す化石[20]や、真猿類の祖先に近縁だと考えられるダーウィニウスの化石[21]が報告されている[22]。人類が他の類人猿に似た祖先から進化してくる過程を示す化石も見つかっている[23][24]。 生物の分布がいかにして成立してきたかを探る分野である生物地理学は、進化を支持する強力な証拠をもたらす。進化生物学者のコイン
生物地理学から
火山活動などによる海底の隆起によってできた、大陸と繋がったことのない島を海洋島と呼ぶ。ガラパゴス諸島やハワイ諸島、小笠原諸島といった海洋島の在来生物相には海を渡れない両生類、コウモリを除く哺乳類、純淡水魚がほとんど、あるいは全く含まれないのが普通である。それに対して大陸と繋がった歴史のある島には、哺乳類や両生類が普通に分布している。しかも島に棲む生物は、ほとんどの場合最も近い大陸の生物と近縁である。このようなパターンでは、生物が地球の歴史の中でその分布を広げながら進化してきたと考えない限り理解できない[26][27]。
地域が違うと、似たような生息環境であっても異なる生物が分布することがあり、これも進化の証拠となる。同じ砂漠でも新世界にはサボテン科、旧世界にはキョウチクトウ科やトウダイグサ科の乾燥に適応した植物が生息している[28][29]。