連邦大統領_(ドイツ)
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これは、ヴァイマル共和政下におけるヴァイマル憲法ドイツ国大統領には強大な権限が与えられており、特にヒンデンブルク大統領のもとで内閣を次々と任免する不安定な政治が続き、また議会を通さずに決裁できる大統領令を濫用したことで議院内閣制が機能しなくなった結果、ナチス権力掌握を許してしまった歴史への反省が反映されたものである。

国際法上における国家元首としてドイツ連邦共和国を代表する。

連邦議会の臨時召集。

原則として各連邦機関と確認の上、赦免を行うことは可能であるが、単独の権限として恩赦を行うことは許されていない。

特命全権大使の信任を執り行う。

基本法に関する副署・交付・告知を官報を通じて執り行う。

連邦議会に対する連邦首相候補の提案、任命及び罷免。

連邦首相の提案に基づく連邦各担当大臣の任命。

政党法に基づく各政党の財務委員会の召集。

別に法律に定めがない限り、連邦裁判官・連邦の公務員・連邦軍の士官・下士官の任免を行う。

連邦議会での連邦首相に対する指名選挙が3回に及んでも統一見解を得ない場合、再度の連邦議会選挙を実施するために、連邦議会を解散するか、大統領権限によるいわゆる少数与党政権を任命することが可能。

連邦首相に対する信任が否決された場合、連邦首相の提案に基づいて21日以内に連邦議会の解散をすることができるが、これは連邦首相の提案後48時間の時間を置かなければならず、また提案あるいは決定前に新たな連邦首相が議会の過半数の支持で選出された場合には連邦大統領はこの権限を失う(基本法第68条)。

連邦議会と連邦参議院からの統一議案に基づいて、国際法上の国家防衛の必要性ならびにそのステートメントが求められた場合、連邦大統領はこれを官報を以って公告する。

連邦大統領は就任後、連邦政府、並びに各連邦の所属機関に在籍してはならない。

このように、連邦大統領の命令および処分は、連邦首相およびその事項を管轄する連邦政府大臣の副署があってはじめて有効となるケースが多いが、過去には、その議会決定を基本法に照らし正しくない見解であるとして、大統領権限によって署名を拒否した例が8回ある。これは、政治的な意味での拒否権というよりも、大統領に与えられた使命として、法の厳格化に照らし合わせた議会決議案の再確認による結果である。

連邦大統領が過去に議会決議への署名を拒否した例成立年案件名連邦大統領事由
1951年所得税及び法人税に関する法案テオドール・ホイス連邦参議院で未議決
1960年商品取引に関する法案ハインリヒ・リュプケ労働の自由を束縛する
1969年エンジニアに関する法律グスタフ・ハイネマン法の考え方を遵守していない
1970年建築家に関する法律グスタフ・ハイネマン法の考え方を遵守していない
1976年徴兵免除の弾力化に関する法案ヴァルター・シェール連邦参議院で未議決
1991年航空法の改正リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー現状の法制は改正にあって不整備
2006年航空安全法の新たな規定ホルスト・ケーラー違憲の疑い(基本法第87条1項に抵触)
2006年消費者への情報提供に関する法案ホルスト・ケーラー違憲の疑い(基本法第84条1項7号に抵触)

特権事項

大統領在任中は不逮捕特権を有し、また証人としても裁判の一審には召喚されることはないが、必要に応じて自宅でのヒアリングに応じる。任期中の大統領を起訴し、有罪判決を問うためには連邦議会議員の4分の1にあたる議員あるいは、連邦議会か連邦参議院いずれかの議員総数の3分の2が同意した上で連邦裁判所にその真意を問うた上で、基本法61条に基づいた大統領の解任がなされることが前提条件となる。

2012年クリスティアン・ヴルフの辞任は、彼に対する解任手続開始をニーダーザクセン州検察庁が連邦議会に申し立てたことがきっかけとなった[1]
職務と政治的な立場

冒頭に記した通り、連邦大統領は政治的に中立的な立場にあり、そのメッセージは主に演説の機会等を経て国民に伝えられる。いかなる政党にも傾倒することなく、またその便宜供与を行わないことが求められている。また、大統領の任期を終えてから政治家としての職務に就いた前例はないが、これは不文律の規定である。

ホルスト・ケーラーは歴代の連邦大統領の中で唯一、国際通貨基金 (IMF) 専務理事を務めたというドイツ国外で国際的組織の要職を経験した人物だった。連邦大統領は、ドイツ赤十字やドイツ海難救助協会など、幅広く公的利益に貢献する団体で代表的な後援者という立場に就くことが通例とされている。


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