連邦倒産法第11章
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第11章手続が債権者によって申し立てられた等の一定の場合を除き、債務者はいつでも第11章手続を第7章手続に移行(convert)することができる。利害関係者が、正当な事由(cause)を示して申し立てた場合には、裁判所は第7章手続に移行したり、第11章基づく再建手続の申立を却下(dismiss)することができる。正当な事由とは、たとえば、再建の合理的可能性がないこと、再建案の実行可能性がないこと、債務者の行為により債権者の権利が害されること等がある(1112条)[3]
事業の継続

第11章手続は、倒産申立により債務者の事業を停止させることなく、かえって事業を継続しながら債務者の再建を目指すものである。したがって、利害関係者の申立により裁判所が事業の継続を禁止しない限り、管財人(上記のとおり通常は占有債務者)が事業を継続して行う(1108条)。以下、事業の継続に関係の深い規定について解説する。なお、下記の諸規定は、第7章手続において一定の範囲内で事業の継続が認められる場合にも適用される。
財団財産の処分

管財人は、原則として、債務者の通常の商行為(ordinary course of business)の範囲内で財団財産を自由に販売・リース・使用することができる(363条(c)項)。通常の商行為をこえる場合には、裁判所の許可を得なければ処分の実行はできない(363条(b)項)。
資金調達

通常の商行為内の借入であれば、管財人は原則として自由に無担保による借入をすることができる。借入が通常の商行為の範囲を超える場合には裁判所の許可を必要とする。いずれの場合にも借入債務は共益費用(administrative expense)として、優先的返済の対象となる(364条(a)項及び(b)項)。

上記のような借入ができない場合には、管財人は裁判所の許可を得て、共益費用より優先的弁済をするという条件で無担保の借入をしたり、既に担保に供されていない財団財産を担保として借入をしたり、既に担保に供されている財産に劣後担保権を設定して借入をすることができる(364条(c)項)。さらにこのような借り入れも出来ない場合には、既存の担保権に優先する担保権を設定しての借入が許可されることもある。この場合、既存の担保権者に対して適切な権利保護の措置(adequate protection)をとる必要がある(364条(d)項)。

このように、第11章に基づく債務者に対して、法の規定により優遇される貸付を行うことを、通常の場合借入人が占有債務者(DIP)であることから、DIPファイナンシング(DIP financing)と呼ぶ。
未履行契約に関する管財人の選択権

倒産申立時点で、債務者はいろいろな契約上の義務を負っている。製造業を例にとって見ると、製品の供給契約や原材料の購入義務、工場の賃貸契約や機械のリース契約等が考えられる。この中から、再建のために負担となるものを切り捨て、事業の継続のために必要なものを維持するために、管財人はこのような諸契約を取捨選択する権利を有する(365条)。
選択権一般

管財人は、破産申立時点で未履行の契約(executory contract)や残余期間のあるリース(unexpired lease)を裁判所の許可を得て引受ける(assume)か、第三者に譲渡する(assign)か、あるいは拒絶する(reject)かの選択権を有する。未履行の契約とは、倒産申立の時点で双方の当事者の義務履行されておらず、その義務の不履行が契約の重大な違反を構成するものとされている。なお、下記の説明において、「契約」というときには、未履行の契約と残余期間のあるリースの双方を指すこととする。

このような選択権は管財人(債務者)側のみが有する。契約当事者の一方が倒産状態になったり倒産申立をした場合には相手方当事者は契約を一方的に解除できる旨を定めている契約条項(ipso facto clause)は、連邦倒産法上無効とされる(365条(e)項(1)号)。また、譲渡を禁止する条項や譲渡によって契約が終了する旨を規定する条項も無効である(365条(f)項)。

管財人は、再建計画承認前であればいつでも選択権を行使できるが、契約相手方は、破産裁判所に対して選択権行使に時間的制限を設けるよう請求できる。この場合裁判所が設定した制限期間内に選択権を行使をしなかった場合には、契約は拒絶されたとみなされる(365条(d)項)。

上記の原則には、債務者が権利許諾者である知的財産権のライセンス契約に関する重要な例外がある(365条(n)項)。被許諾者は、管財人が契約を拒絶した場合でも、ライセンスの対象となる権利の行使の継続を選択することができる。ただし、ライセンス契約に定められた債務者の付随的義務(サポートサービス等)の履行を請求することはできない。
契約の拒絶

管財人が契約を拒絶すれば、債務者は将来の履行義務から解放される。ただし、拒絶により債務者は契約違反に陥り、これにより損害を被った契約相手方の損害賠償請求権は、倒産申立直前に債務者が契約不履行を犯した場合の損害賠償請求権と同様に(つまり、一般債権として)取り扱われる(365(g)(1))。
契約の引受

管財人が契約を引受けた場合には、契約相手方は、引続き契約を履行しなければならない。ただし、既に債務者側に契約違反があった場合には、既発生の損害を賠償したり、将来の履行に関する適切な権利保護の措置を提供しなければ、引受けることはできない(365条(b)項)。
契約の譲渡

管財人は、契約を譲渡する前に当該契約を引受けなければならず、契約の譲受人による将来の履行に関する適切な権利保護の措置を提供する必要がある(365条(f)項)。
再建計画

第11章手続の主要な目的は、再建計画(reorganization plan)により債権者や債務者の株主の権利を変更した上で、計画に基づいて、債務者が債務を返済し事業を再建することにある。
再建計画の提出

倒産手続の開始が宣言されてから120日間は、債務者のみが再建計画を提出できる(1121条(b)項)。債務者が上記120日間の間に再建計画を提出しなかった場合には、他の利害関係者(債権者・債権者委員会・株主等)も再建計画を提出できる(1121条(c)項)。再建計画の中核をなすのは、債権者の権利の取扱い(金額や支払方法の変更等)である。

各債権者はその債権の内容・性質により、いくつかのクラス(classes)に振り分けられる。返済順位の優劣等を考慮しながら、実質的に同等な(substantially similar)債権を有する債権者は同一のクラスに属することとなる(1122条(a)項)。

次にクラスごとに債権の取扱いを定める。たとえば、あるクラスは債権40パーセント減額かつ3年の月賦返済、それより優先する別のクラスは20パーセント減額の即時支払いといった具合である。同一クラスの債権者は同一に取扱わなければならない(1123(a)条(4)項)。たとえば、ある債権を分割払いにしたときに、同一クラスの他の債権を一括払いとすることは許されないし、同一クラスにおける債権の減額率は同一でなければならない。
再建計画の承認と認可

提出された再建計画はまず、各クラスにおいて、債権者数にして過半数かつ債権額にして3分の2以上の賛成により承認(acceptance)されなければならない(1126条)。


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