連帯債務
[Wikipedia|▼Menu]
債権者に対して債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる(2項)。2017年の改正前の民法では「前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる。」とされていた[3]。しかし、他の連帯債務者の反対債権を自働債権として債権者に相殺権を援用できるとするのは、他人の財産権の処分で過剰な介入であると批判され、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で他の連帯債務者は債権者に対し債務の履行を拒むことができるにとどめる履行拒絶権に改められた[1][3]


混同(440条(旧438条))

連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなされる。

2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では、混同も相対効にしたほうが、不法行為責任が競合する場合の責任保険との関係で被害者保護に資するという意見があったが絶対効が維持され条数変更のみとなった[3]


連帯債務の求償関係
連帯債務者間の求償権

連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する(442条1項)。

2017年の改正前の民法では自己の負担部分を超えない弁済等の場合の求償について明らかではなかったが、判例(大判大正6年5月3日民録3輯863頁)や通説は弁済が自己の負担部分を超えない場合でも各自の負担部分の割合で求償できるとしていた[2][1][3][4]

2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で、連帯債務者の一人が自己の負担部分を超えない範囲で弁済し共同の免責を得た場合にも、他の連帯債務者に対して各自の負担割合に応じて求償できることが明文化された[2]。なお不真正連帯債務については自己の負担部分を超えて賠償したときに初めて求償ができるとした判例があったが(最判昭63・7・1)、改正後の442条は不真正連帯債務にも適用されると解されている[3]

求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する(442条2項)。
通知義務

債権者への弁済など自己の財産をもって共同の免責を得る場合、他に連帯債務者があることを知っているときは、その弁済などの前後での他の連帯債務者への通知を怠ると求償に制限を受ける(443条)。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で他の連帯債務者があることを知っている場合に限ることが明示された[3][4]

他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の一人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる(443条1項前段)。

事前の通知義務を定めたもので、他の連帯債務者による二重払いを防ぎ、相殺権などの行使の機会を保証する規定で、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)でも基本的に維持された[3]。ただし通知の内容は「債権者から履行の請求を受けたこと」 から「弁済その他自己の財産をもって共同の免責を得ること」に変更された[3]

相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、その連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる(443条1項後段)。


弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が、他の連帯債務者があることを知りながらその免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済その他自己の財産をもって免責を得るための行為をしたときは、当該他の連帯債務者は、その免責を得るための行為を有効であったものとみなすことができる(443条2項)。

事後の通知義務を定めたもので、通知を受けなかったために債権者に善意で二重払いしてしまった連帯債務者を保護する規定で、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)でも基本的に維持された[3]


償還をする資力のない者の負担部分の分担

連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する(444条本文、過失ある求償者について同条ただし書)。
連帯債務者の一人との間の免除・時効完成

連帯債務者の一人に債務の免除や時効が完成があった場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し求償権を行使することができる(445条)。
連帯の免除

連帯の免除(れんたいのめんじょ)とは、債権者が連帯債務者の連帯債務を負担部分までの分割債務とすることをいい、連帯債務者の一部を対象として行う相対的連帯免除と連帯債務者全員を対象として行う絶対的連帯免除がある。

2017年の改正前の旧445条は連帯の免除(相対的連帯免除)について定め、債権者が連帯債務者の一人の連帯を免除した場面で、他の一人の連帯債務者が無資力だった場合には債権者自らが分担するとしていた。しかし、連帯債務者の一人の連帯を免除したからといって他の連帯債務者が無資力の場合の負担を債権者が分担する意思を表示したとは認めがたく、債権者の意思に反するという批判があり2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で削除された(旧445条と新445条は無関係)[3]
不真正連帯債務

各債務者が全額についての義務を負うが、債務者間に緊密な関係がなく、弁済及びこれと同視し得る事由を除いて、一債務者に生じた事由が他の債務者に影響しないものを、不真正連帯債務(ふしんせいれんたいさいむ)という[3]。不真正連帯債務には負担部分がなく求償関係が当然には生じない性質のものとして連帯債務と区別されてきた[3]

法人不法行為法人が損害賠償債務(旧民法44条「(現)一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条参照」)を負う場合、理事個人も損害賠償債務(709条)を負う(大審院昭和7年5月27日判決・民集11巻1069頁)。この法人の債務と理事個人の債務は、不真正連帯債務の関係に立つとされる。

使用者責任被用者の不法行為による使用者の賠償債務(715条)と、被用者の賠償債務(709条)は不真正連帯債務の関係にあるとされる。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:29 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef