日本におけるデータ放送の起源は1985年に開始されたテレビジョン文字多重放送に見ることができる。
1980年代に日本も可変フォーマット方式の文字多重放送のコード伝送方式を開発[1]。この方式は1986年5月のCCIRでの国際標準化でD方式(標準化を行った電波技術審議会の頭文字)として国際勧告方式の一つとなった[1]。
文字多重放送ではコード化された文字や図形、電子音で構成されたデータをテレビ電波に重畳させ、受信機でデータを処理し元の画面と音に戻す。法律上において文字多重放送とデータ放送は区別されるが、デジタルデータの放送という点では共通している。
この時期は文字多重放送の他、衛星放送や多サービスを目的とした都市型ケーブルテレビ、キャプテンシステムなどのニューメディアが注目されており、データ放送もそれらの1つとして構想された。 1989年、NHK衛星第2テレビジョン(BS2)で、毎週日曜深夜(月曜未明)の基本午前1時から5時までに「技術実験時間」と称し、一般向けの営業放送を休止したうえで、ハイビジョン、ファクシミリ放送などとともに、次世代放送サービスのテスト放送が行われた。 法律上のデータ放送は1995年にBSアナログ放送にて開始されたスーパーファミコンアワーが初となる。スーパーファミコンに専用機器サテラビューを接続し受信端末とするもので、身近かつ安価なコンピュータとして普及したゲーム機を活用した新メディアとして注目を集めた。 翌1996年には地上アナログテレビ電波を利用したデータ放送として、専用端末へ文字ニュースを配信するE-NEWS、テレビ番組との連動と双方向通信を特徴としたITビジョンが開始される。 1997年には同じく地上アナログテレビ電波を利用し、パソコンを対象としたADAMS、ビットキャストがそれぞれ開始された。いずれも通信回線に頼らないデータ配信、テレビ番組とインターネットとの連携を特徴とした。 1998年には衛星デジタル多チャンネル放送スカイパーフェクTV!にてパソコン向けにプログラムを配信するスカイパーフェクPC!が開始された。競合企業のディレクTVはITビジョンと同種のサービスとなるインタラクTVを開始する。全てのディレクTV受信機にはあらかじめこの機能が備わっており、簡単に利用できる付加サービスであることを訴求してスカイパーフェクPC!との差別化を図った。 1990年代中盤から後半にかけては多種多様な受信端末、媒体にてデータ放送が実施された。これらのほとんどは無料で放送されたが、サービスごとに別々の受信機が必要となること、導入に費用が掛かることから普及はしなかった。さらにコンテンツ不足、時間経過による技術・受信機の陳腐化といった問題を抱えることとなり、2000年代に入るとEPGなど最低限のサービスを残し終了した。中には事業化が見込めないと早期に判断され、開始からわずか数年で終了したサービスもある。 2000年にはISDB方式によるBSデジタル放送が開始され、データ放送もその特徴の1つとして盛んに持ち上げられた。受信機には新たにLAN端子が設けられ、インターネット経由でのデータ送受信を可能とした。テレビ、ラジオ各事業者がそれぞれデータ放送を開始した他、独立データ放送を専門に行う事業者も登場した。 データ放送は無料で提供されており受信機以外に特別な機材は必要ない。操作もリモコンのカーソルキー、決定キーの利用を主とし、4つの色ボタンと、1-10の数字ボタン(0は10のボタン)を補助的に利用する簡単なものである。 テレビチャンネルではニュースや天気予報、番組案内のほか、番組と連動させたアンケートやクイズ、ゲームなどの視聴者参加型番組が開始され、ラジオチャンネルでは音楽に沿った画像や曲目などの補完情報をテレビ画面へ表示した。この他にEPGや受信機の改善を行うプログラムもデータ放送により供給される。各局とも見聞きするだけの放送から使う、参加する放送であることを訴えた。 独立データ放送チャンネルでは主に文字と静止画による情報、ニュースやゲーム、ショッピング等のコンテンツが提供された。なお、ほとんどのチャンネルではBGMとして音楽を放送しており、番組によっては帯域の制約上低画質ながら動画も放送されるなど、境界は曖昧となっていた。 2002年にはBSデジタル放送と受信機を共用した110度CSデジタル放送プラット・ワンとスカイパーフェクTV!2(いずれも現・スカパー!)がそれぞれ開始され、有料のデータ放送チャンネルも登場した。プラット・ワンでは教育資格番組や懸賞情報、ニュース、さらに専用受信機を利用するepなど主に有料チャンネルが、スカイパーフェクTV!2ではゲームや音楽情報、CMとの連動を目的とした新サービスを提供する無料チャンネルが設けられた。 2003年には地上デジタルテレビジョン放送が開始され、BSデジタル放送と同様にニュースや天気予報、番組案内などの補完データ放送が各チャンネルにて実施されたが、アナログ放送との兼ね合いもあり活用法は限定された。 2000年代中盤にはデータ放送対応のデジタルテレビが普及する一方、パソコンや携帯電話がそれ以上に普及したため、視聴者参加型番組もそちらでの参加を呼びかけるようになった。 かねてから不振が続いた110度衛星放送だが、110度CSデジタル放送については、独立データ放送チャンネルは2003年から2004年にかけてテレビ放送への転換や終了が続き、20程度あったチャンネルも急減少した。 BSデジタル放送でも2004年にデータ放送事業者メディアサーブが撤退し、以降撤退する事業者が相次いだ。いずれの局も予想に反したデジタル放送普及の遅れ、普及が進んだインターネットとの競合、広告収入が得られず経営が成り立たないなどの問題点を終了の理由として挙げている。テレビチャンネルに付随して行われるデータ放送はデジタル放送の普及と共に認知されていったが、独立データ放送に関しては、コンテンツとして成立しなかった。 2009年からは、BSデジタル放送ではウェザーニュースのみが唯一単営独立データ放送を行っていた。双方向機能(LAN回線のみ可)を使用して、同chで放送されているSOLiVE24の番組と連動した電子投票機能(ソラボタン)を開始、2010年には更にSOLiVE24で実施されているチャット(ソラチャット)の閲覧や、全国各地の天気予報や気象レーダー画面などウェザーニューズWEBサイトで提供されているコンテンツをデータ放送でも見られるようにするなどしていたが(一部地域および時間帯でのサイマル放送を除く)、2016年9月30日をもってBSデータ放送を終了しネット配信のみでの放送に移行した[2]。
1990年代 データ放送開始
2000年代初頭 ISDB方式によるデジタル放送開始
2000年代中盤以降 淘汰
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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