「片腕の男」の義手の資料を集めるためにキンブルが潜りこむ病院[31]は、本作の1年後に放送が開始されたテレビドラマ『ER緊急救命室』(以下、ER)の舞台にもなっている、シカゴのクック郡病院[32][33]である。また、ジュリアン・ムーアが演じたイーストマン医師とのやり取りや、ERの第1話でも描かれるシカゴの聖パトリックの祝日(3月17日)[34]も本作での見どころの一つになっている。共に配給元がワーナー・ブラザースである関係とみられる。
また、本作の出演を依頼された事があるケビン・コスナーは、『コーリング』でキンブルと同じシカゴ記念病院に勤める緊急救命室・部長ダロウ医師を演じた。 本作ではジェラードの役職がテレビドラマ版とは異なり、所轄の警察の警部(警部補)から連邦保安官補へと変更されているが、これはジェラードが逃亡するキンブルを追って広範囲の捜査を進めるという状況に説得力を持たせるための変更であると言われている[3]。ただし現実における連邦保安官とは、連邦司法制度の保護(連邦判事・検事の警護、連邦裁判所の警備、連邦刑務所の管理、証人保護プログラムの実施等)をその所掌事務とする司法省の一部局(連邦保安局)の構成員であり、州法上の殺人罪で死刑判決を受け、郡刑務所に移送中の囚人が逃走したとしても、現実には捜査権を持たない(これを強行すればまさに越権行為であり、連邦―州間の行政訴訟問題へと発展しかねない)。あくまで、逃走現場を所轄する地元警察・保安官事務所及び、州警察が排他的な管轄権を行使することとなる。本作品の中で登場する連邦保安官補たちはイリノイ州シカゴ支局連邦保安官事務所の捜査官であり、逃亡者を逮捕する任務を帯びている者として当然の権利を行使したまでであり、アメリカ全土に逃げるキンブルを追いかけるのは越権行為には当たらない。 映画の内容を基にしたノベライズ版が出版されており、日本では早川書房から日本語訳が出版されている。概ね映画に沿って作中の出来事を文章化したものとなっているが、映画では台詞に出して明言されなかった、登場人物たちの性格についても細かく描写されている[3]。また、ノベライズ版独自に追加されたり省かれたりするなど、映画とは若干描写の異なる場面もある。
現実との差異
その他
映画のラストシーン[35]でキンブルを車に乗せたジェラードが、部下のプールに“Where is that thing?”(例の物を 直訳では「アレはどこにある?」)[36]と言って持って来させたのは冷却パックである。
それらしい動作をしているだけで具体的に説明する台詞は無いが、日本では早川書房から出版されているノベライズ版では地の文で「アイス・パック」と描写されている[37]。テレビ朝日の吹替え版では「アイスパックをくれ」という台詞になっていた。テレビ版の翻訳はたかしまちせこ。ジェラード役は洋画翻訳の経験がある小林清志である。
脚本の初期稿ではキンブルがジェラードの妻を医療ミスで死なし、ジェラードが義手の男を雇って復讐するというストーリーであった。
ジェラードが部下のニューマンに、頭髪が後ろで縛ってある髪型であったことに対し、「ポニーテールでもなめられるなよ」という場面がある[38]。当時この髪型はマイナーであり、男性がする場合軟弱なイメージが一般的であった。
ジェラードを演じるトミー・リー・ジョーンズは「常に思慮深いジェラードが人が多くいる場所で発砲するのは考えにくい」と主張し、裁判所での発砲シーンの撮影を拒んだ。最終的にデイヴィス監督の説得でジョーンズが折れたが一時的に撮影が滞った。
キンブルがパレードに紛れ込むシーンは台本に無かったが、シカゴ出身のアンドリュー・デイヴィス監督の発案で急きょ市長の許可を得て撮影が行われた。リハーサルをせず、ステディカムを持ったカメラマンがパレードの中を走り回るハリソン・フォードとトミー・L・ジョーンズを追いかけた[39]。
護送バスと列車の事故のシーンは実物と模型を巧みに使い分けている。列車とバスの衝突や貨物列車が脱線転覆するシーンは、ノースカロライナ州西部ディルズボロのグレートスモーキーマウンテンズ鉄道が所有する土地で実物を使って撮影が行われた。ミニチュア模型を製作するよりも2万ドルの中古機関車を使うほうが低コストだと判断された。大破したバスと列車は現在(2023年)もその場所に残されており、グレートスモーキーマウンテンズ鉄道は今後も保存する予定だという[40]。貨物車が爆発するシーンはミニチュア模型である。
中国で40年ぶりに一般公開されたアメリカ映画となった。低迷していた中国の映画館で大ヒットを記録し、映画館の前にはチケットを2倍の値で売るダフ屋が現れた[41]。
関連商品
ノベライズ
J・M・ディラード
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 「特攻野郎Aチーム」もこの範疇に入る
^ 最初に持ち歩いていたグロック22は、バークレー・ダムでキンブルと初めて対峙した際、キンブルに奪われており[24]、取り戻せたか否かは曖昧な描写になっている。ノベライズ版ではキンブルに持ち去られた後にダムの下流に捨てられ、後に同じ型の銃を支給されたという描写になっている[23]。
出典^ “The Fugitive (1993)
^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)524頁
^ a b c 入江真佐子「訳者あとがき」『逃亡者』J・M・ディラード