近代五種競技
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その背景には、近代五種競技で使用される競技施設は、陸上競技として行われていないクロスカントリー走を除けば他の個別種目との併用がされており、この競技だけを削減したところで削減できる施設がほぼ皆無であり、むしろ開催期間中の施設の効率的利用の観点からは有効であることや、個人競技であることなど、削減議論の俎上に上げられた他種目と比較しての設備投資・参加人数などからの競技削減で想定されるメリットの少なさや、上述した事情から競技自体の存続に関わること、なによりクーベルタン男爵の考案・提唱によって創始された、近代オリンピックに由緒の深いものであったことから一部の変更にとどまっていた。しかし商業化した近年のオリンピックではテレビ視聴率が重要となってるため、馬の抽選など競技の公平性を欠く要素や、競技そのものの人気低迷による国際オリンピック委員会(IOC)からの圧力、更に後述の東京オリンピックでの騒動が契機となり、UIPMは存続のために馬術の除外という大幅な変更を行うこととなった[5]

日本国内においては、射撃の用具を、費用が少なく規制が無いBB弾を使用するスポーツピストルに置き換え、水泳、ランニングと合わせた3種目を「近代三種」として普及、広報、選手発掘を行っている[9]。さらに、国体種目化の流れや、大学を中心とした学生連合の競技活動が活発化し「近代三種」の競技人口は増加したが、太田捺のように親戚に乗馬クラブの経営者がいるという恵まれた環境がなければ馬術の訓練が難しく、自衛官以外には宮なつ美などの警察官か、才藤歩夢のような他競技との兼業であり、2021年時点での選手数は50人という状態である[7]

2021年に日本で開催された東京オリンピックでは、2日目に行われる全種目を東京スタジアムにおいて実施された。オリンピックで2日目の全種目を同一会場で実施するのは史上初[10]。これにより、観客は移動することなく5種目を観戦できる触れ込みであったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の影響により無観客での開催となった[11]。初日のフェンシングランキングラウンドは、東京スタジアムに隣接する武蔵野の森総合スポーツプラザにて実施された。

なお、東京オリンピックでの競技(馬術)開催中にドイツ代表のアニカ・シュロイ(英語版)が割り当てられた馬の扱いに苦慮した際、コーチのキム・ライスナー(英語版)が馬を殴るシーンが中継映像を通じて全世界に放映されたため、問題となり、動物愛護団体がIOCに対して抗議する事態となった。この騒動で近代五種競技から馬術が除外されるのは決定的となった[5][12][13]。詳細は「2020年東京オリンピック#動物愛護」を参照

2021年11月4日、UIPMは、2028年ロサンゼルスオリンピックから馬術を除外し、新種目の導入を検討することを発表した。一方、この決定を受けて選手ら650人が馬術の除外に反対、UIPM役員に対し辞任を求める文書を提出した[14]。馬術除外に反対する組織「ペンタスロン・ユナイテッド」によるアンケートでは、選手の馬術が無くなれば競技をやめる選手が大半だったとしている[15]

代わって2028年大会以降の新種目は自転車によるクロスカントリーなどを検討したが[16]トライアスロンとの兼ね合いもあり、選手による「障害物レース」を軸に検討されることとなった[17]ロイター通信によると、日本の番組企画『SASUKE』から派生した「忍者競争」と呼ばれる立体的な障害コースを進む競技や、自然環境を進みながらゴールを目指す「アドベンチャーレース」など、既存の競技と重複せず世界的に人気が高い種目が有力視されていると報じている[17][18]

UIPMは2022年6月27日と28日にトルコアンカラにて行われる近代五種ワールドカップ・ファイナルなどにおいて、障害物レースのテストを行った。『SASUKE』の制作局であるTBSテレビも番組セットの提供などで協力した[19]

その後、2022年11月に行われたUIPMのオンライン総会において、世界各国の連盟代表者による投票を行った結果、全体の約83%の賛成を得たとして、障害物レースへの変更をIOCに提案することを発表[20][21]。2023年10月に行われたIOC総会にて、UIPMから出されていた変更申請が認められた[22][23]。なお、変更されるのはオリンピックだけで、従来通り馬術を含めた大会も引き続き行われる予定としている[24]
脚注[脚注の使い方]^ a b c d “JOC - 競技紹介:近代五種”. JOC - 競技紹介:近代五種. 2022年5月7日閲覧。
^ “見どころ5倍 知らないと絶対損する「近代五種」”. 読売新聞. (2021年8月4日). https://www.yomiuri.co.jp/olympic/2020/20191216-OYT1T50178/ 2021年8月7日閲覧。 
^ “近代五種から馬術を除外へ 28年五輪視野に新種目”. 共同通信 (2021年11月5日). 2022年5月3日閲覧。
^ 日本放送協会 (2022年5月3日). “近代五種 「障害物レース」試験導入 馬術を除外し新種目候補”. NHKニュース. 2022年5月3日閲覧。


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