農薬
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アメリカ合衆国では家庭用・農業用・工業用を問わず『殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法』(Federal Insecticide, Fungicide, and Rodenticide Act: FIFRA)等による規制がある[13]。農薬登録の際に同法で必要になるデータには、必須のものと条件付きで必要になるものがあるが物理化学的性質、残余物の性状、分解性、移動性、野外での散逸性、野生生物への影響などである[12]

アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)は農薬を一般用農薬(General Use Pesticide)と制限使用農薬(Restricted Use Pesticide)に分類しており、制限使用農薬は認証使用者またはその直接監督下でのみ使用が認められる[12]
日本
法規制

農薬取締法により、農薬の製造者または輸入者には登録の、販売者には届出の制度が設けられている。さらに毒物及び劇物取締法により、毒物または劇物に該当する農薬の場合、別途それぞれに製造業、輸入業、農業用品目販売業の登録、帳簿の整備と5年間の保管が、購入には印鑑身分証明書が必要となる。収穫後に用いる防かび剤、いわゆる「ポストハーベスト農薬」は、日本では農薬ではなく食品添加物として扱う。また、ハエやカといった衛生害虫を駆除する薬剤は「農薬と同じ成分を含む薬剤」として薬事法の規制の対象に入り、農薬とは見なされない[1]

農薬取締法では次のように定義されている。

第1条の2 「農薬」とは、農作物(樹木及び農林産物を含む。以下「農作物等」という)を害する薗、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウイルス(以下「病害虫」)の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤[注釈 2] 及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう。

2 前項の防除のために利用される天敵は、この法律の適用については、これを農薬とみなす。

農薬の定義は使用目的(農作物の保護)によってなされており、合成品か天然物かというような物質の起源でなされている訳ではない。そのため、害虫の天敵はいわゆる薬品とは違うが、便宜上、農薬取締法ではこれらも生物農薬として農薬の範疇に含めている。

1999年平成11年)に施行された持続性の高い農業生産方式の促進に関する法律によって総合的病害虫管理(IPM)の導入が進められており、農薬への依存を最小限にする取り組みが行われている[1]2002年(平成14年)12月に農薬取締法が改正され、農薬の違法使用の罰則が強化されるに伴い、農林水産省の指定を受ければ、農薬登録に必要な試験(防除効果、人体に対する安全性、環境への影響評価等)を免除される特定農薬制度が新設され、重曹食酢、そして地場で生息する天敵が指定された。

農薬の種類農薬の種類説明使用可能
登録農薬所定の毒性試験結果などを提出して農林水産大臣の登録を受けた農薬安全使用基準に従って使用可能
特定農薬農薬登録の必要ないほど安全性が明らかな農薬として、農林水産大臣が指定した農薬使用可能
特定農薬
(指定保留中)特定農薬の検討資材リストにあるが、農薬としての効能が明らかでないもの農薬効果を謳って販売すること禁止、使用者が自分の判断と責任で使うことは可能[14]
無登録農薬登録農薬でも特定農薬でもない農薬販売禁止、使用禁止

2005年(平成17年)8月の農業資材審議会と中央環境審議会合同の特定農薬を検討する会合において特定農薬に該当するかどうかの試験検討結果が報告され、コーヒー緑茶牛乳焼酎には農薬としては効果がないこと、木酢液は効果はあるが使用者に対し危険の可能性があることが報告された[15]
残留農薬基準

毒性・残留試験などに基づいて各農薬・農産物ごとに許される最大残留濃度[注釈 3]が決められ、これをクリアするように農薬の使用法が定められた上で登録され使用が可能になる。残留農薬基準については、2006年5月より「残留農薬等に関するポジティブリスト制度」がスタートし、残留農薬に対する規制が従来よりも強化された。

食品に対する残留農薬は食品及び農薬ごとに一日摂取許容量(ADI)を基準に残留基準が定められており、基準を超えた農薬が検出された場合は流通が禁止される。

2000年に行われた農産物中の残留農薬検査結果によると、総検査数467,181件に対し、農薬の残留が検出されたのは2,826件(0.6%)、うち基準を超えた量が検出されたのは74件(0.03%)。

2001年の検査結果では総検査数531,765件に対し、検出数2,676件(0.5%)、うち基準を超える件数29件(0.01%)と、ほぼ同様の傾向である。

脚注[脚注の使い方]
注釈^ agrochemical、または、agrichemicalと省略される。
^ その薬剤を原料又は材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるものを含む。
^ 農薬取締法による「登録保留基準」や食品衛生法による「残留農薬基準」。

出典^ a b c d e f g 後藤哲雄、上遠野富士夫『応用昆虫学の基礎』 <農学基礎シリーズ> 農文協 2019年 ISBN 978-4-540-17121-5 pp.100-101,116-119.
^ a b “FAOSTAT”. www.fao.org. 2024年5月21日閲覧。
^ あるのは探究心 (2023年8月15日). “【検証】#12 日本の農作物は「農薬まみれ」なのでしょうか。極限まで妥協しない農薬調査E”. あるのは探究心. 2024年5月21日閲覧。
^ “「国産が一番安全だ」と妄信する日本人の大誤解 日本は世界トップレベルの農薬大国”. PRESIDENT ONLINE (2020/01/21 9:00). 2024年3月26日閲覧。
^ スリーエム研究会『林業薬剤の知識』28-30頁 昭和54年12月20日刊
^ a b c d e f g h Q.「農薬」が無い時代は、どの様に防除していたのですか。農薬工業会(2017年5月16日閲覧)
^ 植村振作ら『農薬毒性の事典』(三省堂)の「サリン」の項
^ “国内最古の農薬使用 島根”. 中国新聞. (2013年1月26日). ⇒オリジナルの2013年2月9日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130209034515/http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201301260039.html 2013年1月26日閲覧。 
^ 残留農薬から食卓守る 四食品に許容量『朝日新聞』1968年(昭和48年)3月21日夕刊 3版 11面
^ 「農薬再評価制度始まる 価格上昇、登録変更も」『日本農業新聞』2021年10月4日3面
^ 農薬の基礎知識 詳細 農林水産省(2017年5月16日閲覧)
^ a b c d 諸外国・国際機関等におけるPBT基準の考え方 (PDF) 環境省(2021年1月27日閲覧)
^ 殺虫剤の現地輸入規則および留意点:米国向け輸出 日本貿易振興機構(2017年5月16日閲覧)
^農林水産省「特定農薬とは?」
^ 農林水産省「農業資材審議会農薬分科会特定農薬小委員会及び中央環境審議会土壌農薬部会農薬小委員会第6回合同会合」(2005年8月31日)

参考文資料

農薬の基礎知識 詳細
- 農林水産省

関連項目.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、農薬に関連するカテゴリがあります。

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